漁書日誌 3.0

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五反田に赴く

7月24日、金曜日。

和洋会、それから五反田遊古会とが開催された。中央線古書展は中止。ここ数日都内のコロナ罹患者がグッと増え、古書展初日の今日は全国で700名を超えたという。わたくしのような職業は罹患したら一発アウトであろう。そこまでして行くのかというのもあるのだが、まあこれは致し方ないのかもしれない。

今度出す本のゲラチェックをやっていたら朝になり9時を過ぎ。それでも14時半に起床して、寝不足のなか仕度して五反田へ。ちょっといろいろ雑誌等漁りたいなと思うも見切りを付けるなど。そういえば、五反田は1階のガレージも透明ビニルの幕が張ってあり、脇の入口から入って検温、手消毒をしてからでないと入れないようになっていた。

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特に注文品はないがやはり雑本が面白い五反田。今日はわざわざ来て何もないかと思ったけれども、幾つか。

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デシエーザー「私は日本の捕虜だった」(有恒社)昭和24年11月5日カバ200円

寺田博「文芸誌編集実記」(河出書房新社)カバ帯500円

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「日本及日本人 秋季増刊 男性美」(大正9年9月20日)500円

河出の「文芸」などの編集者である寺田さんのやつは、初出の「エディターシップ」も持っており、編集者学会での講演なども聴きに行ったが、単行本もと前々から安く探していた。それから「男性美」というやつ。西洋的な美的規範とか取り入れたものだったら面白かったのだが、どちらかというとまあ雑誌がそもそもあれというのもあるが、硬派とは的なものかと表紙のイラストがそれを象徴しているか。前にも見かけていたが安くなっていたので。こんなところで、そのままとんぼ返りで帰途。

ウイルス戒厳令下的趣味展

正直行くか行かないか本当に逡巡したし、今回はブログ公開できないなと思っていた(少なくとも1週間は時間おかないと、参加者に罹患者発生した場合接触者になる可能性もあり、手前が罹患し苦しむのはまだしも、下手をすれば、ことは仕事関係に迷惑をかけたり職業的な責任問題にも発展するので、もしかしたらこれはずっと保存のままで公開しないかもしれない)。

で、2020年7月18日、約3ヶ月ぶりの趣味展である。

楽しみにしていた。が、開催前々日くらいから暗雲立ちこめ、コロナ罹患者が都内で200名を超え日ごとに増加の一途、300名目前という状況。これ当日中止もあるなと思っていた。で、並んでみて混雑していたらそのまま帰る選択肢も考え、マスクにフェイスシールド、携帯用除菌剤、除菌ティッシュ、そして終わったあとにすぐに銭湯へと着替え一式も持参。9時半に新御茶ノ水駅に到着し、古書会館へ向かう。すると、整理券を配っている。自動ドアあけたすぐのロビーに長机が出ており、封筒持参していない人はそこで住所氏名電話番号を記入、体温を測り整理券をもらって、開場時間にというシステム。毎回20名ずつ入場し合計80名で一旦入場ストップ、という。いつも趣味展に来ているあの人とかあの人なんかは顔を見かけなかった。80名でストップということであったが、全部で80人もいなかったであろう。

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まあ小劇場方式である。前はチケットに発券順で整理番号がついていて、「はいぴあの人〜、こちらはセゾンの人〜」とかよくあった。朝から雨だし、ここ数日の罹患者増加もあってか、いつもよりは来場者が少ないように思われた。わたくしは32番。第2回目の入場組である。初回の組が入ってから、しかし5分程度で入場。帳場もビニールシートでガードしてあった。そもそも会場参加も10店ほどで全部の店が参加しているわけではない由。扶桑書房の棚も分散設置され、かたまらないようにしてある。

確かに快適。思ったよりもスカスカな空間で、焦っているような人もいない。みな気をつけているようだ。これならという安心感があった。約1名、腰まげて突っ込んでくる棺桶片足みたいな老人も見たが。

ちょうど欲しかったマイナー詩集とも出会え、また注文品も当たり、予算オーバーの買物をしてしまった。昼食抜けて(早速傘を盗まれた)、濡れながら昼食へ行きサテンで一息ついてから再び会場へ。扶桑以外の棚もじっくり見てからお会計。

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丹羽純一郎訳「欧州奇事 花柳春話」四編(坂上半七)明治12年1月汚500円

大橋乙羽「若菜籠」(博文館)明治32年2月10日再版少痛500円

まずは古いところから。「花柳春話」は参考のために1冊持っておきたかったので嬉しい。「若菜籠」は木版口絵入。大橋乙羽の作品集。

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姉崎正治「脚本 瀧口入道」(春陽堂明治39年4月30日初版200円

後藤宙外「裾野」(春陽堂明治43年1月1日前後編揃凾欠前編口絵欠4000円

「脚本瀧口入道」は既に持っているが、所持本より綺麗で200円だったので。そして「裾野」は惜しくも前編口絵欠だが、後編は鰭先英朋の木版口絵入り。パッと見はただのクロス装だが、面白い製本形式である。しかし分厚い。短編全集的なもの。しかし国会図書館蔵書や過去にネットオークションに出た本を見てみると前編はもとより口絵がないようでもある。となればこれは欠落のない本ということか?

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長田幹彦「小夜ちどり」(新潮社)大正4年8月2日4版1500円

間司つねみ「海のほとり」(交蘭社)大正14年10月28日凾欠1500円

長田幹彦「ゆく春」(春陽堂昭和2年2月20日改訂20版2000円

「海のほとり」は少し前にちょうど間司つねみの第1詩集を買ったばかりなので嬉しい。これは山名文夫装幀挿画。日本の古本屋にも数件出ているが手が出なかった。「ゆく春」は元版は伊東深水木版装幀挿画なのだけれども、これは昭和2年の改訂版で表紙と扉は竹久夢二になっており、判型も大きくなっている。

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坂元三郎「子規随筆」(名著梗概叢書)大正4年2月18日背痛150円

堀辰雄風立ちぬ」(細川書店)昭和24年4月30日発行300円

三島由紀夫選集11「真夏の死」(新潮社)昭和33年9月30日凾3500円

名著梗概叢書も参考用に1冊欲しかったのでちょうどよかった。「風立ちぬ」もそう。細川書店の造本、奥付のために。そして武者小路書房さんに目録注文品していた「真夏の死」回収本。ようやく入手。10年くらい前に安価で入手出来るチャンスを逃し、やっとという感じ。お金を出せば買えるのだろうがケチケチと買わずにいた。本文中に他人の作品が入ってしまい、回収され訂正版が発行されたといういわくつきで、当時担当者であった進藤純孝は責任を感じて退社、文芸評論家の道を歩んでいく。

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中央公論大正7年9月500円

「TVガイド」昭和37年11月9日号1000円

中央公論」のこの号も合冊でしか持ってなかったもので、「新時代流行の象徴として観たる「自動車」と「活動写真」と「カフェー」の印象」特集号。500円なら元本を持っておきたいものだ。それから「TVガイド」は千円と高いが、これは三島作品のフォトストーリー掲載号でコピーしか今まで持ってなかった。

梅雨の晴れ間に

土曜日、久々に都内に出る。

仕事関係の打ち合わせもあるが、扶桑事務所がオープンするというので出たわけである。

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塚原史『反逆する美学』『模索する美学』『切断する美学』(論創社)揃4500円

岩切信一郎『橋口五葉の装釘本』(沖積社)限定500凾6800円

2点併せて9000円ににしていただいた。感謝である。

『橋口五葉の装釘本』は超基礎文献であるにもかかわらず、少々値が張るのでいままでケチケチして見送ってきた。ようやく。そして塚原のはお勉強用。ここのところずっと授業準備とかあれこれで古書どころではなかったので一気にいってしまった。

 そういえば、以下のものに寄稿しております。

 

約3ヶ月ぶりの古書展

新興古書展があけるかも、という。もしそうなら、4月6日に高円寺の古書展にいって以来である。高円寺でさえ、入口での検温と消毒液があった。今回は、ということで、午後、江東区の文化セミナーで「没後50年三島由紀夫・短編小説の魅力に迫る」第1回の講師を務めてから、神保町に向かう。

無事開催している。

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本部古書会館は、会場が地下でもあり、換気の点などで難しいだろうなあと思っていたが、思ったよりも速い開場となった。入口では、三脚にセットされた検温器、それからカメラで写してサーモグラフのようなモニタが出るやつ、そして入場者は名前と電話番号を明記しなければならない。ここから罹患者が出たら連絡が来て濃厚接触可能性ということになるのであろうか。

で、会場はというと。新興展なので、メインは和本。もちろん関係なく普通の本もあるのでザーッと見て行き、ちょっとお安めで雑訴「一寸」があったので数冊を購入。

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「一寸」11、15、21号、各500円

この雑誌、古書や装幀に興味がある人にはマストだろうけれども、国会図書館にも入っていない。おそらく意図的に入れてないのだろうかとも。趣味というより学問的なキチンとしたエッセイが掲載されている。たまに1冊800円くらいで出ることもあるけれど、それでは手が出ない。

関西でも古書展が開催されたようだが、これから東京もボチボチと古書展は開催されていくのだろうなと思われる。

3ヶ月ぶりの国会図書館

国会図書館が1日限定200名で開くというので申し込み、早速当選した。ということで、本日金曜日行って来た。

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入口ではサーモグラフィーなんちゃらで熱を測定し、当選した人間か確かめ、入場。いやあガラガラで快適ではある。ただし複写受付の人が研修中の人ばかりで、おそらくはこの状況で全然経験値が低いのだろう、けっこう時間かかったり。まあしかしそんなことはどうでもよい。6階の食堂はと行ってみると、13時までであった。購買は18時まで。

で、18時までに神保町に出るようにと思っていたのだが、ギリギリ間に合わず。どの店もだいたいは既に閉まっていた。澤口書店ですらそうで、東京堂も18時まで。

ところで、このところ買った古書。

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小島徳弥「文壇百話」(新秋出版社)大正13年3月15日初版裸4頁落丁2000円

新秋出版社文芸部編「文壇出世物語」(幻戯書房)平成30年5月16日カバ帯152円

「文壇百話」は扶桑目録注文品。2葉落丁だが、手頃なお値段。同じ出版社の「出世物語」はマケプレ。つい最近復刻していたとは知らなかった。こちらの解説に細かいことが書いてあり、どうも同書は武野藤介と井伏鱒二が書いたものらしい。こういう類のものはいわばゴシップ的なものではあるけれども、同時代の言説として極めて興味深いものがある。

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吉井勇「酒ほがひ」(文芸復興社)昭和21年11月2日再版300円

雑誌「麒麟」創刊号、1000円

こちらはネットオークション落札品。「酒ほがひ」は再版だが、初版は元版初版で明治43年9月7日。これはその再版という体裁。新装版あるいは復刻版といったところであろう。中身は初版の版面そのままのようでもあるが、本文は和紙の袋綴じで著者による「巻後で」という経緯を述べた文章がついている。「麒麟」は御存知大衆文学研究会の古書雑誌だが、これでようやく「麒麟」はあと別冊を残すのみ。しかし別冊は見たこともないのだよなあ。

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谷崎潤一郎「鍵」(中公文庫)昭和35年2月18日20版カバ500円

映画パンフ「アートシアター」(日本ATG)チラシ付200円

「鍵」はいわゆる普及版。この普及版が何版までいったのかを調べていて、探し得た一番の重版。本体の背のみ「中公文庫」と記してある。普及版という言葉は帯のみに記してある。初版の帯付きは所持しているのだが、重版でもおそらく同じか。それから「アートシアター」は寺山修司脚本・東陽一監督の映画「サード」のパンフ。それとチラシ。寺山系でこれは持っていなかった。200円は安い。こちらは地元駅前のモールで古本ワゴン市をやっており、そこで見つけたもの。

戒厳令下の古書生活

緊急事態宣言はまだ解除にならないようである。大阪では解除によって古書の市が開かれた由。古書店も店によっては開店している。地元のよくいく店は既に先週店を開けていた。古書目録も来るには来るが、会場ではやらず、目録のみという形のようだ。となると、目録とヤフオク、ネットに集中する。

普段小金を古書展であれこれと散財しているのがこれによって貯まるからよいとはいえ、古書は趣味のみならず仕事のネタでもあるので、いろいろと仕入れたい。そんなところに扶桑書房目録である。前に来たのはもう一ヶ月前か。あっと言う間である。遠隔仕事の準備で毎日綱渡りのような自転車操業だが、それでも古書を買う。古書を買うのが日常であるからだ。

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横光利一「愛の挨拶」(金星堂)昭和2年6月15日初版凾4000円

実はこれまだ持っていなかったのである。裸本を2000円くらいでと思っていたが、凾付でこれならば安い。もちろん装幀目当てで買ったのである。これは装幀者のサインがないけれども、吉田謙吉か。扉が川端の「感情装飾」と同じテイストであることから判断した。ゴールデンバット流用のこのデザインは一応は持っておかなくてはと。

それからもう一点、これは嬉しい収穫があった。

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高田浩吉歌、田中絹代台詞「春琴抄」(ポリドール)袋1000円

ネットオークションで入手したもの。これは昭和12年8月に発売されたもので、高田浩吉田中絹代島津保次郎監督の映画「春琴抄 お琴と佐助」主演者。といっても映画の封切りは昭和10年6月。なぜ2年も経ってからというのもあるのだが、「春琴抄」は映画化以前からラジオドラマやこれと同じようなレコードも出ており、新派や歌舞伎で上演され、順調に版を重ねていたというのもあろう。

で、実際聞いてみようということで、家にある祖母が使っていたプレーヤーにかけてみたが……45回転ではオバケの声のようになってしまった。基本は高田の歌で、終盤に、田中絹代が佐助お前にはこの姿を見られたくなかったがよう察してくれました…の箇所の朗読が合いの手のように入るというもの。

続・中止古書展の注文品

またもや延長となった緊急事態宣言を受けて、開催予定だった古書展が中止に追い込まれている。また、休業要請を受けて古書店も閉めているところが多い。いま、古書となれば日本の古本屋かネットオークションかというところか。

それでもまた、註文して買ってしまう。今日もあれこれ届いた。まずは、前回のエントリに引き続き中止になってしまった西部古書展目録の注文品から。

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昭和二年八月興行「絵本筋書」(新橋演舞場)1000円

谷崎の「お艶殺し」を邦枝完二が脚色したもの、正宗白鳥「隣家の夫婦」、伊原青々園「宝を釣る男」の上演筋書である。こういうのはできれば場で300円とかで見つけたいなあというものである。それから、

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「書痴往来」発禁本往来1200円

「書痴往来」書痴漫談700円

最近必要あって「書痴往来」を読み返していたが、これはちゃんと揃えておくべきかなと持っていないところを註文したもの。「発禁本往来」が小さいサイズというのは知っていたが、こちらもそうだったかと。「13号より、この判式の豆本二冊、従来のA五版二冊を以て一巻といたします」(あとがき)という。こういう揃いもので判型がバラバラというのは収納時にどうにも困るというのがある。ネット古書店にオークションの品。

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谷崎潤一郎棟方志功「歌々板画巻」(宝文館)昭和32年7月30日初凾1395円

これは原稿用の資料としてお安く探していたものだが、ネットオークションで入手。前は1万円前後していたような印象だったが、この価格は嬉しい。

そして、新刊書も買っている。

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杉原一司『杉原一司歌集』(杉原一司歌集刊行会)1500円

杉原一司『杉原一司メトード歌文集』(杉原一司歌集刊行会)800円

塚本邦雄らと共に「メトード」を創刊した同人、くらいの知識しかないが、これは買っておくべきという気がして注文したもの。細かい解説もあって時間があるときに繙いてみたい。

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桂英史「表現のエチカ」(青弓社)定価

ペーター・シュプリンガー前川久美子「アルス・ロンガ」(工作舎)3500円

前者は新品購入、後者はネットオークション。どちらも今年出た本で、目次見てこれは必読と、それでもチマチマ古書で探して片方は多少安く入手。

けっこう買ってしまっている。こないだ扶桑目録速報が来たけれども、これというのがなく注文しなかったのは正解だったかも。