漁書日誌 3.0

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雨のち35度

昼過ぎに用事があって神保町に。用事が済んでから、郵便局へ古書代金の振り込み、そして東京堂へ行って新刊書を購入。それから他の用事のために移動。

午前中、雨が降って、止み、そして晴れ渡る。気温がグングンと上がり35度くらいだったか。他の用事を済ませてから、五反田に出る。今日は五反田遊古会初日。注文品はない。まずはざっと1階ガレージを見る。谷崎の改造文庫の初版やら紙装になった重版などがあったが、この数百円で後でポカリスエット買おうと棚に戻す。2階。見て回るが、これといったものがない。まあ、ということで2冊のみ。

岩城見一「美学概論」(京都造形芸術大学)200円

映画芸術」昭和41年6月号200円

前者は教科書本、後者は映画「憂国」が表紙で三島が寄稿している号だがもうとうにもっている。しかし今回のはまるで新品のように綺麗だったので予備にと購入。それから神保町に戻る。

17時40分くらいだったか。神保町では和洋会古書展の初日。こちらも注文品はない。ザーッと見て回る。これは買おうかと思った本もあったが、やめて何も買わずに出る。

それというのも、先日目録注文して先ほど代金を振り込んだ古書のことがあったからである。原稿用に必要あって、参考用の本などを最近ちょくちょく買っているし、あまり無駄遣いしたくないのである。で、目録で注文して買ったというのは、扶桑書房速報で買った花袋。

田山花袋「花袋集」(籾山書店)明治44年8月15日9版凾付4500円

花袋集自体は、第二集と共に函欠本をとうに持っている。だがこれは凾付、これはと思って注文したのである。届いてみると、すでに持っているもう少し若い重版はクロス層の丸背上製本なのだが、これは並製で夫婦函入なのであった。前に「花袋書誌」を読んだ時に、確か「花袋集」は重版で表紙の色だのデザインだの上製から並製へだのと、いろいろと異装があることは知っていた。

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新刊書店で、昨日今日と購入した本。

 

 

 

 

梅雨再開かと趣味展

金曜日、趣味展である。先月末から、梅雨が明け、連日猛暑と言っていいような日々が続いていたのではあるが、ここにきて急に雨続き。実は梅雨はこれからなのではないかくらいの勢いといった印象がある。で、金曜日も雨。9時40分頃に新御茶ノ水駅について古書会館に向かう。遠目に、あれ行列がないなと思ったら、雨なので会館の中で行列がとぐろを巻いていた。コロナもまた増加傾向にあり検温と消毒。そして階下の入り口へ移動。10時開場。

扶桑書房の棚へ向かう。前回の趣味展と同じく棚3つではなくて2つに減っていた(今後はもうずっと2つでやっていく由)。佐々木桔梗の限定本などお安めに並んでいたが手にも取らず。エッセンス叢書がズラリあり状態も良かったけれども1冊800円だったので手放し。今回はなるべくお金を使わないようにと思っていたが、会場の他の棚を一周してきて、結局あれもこれもと買うことになってしまった。正午前、友人らと会場を抜けて昼食に。うどんを食べ、茶店で一服し、会場に戻って改めて棚をチェックし、キープしているものを吟味して、お会計。

若山牧水「別離」(東雲堂書店)明治43年5月15日再版裸1500円

吉井勇西鶴物語一代女」(春陽堂大正7年12月15日初版函欠1000円

藤澤衛彦「小唄伝説集」(実業之日本社)大正10年1月2日初版函欠

斎藤昌三紙魚供養」(書物展望社昭和11年5月10日限定500部函欠1000円

「別離」はすでに持っているのだが水シミがある本だったので、これで状態のいいものと交換だと思っていた(が、どうもなんか変だなと感じてはいたけど、帰宅して確認してみると巻頭の著者肖像欠だった)。吉井勇のと藤澤衛彦のは夢二装幀。後者は木版口絵入。和綴のようなデザインを施してある。「紙魚供養」は、斎藤昌三のところにきた手紙の封筒をそのまま装幀に使用したもので、表紙は太田正雄(木下杢太郎)、裏表紙は漆山又四郎であった。本文に少し虫喰いがあるがこの価格なら嬉しい。

「文章倶楽部」(大正15年1月)800円

「書物」(昭和9年1月)500円

「書物」(昭和9年5月)500円

「文章倶楽部」は文壇一百人特集のため。顔写真とプロフィール掲載で、当時どのようなイメージであったのかがわかる。「書物」は創元社の矢部良策の記事のために。

文藝春秋祭り」パンフ、昭和30年、34年各1000円

映画芸術」(昭和46年5月)200円

文春のやつは、文士劇のパンフ。三島由紀夫が出演している時のもの。これは半額くらいで欲しかったが仕方がない。

外に出ると雨は止んでいる。このままもう降らないのではないかと思ったことであったが、1時間後、土砂降りになり、雨脚は弱まったもののその後一日中雨降りであった。

翌日の土曜日。

ちょいと野暮用で都内に出たので、恵比寿のシス書店に久々に赴く。

中井英夫生誕100年展@シス書店7月16〜30日

これに来たのは他でもない、会場限定(通販もあるらしい)で出た中井英夫「彗星の騎士」(シス書店)を購入するためでもある。本書には記載はないが限定250部。

真っ白で、本体表紙は毛羽立ちそうな紙質。パラフィン巻かないとすぐに汚れそうな感じである。

6月の蝉の鳴き声

とにかく暑い。6月末に梅雨が明け、7月末かというような気候が続いている。木曜日、多摩センターの先の方に行ったらもう蝉が鳴いていた。

久方ぶりの学会発表などがあり、バタバタしていたら買った古書も記さぬままにいつの間にか7月になってしまった。色々と忘れてしまうので、覚えも兼ねて以下連ねて書いていきたい。

6月4日土曜日、城南古書展2日目に立ち寄り、ザッとみて以下2冊。

福田純一「純粋一等国民序曲」(誠文堂新光社)昭和60年7月3日カバ帯300円

別役実「赤い鳥の居る風景」(角川文庫)昭和49年8月20日初カバ150円

買ってから喫茶店で本を取り出してみていると、あれれ「純粋一等」の方は前にも買ったような記憶。羽良多平吉の書容設計が際立った本。

6月10日金曜日、まど展初日。普段であれば朝イチで並ぶ古書展ではあるが、今日に限っては無理であった。実は裁判員裁判裁判員の最終候補になったと裁判所から呼び出しがあり、初めて地方裁判所へ。40名くらいの中から6名の裁判員に選ばれてしまった。その後宣誓やら説明があって、まだ間に合うというのでそのまま夕方に古書会館へ向かい、1冊のみ購入。

上野葉子「葉子全集第二巻」(私家版)函欠1200円

6角形の造本で知られる「葉子全集」だが、今回端本であったので装幀参考資料として購入。著者は女学校の教師で、小説を執筆しており、この2巻には朝日新聞の懸賞小説に応募して佳作になったという「雑音の中より」を収録。面白いのは、冒頭に収録作品原稿の1枚目の写真が口絵として出ているのだが、本文1ページ目としてその口絵写真が用いられているのである。つまり原稿の写真の最後の文字が次の本文に続いているという具合。こんな作りの本は初めてみた。

6月11日土曜日、神奈川県立近代文学館でのドナルド・キーン展に赴く。三島由紀夫からの新発見書簡なども展示されていた。

週明け、注文していた雑誌「螺旋の器」第6号が届く。

おなじみ森開社の小野夕さん主催の雑誌である。今回はモンテスキウ特集第2弾。ネット告知のみ、直接注文のみなので見逃すわけにはいかない。

6月19日日曜日、お誘いがあって、六本木の俳優座劇場へ新劇交流プロジェクト公演2「美しきものの伝説」に行く。俳優座に芝居を見に来るのもだいぶ久しぶりのような気がする。渡辺美佐子が本公演で舞台生活を引退する由。松井須磨子役であった。

週が明けてから後、扶桑書房目録速報が届き、1点注文、それがすぐに届く。

広津柳浪「人」(金尾文淵堂)明治43年1月1日函欠7500円

元々は夫婦函に入った1000ページを越す分厚い角背上製本。今回は函欠。この本、蒼々園叢書と銘打っているが、この1冊だけの模様。奥付には特製の値段も記してあるので、別に特製があったのだろうか。「一段落」とタイトルを改めようとしたが既に印刷に入っていたから諦めた云々後記あり。新聞連載ものだろうか、分厚くて読む気が削がれるほどだが、考えてみれば漱石のものなども同じように分厚い菊判で、「明暗」と同じくらいの分厚さ。

6月24日金曜日、ぐろりや会古書展、初日。注文品はなし。会場をざっと回り、三島に関するエッセイが入っているので尾崎一雄のエッセイ集と、文庫を1冊。

尾崎一雄「四角な机丸い机」(新潮社)昭和49年1月15日初函200円

共同通信社編「東京あの時ここで」(新潮文庫)カバ200円

それから新刊書店へ行って、文庫などを購入。

6月26日日曜日、明治大学駿河台校舎にて日本近代文学会6月例会。ここで「三島由紀夫のエンターテインメント作品と方法意識」なる発表を行う。

論文の校正やら裁判員裁判やら発表での準備などでもうグッチャグチャであった状況だが、ようやく荷を下ろす形に。その反動か、欲しいなと思っていた新刊書籍をズバズバと買ってしまう。

7月2日土曜日、愛書会古書展2日目。目録注文品はなし。ザーッと会場を回るも、これといったものもなく、書き込み用に用紙がいい頃の「詩学」と、三島由紀夫「火宅」初演のパンフを。

俳優座創作劇研究会5パンフ300円

ボワロー「詩学」(岩波文庫)重版帯150円

「文学」特集・出版文化としての近代文学(1998冬)200円

俳優座パンフは党に持っているけれど、公演チラシ挟まっており。こういうエフェメラがたまに挟まっているのが面白いところ。

その後、武蔵小金井に移動して野戦之月公演「鯨のデーモス」を高架下の特設テントで観る。学生時代、風の旅団の公演には行きはぐっていたのでこれが今回初なのだが、アングラ的芝居と、旅回りのドサ芝居のような客席のへの浸透感とがいい具合にミックスされたちょっとみたことのないような芝居であった。

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ここのところ新刊書店で購入した新刊書籍。

発表用の資料本やらお勉強用の本などもあるが、新刊書籍だと以下のようなところ。このほかに、藤澤清造の随筆集も買わないとな、と。

 

 

 

 

 

 

雨のち晴れ、湿気

週のtagewerkが木曜で終わりぐったりしてよく寝ることができた。そして金曜日。和洋会と五反田遊古会があり後者には注文品。明日用事で神保町に出るので、五反田優先ということで向かう。とはいえ、家でグータラ午後まで寝ていたのだが、寝ている間に雨もすっかり止んで、快晴。

会場に到着したのは17時10分ごろ。まずは1階ガレージを見て回る。赤江瀑の単行本がー1冊200円でズラリとある。これだけあっても売れないのだな、赤江買う人は文庫で揃えるのかななどと思ったことであった。1970年前後の朝ジャーが山のようにある。これはもしかしてと漁る。あった。

ガレージ分の会計をして2階へ。リミットは20分。急いで回るが、最後は駆け足になってしまった。新書1冊200円のところはもっとちゃんと見れば古くて面白そうなものがあったのではないかと思う。それから、細江英公の写真集「抱擁」の函と帯欠でなおかつカバーと本体に水シミの本が2000円であった。本文はまずまずなのでこれを抱える。注文品はハズレ。第一書房の「夜のガスパアル」特製200部本函壊れ2000円というやつ。リラダンの「残酷物語」特製50部本は売れていたようだ。と言っても、この50部本あんまり魅力がないのだよな…。で、お会計。

シネマ新宿第3回名作上映パンフ200円

朝日ジャーナル」11巻13号200円

岩切信一郎「橋口五葉の研究」(リッカー美術館)200円

村田宏雄「犯罪と探偵」(河出新書)昭和31年7月10日カバ200円

日生劇場「孔雀館」パンフ200円

細江英公「抱擁」(写真評論社)昭和46年5月1日カバ水シミ2000円

上から3点がガレージ、残りは会場で。シネマ新宿のパンフというのは初めて見たもので、ATGがこの劇場で上映したということなのか。裏表紙にアートシアターのロゴが入っている。朝ジャーは、篠山紀信撮影の三島由紀夫グラビアのため。岩切のはタイプ印刷の抜刷り的なもの。「孔雀館」は持っているが、寺山修司修辞のアヌイの芝居。そして「抱擁」である。三島由紀夫序文。水ムレはカバーが酷いが、布表紙にもカビが。それで中身だが、中身はほとんど影響ないのだが、上部の一部がページ同士くっついている箇所があるのと、カビっぽいのがちらほら。函欠でも2000円は激安だが、こういう状態ならば適価かなあと。綺麗なら万越えだしまあいいかと。

趣味展、快晴

5月20日、快晴。趣味展の初日である。先日の扶桑書房目録で買い物をしたばかりであるのに、こちらの趣味展の目録でも扶桑書房他いくつかの古書店へ注文をしている。正直、お金が心配だ。いつものように新御茶ノ水駅に9時40分くらいに到着して、そのまま古書会館へ一直線。ワタクシが到着した時点で40数名並んでいる。コロナが収まってきて、かつ、快晴ということもあるだろう。入場には無論検温と手消毒。そして開場。扶桑書房の棚へ向かう。すると、棚が少ない。いつもは3棚あって、1棚は目録掲載のタスキ本が並んでいるのだが、今回は2棚で、つまりフリーの棚が1つ少ないのである。

今回はしかし、注文本もある。後ろの方で到着が遅れたからか、ワタクシにとって興味ありそうなところは、いつもよりは少ない感じ。花袋のエッセイや紀行本などが目立つ。一通り見てから、会場を一回り。その後、お昼に抜ける際に注文品を確認。全部当たっている。古書仲間の人とお昼を食べ、お茶してから会場に戻り、予算的にいくつか棚に戻す。戻しながらもまた棚から抜く。予算は限られている。そして14時頃、お会計。

長与善郎「項羽と劉邦」(新潮社)大正11年6月5日改版函4500円

相馬健作「文壇太平記」(万生閣)大正15年10月15日3版裸4500円

福沢諭吉「学問ノススメ」初編第2編2冊3000円

まずは目録注文品。長与善郎のは今度の原稿のために必要あって購入。実は既に裸本は所持しているけれども函付きが嬉しい。「文壇太平記」は国会デジタルで読んで、面白そうだったので実物入手。単に読み物としても面白い。福沢諭吉は明治初期ベストセラー本として実物を持っておきたかった。高いのか安いのかもよくわからない。ざっと検索してみると、慶應義塾のサイトに詳しい情報があり、最初に出た版ではないらしい。最初は1冊のみの予定が続くことになったので、後刷のものはタイトルに初編と入っているという。巻末の刊記には明治6年4月真片仮名再刻とあるが、実際には、明治6年11月に第二篇を出すにあたりタイトルに初編と入れたバージョンのようだ。初編には慶應義塾の印、2編には福沢の印があるから偽版ではないだろう。

三省堂編「書斎と読書」(三省堂昭和16年12月15日3版裸400円

ブルーム「影響の不安」(新曜社)カバ2000円

「影響の不安」も目録注文品。2004年の本だがこれがまた古書で全然でなくて、マケプレでバカみたいなプレミアをつけるものだから古書店でも2万とか平気でつけている。ここ20年の学術系の本で、こういう妙なプレミア価格になっている本が目立つ。刷部数が少ないからというのもあるだろうけれども、マケプレの影響なのだろう。大学の予算で自分の金ではないからこのくらいつけても研究者は買うだろうと踏んでのことか、と思われる。三省堂の本はこれも原稿のための資料本。

金子薫園「小詩国」(新潮社)明治38年4月12日再販裸400円

辻潤訳「阿片溺愛者の告白」(三陽堂書店)大正7年5月20日再販カバ欠500円

薫園の歌集はその判型のため。原稿資料用。ド・クインシーのもまあ資料だが、辻潤の本としてこれは欲しいところ。同じ判型、同じような装幀の「響影」はもう10年以上前に扶桑目録で買った。両者とも本当はカバーがついている本。薫園のはカバーがあったのだろうか(ありそう)。

「文芸懇話会」佐藤春夫編緝臨時特緝号400円

「午前」昭和21年7月号800円

「新文学」昭和22年2月号300円

「舢板」第3期13号200円

「午前」は福岡の雑誌で三島掲載号、「新文学」は全国書房の雑誌で、同社から刊行予定で谷崎の凝った本の刊行予告が出ている号(結局未刊、拙著に図版掲載)。「文芸懇話会」は前々から欲しいと思っていた号で「近世文藝名家伝記資料」と銘打ち、黙阿彌から十一谷義三郎までの略歴などが掲載されている号。「舢板」は吉田健一の「でたらめろん」についてのエッセイが出ているので読みたくて購入。

いやしかし、買いも買ったり、だ。こんなに立て続けであれこれと買っているけれども、もちろん火の車でどうしようもない。「これは原稿の資料だから」と自分に言い訳を立てて買っているが、容赦なく現実に押し潰されて行くのだろうなあ。

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21日、土曜日。珍しくぐっすりと寝て午前中に起床した。天気も良く、暗澹とお先真っ暗な行く末を考えて鬱々とするよりはと、映画を観に出かける。

若松孝二初期傑作選@シネマヴェーラ渋谷。18時からの「恐ろしき遺産 裸の影」(1964)である。本当は「カーマスートラ」も観たかった。若松の初期は「壁の中の秘事」とか「胎児が密猟する時」くらいしか観たことがなかった。今度のは初めてみるもの。少女漫画に出てきそうな元気な女子高生が、自分が胎内被曝し原爆症を発症していることを自覚して自殺するという話。昭和40年前後、高峰秀子の「原爆少女」との対談(同著「私のインタビュー」収録)とか、映画「愛と死を見つめて」とか「その夜は忘れない」というのも昔観たことがあった。意外な監督作だったが、必ずしも必要なかろう女子高バレー部合宿での入浴シーンとか、やはり若松だなという感じもしないでもない。

連休終わって古書と映画と

5月15日の日曜日、今日は国立映画アーカイブ(元のフィルムセンター)で上映の映画を見に行ってきた。

武智鉄二の「幻日」(1966)である。夏目漱石夢十夜」を原作として自由に脚色したものだが、武智テイスト爆発な作品。冗長なシーン多く、眠気を誘う。未公開作品だそうだが、数年前に関西で上映があった由。東京では初の上映か。もちろん、イメージフォーラムで前にやった武智鉄二映画祭でもやってないし DVDにもなっていない。タイトルのところに映倫マークが入っていたので、公開予定が流れてオクラになったのであろう。「夢十夜」にも船は出てくるけれども、この映画ではヨットが出てきた。確か「白日夢2」でも出てきたが、武智はヨット好きなのかしら。

さて、古書である。先日の扶桑書房目録速報で注文した本である。

松井須磨子「牡丹刷毛」(新潮社)大正3年7月10日初版裸本9800円

東郷青児「恋愛株式会社」(白水社昭和6年5月5日初版函背焼3000円

「牡丹刷毛」はもう10年以上の探求書。いや、3万とか出せば普通に売っているのだが、どうにか安く欲しかった。後版の夢二装のもいいけれど。重版裸本5000円くらいでないかなあと思っていたが、今回注文してしまった。それから東郷青児のは、これも前々から安く欲しかった本。前から揃えたかったモダンな装幀本、同じ時期の白水社から出た「ドルヂェル伯の舞踏会」と「恐るべき子供たち」とこの本がこれでようやく書架に並んだ。東郷青児著となっているが、巻頭にモーリス・デコブラによるという但し書きがある。装幀は東郷青児

その後に来た趣味店目録でも、ちょっと必要な本やら欲しい本があって、出費を考えると頭が痛い。

三匹目の麒麟など

連休初日である金曜日、寒く雨であったこともあり蟄居。このところ、ぐっと暖かくというか暑くなりヒートテック下着すらいらないなと仕舞い込んだのに急にグッと冷え込み、また戻りという不安定な気候が続く。土曜日は一転して快晴、暖かになった。古書会館では城北展である。それに先日扶桑書房目録が届いて結構注文してしまっていたので、あまり出費はしたくない。出費ももちろんだが、最近は本の置き場所をまず考えてしまって、「安いからついでに」という買い物をしなくなった。もうゴミ屋敷状態なのである。

それはさておき、土曜は所用で神保町に出たので、夕方閉場までの1時間ほど城北展を回った。今回、目録が届いていない。これは切られたのかと、入場の際に帳場の人に聞いてみると、今回は目録発行をしていないのだという。幾つか抱えるも、お金や場所を考えて、あれもこれもと棚に戻す。最終的に購入したのは以下。

寿岳文章「書物之道」(書物展望社昭和9年12月7日初版函200円

宇能鴻一郎「味な旅 舌の旅」(中公文庫)300円

雑誌「ブックマン」26号200円

「書物之道」は嬉しい。函背がないなと思ったら本体に挟んであった。簡単に修理で治る。しかし200円てのは安い。初版は950部、布装で天小口が藍色染。

で扶桑書房目録で買ったもの。今回の目録は速報ではなくて、前回に引き続き、私もお世話になったりしている某コレクターのコレクション処分のもので、前回が高額商品がドシドシ出ていたのに比べると、お手頃なものなどがドサリと出ていた。谷崎松子代筆の谷崎書簡なども出ていたが、結局注文したのは4点。

尾崎紅葉「二人比丘尼色懺悔」(吉岡書店:新著百種)明治22年4月1日初版4000円

菊池寛藤十郎の恋」(新潮社)大正10年6月25日14版パラフィンカバー6000円

谷崎潤一郎麒麟」(植竹書院)大正4年3月1日5版函8000円

谷崎潤一郎「近代情痴集」(新潮文庫昭和4年2月17日初版3000円

以上である。紅葉のは蔵書印があるがかなりの美本。やっと入手したと思いきや、なんと少々痛んだ同書を自宅書架で発見…まあ今回のが美本だからいいかと。そして「藤十郎の恋」は前回の目録でも初版のパラフィンカバー付きが出ていたが、初版などは手が出ないのでこちらの重版を。パラフィンカバーと言っているが、元パラにタイトル印刷がしてあるというもの。これが資料として欲しかった。こちらもかなりのコンディション。

そして谷崎の本。まずは今回購入品の目玉である「麒麟」5版。多分これが植竹書院版の最終版。植竹倒産後に引き継いだ、後版であるところの三星堂版はすべてなぜか「参版」なのである。植竹版の「麒麟」は青表紙と途中の重版から朱色表紙(今回の)とあるが、前に再販青表紙函付を入手しているので、これで「麒麟」は三匹。初版は手が出ないのでこれでひとまずはよしとする。「近代情痴集」は四六判の新潮文庫版。こちらも持っていなかった。表紙や奥付では「近代情痴集」だが、扉では「増補近代情痴集附り異国綺譚」となっている。元版と比べ、収録作品に異動があるのである。

で、間が空いてしまってうっかり忘れてしまっていたが、ぐろりや会古書展に4月22日に行ってきたのであった。

山東功「唱歌と国語」(講談社選書メチエ)カバ帯550円

ブランショ「書物の不在」(月曜社)2版カバ1300円

林房雄大東亜戦争肯定論」(中公文庫)カバ600円

雑誌「批評」昭和40年春号200円

ブランショのこの本が安く入手できてよかった。林房雄のは元版で持っているが読むのにはこちらのがよい。「批評」は所持本が汚れているので、というところ。

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佐藤未央子「谷崎潤一郎と映画の存在論」(水声社

献呈していただきました。感謝。映画と谷崎に関する決定的な研究書。観念的なイメージを徹底的な同時代言説の博捜からなる実証で裏打ちしていく優れた成果。スタイリッシュな装幀は真田幸治君。