漁書日誌 3.0

はてなダイアリー廃止(201901)を受けてはてなブログに移設しました。

五反田渋谷神保町

長年使ってるスマホがアプリも使ってないのにすぐにバッテリ切れになる。不便極まりない。じゃあと言って、機種変も内蔵電池交換もできない。だましだましうまく使うしかないのである。先週末、バタバタしている間に古書展と映画を見に行った。なんとかなるかなと複数の仕事の同時進行を進めていたのだが、40代も終わりに近づくと大したことをしていなくても体力の減りが目まぐるしく、まさにバランス棒を持っての綱渡り状態である。

そんなことはどうでもいいのだが、金曜日は仕事で必要なコピーを取りに図書館に行き、閉場間際の古書展会場に滑り込む。五反田遊古会である。雨の中、閉場10分を切っていたのでガレージは見ずに2階の会場へ行きザーッと見て回る。で、結局1冊。

シェーアバルト「小遊星物語」(桃源社)昭和41年5月15日カバ函500円

どこでも転がっているようなものだろうけれども、今やっている原稿仕事の資料として。本当ならば平凡社ライブラリー版で欲しいところである。この本、実は未読で、前々から緑色の函に入った「世界異端の文学」版ではないバージョンで欲しいなと安く探していたのだがそのままになってしまっていたという次第。「さかしま」「大伽藍」などは桃源社のこのシリーズでないバージョンで買って読み、このシリーズで買って読んだのはレニエの「生きている過去」くらいか。今では岩波文庫で出ているが90年代は「世界異端の文学」版しかなかった(いや、大正時代にでた荷風の序文付き堀口大学訳の本があるがそれを手に入れたのは「世界異端の文学」版を読み終えた後である)。それというのも、やはり巻数の入った選集ものは書架に単体であると「端本」のような感じがあってなんとなく避けていたのである。今見るとなかなか凝っていてこれはこれでいいなあという気もする。置き場所に逼迫している現在、なるべくなら単行本でなく文庫版でという感じなのだが、この装幀でこの本というのが大事なものもある。未だ「異端」という言葉が今のように軽くない時代の本として、これはこれで持っておきたい。

で、会場を後にして一路渋谷へ向かう。

ユーロスペースで上映中の「REVOLUTION+1」(監督足立正生)が19時上映というのが今日がラストだったからである(以降は午前中)。

基本的には報道で知られる犯人の生い立ちをベースにしている。父親が自殺後、母親が統一教会の熱心な信者になり貧乏どん底生活、兄は病気で片目が失明、自分は貧困で大学進学ならず、妹は親戚の家で進学、就職。人生を台無しにされた「個人的恨み」(と主人公のセリフが劇中にある)での暗殺の話。だいたい金閣寺放火犯でも、三菱銀行北畠支店の銀行強盗でも、映画化されると、犯行直前に女を抱いて近々大それたことするから俺の名前覚えとけ的な定番シーンがあるものだが、これにもそれっぽいシーンがあった。隣人の女に部屋に誘われるが話すのみだし、犯行直前に妹を呼び出し、いかにも迷惑だという妹に「俺を見ろ」と叫ぶシーンがある。で、犯行後、妹が報道を知って私も立ち上がるわ的なシーンになってオヨヨと思った。犯人の親族ということでおそらく今の職場にもいられないような状況だろうに、手のひら返したような態度の変わりようが違和感しかなかった。まああれで終わったら希望も何もない実録物になってしまうだろうからということなんだろうけども。それから逮捕後のイメージシーンで、主人公の山上ならぬ川上が地面にゴロンと横たわるシーンがあるのだが、これは同じ足立正生監督で唐十郎が主演した「犯された白衣」(これも実際の事件の映画化ではなかったか)でも犯行後にゴロンするシーンがあったと思う。ああこれはあれねと思ったことであった。

で、翌日、所用で扶桑書房に立ち寄ってから和洋会古書展に赴く。ザッと見て、2冊のみ購入。

佐藤春夫「詩文半世紀」(読売新聞社)昭和38年9月20日函300円

桑原武雄「第二芸術」(講談社学術文庫)カバ200円

「軍歌 支那征伐」(民友社)明治28年1月3日ラベル

「世界唱歌 上巻」(文友館)明治33年12月4日傷

西宮藤朝「人及び芸術家としての正岡子規」(新潮社)大正7年6月6日カバ欠

前の2冊が和洋会会場で購入したもので、後ろ3冊は扶桑書房の3冊100円。佐藤春夫のはまあ適当な伝記として持っておくかと。ただこの本、奥付表記が変で、普通に印刷発行の日付が記載されているものの奥付のタイトルの下に小さく「(二刷)」と印刷してある。2刷の日付がわからない。戦後なので出版法的には奥付がどうあろうと問題はないのだけれども。そして3冊100円のは、全て某大学図書館の除籍本。奥付に購入時の古書価?が鉛筆で記載してあって合計するとピッタリ今回の300倍の値段ですごいなこれはと思ったことである。

降るまえの趣味展

気温が少し下がり、午後からは雨という予報。ここ連日は、少しは暖かで猛烈な花粉の日々であった。

で、趣味展。目録注文なし。電車を一本逃してしまい9時50分くらいに会場到着。検温があるのでやはり入場には時間がかかる。扶桑の棚へ。今日は何故か大佛次郎の本や資料があれこれと目についた。以前だったら、これは安いな一応買って持っておくか、というような本があれこれとあったが、お金やら置き場所やらを考えて手にとるもののそのまま棚に戻す。昼過ぎ、古書仲間と共に会場を出て申し込んでいた本を受け取ってから、改めて会場へ。ザッと見て回ってお会計。

日用百科全書「和洋礼式」(博文館)明治28年5月15日初版口絵木版欠1000円

尾崎紅葉「冷熱」(春陽堂明治29年5月20日再版印800円

「冷熱」は口絵欠を所持しているが、こちらは永洗の口絵付きで嬉しいところ。

徳富蘇峰編「誕生日」(民友社)明治25年9月7日3版200円

徳田秋声「誘惑(前編)」(新潮社)大正6年6月1日初カバ欠背半分欠500円

長田幹彦「埋木」(春陽堂大正14年6月15日改版函欠汚3000円

「誕生日」というのは書き込み多数でなんだかよくわからなかったのだが、漢詩や和歌やカットがところどころ入った日記のようなもの。造本が湖処子の「抒情詩」みたいな感じでこれは三方赤染になっている。資料として購入。「埋木」は夢二装幀本の中でもいつかは欲しいなあと思っていた本(こちらは改版で、元版はまた異なる夢二の絵柄)。もちろん美本では手がでない。

北原白秋「わすれなぐさ」(アルス)大正9年3月15日10版函800円

萩原朔太郎「蝶を夢む」(新潮社)大正12年7月14日初背痛300円

長谷川伸平山蘆江・土師清二「考証読物集」(岡倉書房)昭和8年7月14日帙1000円

白秋は持っているが、これは本冊が綺麗だったため。それぞれの和綴小冊子が3冊セットになって帙入りになっている「考証読物集」前々から見かけていたが装幀資料として。

吉屋信子「小市民」(春陽堂文庫)昭和13年10月31日18版帯300円

三島由紀夫潮騒」(新潮社)昭和29年6月30日2刷カバ帯500円

大佛次郎「おかしな奴」(光風社)昭和32年12月20日初カバ300円

吉屋信子のは新聞連載時?の挿絵がちょこちょこ入っている。大佛次郎のは雁タレカバーなので装幀資料用に。で、「潮騒」である。実は2刷を探していた。初版と3刷は持っていて、3刷で変わった帯の推薦文は2刷から変わったのではないのかと確認したかったのだ。では2刷が欲しいといって都合よく見つけられるかといえば至難の業である。しかも帯である。「そんなの3刷の帯つけた2刷じゃないの」と思われるかもしれないが、帯の裏表紙面の推薦文と関係なく、おもて表紙面も初版、2刷、3刷とちょっと印刷が異なるのは今回並べて比較して初めて気がついた次第。

反歌」1号(昭和45年6月30日)500円

反歌」2号(昭和46年12月15日)500円

反歌」は須永朝彦が発行者の同人誌で2号で終刊。1号には塚本邦雄をはじめ、種村季弘、山中智恵子ら。2号には塚本、永田耕衣、加藤郁乎、高橋睦郎ら。

川島幸希「太宰治『晩年』の署名本」(日本古書通信社)新刊定価

そしてこれが今日著者ご本人から受け取ってきた本。「晩年」のユニークなそれぞれ異なる識語を写真入りで23冊紹介している本。筆記用具も筆跡やら書き方などもそれぞれ異なっていて、こうしてズラリ並べてみるとなかなか興味深い。

いやしかし、本を買いすぎである。金がない。

半年振りの高円寺

3月4〜5日開催のVintage Book Lab.展初日のために西部古書会館に行く。前回が8月の頭だったんで、ちょうど7ヶ月振りか。高円寺に来るのもそれ以来である。と書いたが、いやいや先月芝居のついでに中央線古書展に来たのを忘れていた。

10時40分ごろ高円寺に着いて会場に赴くと、すでにガレージ部分は開放されわしゃわしゃと本をあさっている客でごった返す一方、入り口になんとなく入場のための行列ができていた。今更でもあるしと列に並ぶ。

10時になると開場して先頭集団がワッと雪崩れ込んだが「これ荷物預け大変なことになるのでは」と思いきや、荷物預かりは無しという。全品500円均一である盛林堂の棚へ。黒っぽい?ものや仙花紙本が並んでいる手前の棚は人がダマになってとても見られないので、奥の方から見ていく。

『黒魔術の手帖』初版函付の美本など、これが500円かと思うとすでに持っているのにも関わらず悔しくてカゴに入れてしまうが、買ったところで置く場所もないと棚に戻す。そういう本が5〜6冊あった。

室生犀星の『肉の記録』の状態の悪い裸本が2冊あり、綺麗めの方を選んだのだが、そこに扶桑書房のタスキが挟まっており、20ページ近くの落丁の旨記されていた。それはなあともう1冊の水シミが酷い方を選んだが、こちらも後からみると扉が欠であった。鴎外の『うた日記』も抱えていたが扉欠。元版で背に欠損のある『珊瑚集』は奥付欠。500円なりの状態だが、これは持っていなければ買うなあと思う。他に井伏鱒二の元版が結構並んでいたのが印象的であった。

しばらくして他の参加書店の棚も見にいくが、オッと思って手に取って6千円とかの値付けがされていると、500円棚との落差の感覚でサッと元に戻してしまう。1時間くらいしてからだろうか、改めて500円棚を見ていくと、リバース分がちょろちょろ。最終的にここで戻すものを戻してお会計。

菊池寛「啓吉物語」(玄文社)大正13年2月18日5版凾付美本

室生犀星「肉の記録」(文化社)大正13年3月25日初版函欠痛水シミ

西条八十「孝女白菊」(「少女倶楽部」昭和8年10月号付録)

菊池寛のは表紙に芥川の句が印刷されているもの。同じ5版凾付を持っているが美本なので差し替え用。

大宅壮一「ヂャーナリズム講話」(白揚社昭和10年3月5日初版函付

リラダン(斎藤磯雄訳)「(続)残酷物語」(三笠書房昭和15年7月15日初版函欠

大宅壮一のは論文資料用。リラダンは、奥付に書名なく表紙にSUITEとあるのを気づかず買ってしまったが、後記を読んでいてああこれはあの2冊本の続編か、と。トリビュラ・ボノメと取り違えていた。装幀資料用。

「書祭(地)」(書物展望社昭和15年1月20日特装函

「書祭(人)」(書物展望社昭和15年5月18日特装函

これでようやく「書祭」の天地人特装版3冊が揃った。天の巻奥付には限定●部という記載がなく番号だけあって何部出たものだと思っていたが、地人の巻には奥付にちゃんと特装限定100部と記載があった。で、ここで買った2冊はともに記番が1番。会場にあった天の巻もおそらく1番だったろう。どうせなら揃えればとも思うが持ち帰りが大変だと1冊残してきてしまった。

三島由紀夫「創作ノォト」(ひまわり社)昭和30年7月25日帙付録

三島由紀夫林房雄論」(新潮社)昭和38年8月30日函

プルースト窪田般弥訳)「画家と音楽家たちの肖像」(コーベブックス)昭和49年冬函

三島のはもちろん両冊とも完本で所持しているが、安いため。両方とも函が踏んだように潰れている。創作ノォトは汚れもあるが一応付属品は欠けていなかったため。

池内紀「天狗洞食客記」(コーベブックス)昭和51年11月30日函帯

バタイユ生田耕作訳)「聖なる神」(二見書房)平成8年6月25日初版函函カバ

岡井隆伊太利亜」(書肆山田)平成16年2月25日函

コーベブックスのは近代文学逍遥というシリーズもので、これは牧野信一の巻。これは何冊か持っているが和紙を使った素晴らしい造本。バタイユは無削除完訳版。学生時代だったか、翻訳原稿1枚付のピンクの函にたとう納めの限定本を買って持っていたが、金欠で売却したのでいつか安く見つけたら買っておくかと思っていたもの。岡井隆のは横綴じ本を函に縦に入れるもので装幀資料用として。中身も横書きの短歌という実験的なもの。

寺山修司・薄奈々美「カタツムリの笛」(サンリオ)昭和54年5月25日初版カバ

上村一夫「一葉裏日記」(小学館)昭和61年5月10日初版函

矢川澄子野溝七生子というひと」(晶文社)平成2年1月20日初版函帯

寺山の絵本は、メタ展開のストーリーでこれも前から安く探していたのでちょうどよかった。上村一夫は、まあ文芸もの、ということで。

500円だしと気を許してしまって、かなり買ってしまった。重い。古書仲間を誘い西部古書会館近くのぎょうざの満州でランチをした後、4丁目カフェでお茶して帰途。本当は、愛書会古書展にいく予定だったが、重いし、くたびれたので予定変更である。

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ここ最近、献呈していただいた本を紹介。

ありがとうございます。

 

 

 

ぐろりや会と2月のあれこれ

ようやく採点地獄が終わり、ヘトヘトになってあとは来季の準備とそれから休みの間中に原稿を書かなければならないという流れ。古書展は、最近はこれというものもなく。閉場1時間前くらいに会場到着してざっと回る。

 

佐藤佐太郎「海雲」(短歌新聞社)昭和46年4月10日250円

鷲田清一編「大正=歴史の踊り場とは何か」(講談社選書メチエ)カバ帯700円

ベンヤミン メディア・芸術論集」(河出文庫)カバ帯900円

他に新刊書などで買わなければならない本やらネット注文してしまったものもあり、これだけ。佐藤佐太郎は実は読んだことがなかったので。

大島逸平「古本売買の実際知識」(古典社)昭和6年7月20日4版函欠490円

ノエル・キャロル「ホラーの哲学」(フィルムアート社)定価

「古本売買」は何かの参考文献で出てきて、検索したら安かったので、国会のデジコレで中身を確認してから注文。「ホラーの哲学」は刊行後、ケチなことにずっとネット古書店やら何やらで探したが送料含めたら定価と同じというので東京堂にて定価購入。

高安月郊「高安の里」(書物展望社)昭和年月日初版函300円

たまたま買ってみたもの。というのも自伝的エッセイ部分で読書しているシーンがあるか探索していたのである。ちょっと原稿用のネタなのだが、明治期の文学青年が詩集を読む回想録を探している。しかしまあこの本、一応書物展望社が版元だが、函には一才その旨の表記なく、裏表紙に空押ししてるのみ。月郊が金だした自費出版的な本かなあと。表紙は面取りされていて木版だし凝っている。

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書きそびれていた先日行った映画やら芝居のことなど。

合田佐和子展@三鷹市美術ギャラリー

2月11日に赴いた。三鷹で下車したのは、もしかしたら初めてかもしれない。とりわけ初期のオブジェ作品などは初めて見るものばかり。また状況劇場やら寺山の芝居のポスターの原画などもなかなか感慨深いものがあった。

で、せっかく三鷹くんだりまできたのだからと三鷹古書店を検索し、水中書店を覗いてみる。綺麗で広い印象。そしてなかなかのお手頃価格で、あれこれと逡巡して結局何冊か買ってしまった。

裏田稔「占領軍の郵便検閲と郵趣」(日本郵趣出版)帯500円

ドフラーヌ「対独協力の歴史」(文庫クセジュ)カバ300円

酒井道夫編「編集研究」(武蔵野美術大学出版局)帯ビニカバ500円

そして翌週は東京都写真美術館ホールでの恵比寿映像祭で飯村隆彦の特集を見に行く。

活字ー近代日本を支えた小さな巨人たち展@横浜歴史博物館に赴く。が、初めて乗った路線、初めて下車する駅で、ギリギリ入場ラストの16時半に間に合わず。仕方なく物販で図録だけ買って帰る。そしてそのまま横浜へ。

夜は神奈川芸術劇場での地点公演「騒音。見ているのに見えない。見えなくても見ている!」(エルフリーデ・イェリネク作、三浦基演出)を観劇。

帰宅してみると扶桑書房目録で注文した本が届いていた。

尾崎紅葉「紙きぬた」(春陽堂明治25年5月14日初版破れ袋付8000円

綿貫六助「霊肉を凝視めて」(自然社)大正12年2月13日初函5000円

「活字」展図録ポスター付1800円

紅葉のは袋目当て。資料用。そしてなんといっても嬉しいのは綿貫六助。なかなか出ないだろうなあと思っていた矢先の出物だったんでドンピシャであった。

2月は2週に渡って古書展がなく、鬱憤を晴らすが如く扶桑目録が来る前にネットで前から安く欲しかった本を買ってしまっていたのである。

斎藤磯雄訳「火箭・赤裸の心」(立風書房)昭和49年8月10日函5800円

限定150部の背革天金装で訳者の毛筆署名入り。段ボールの外函は欠。で、届いてみると、これ革なのかとどうにも不審。装幀は前川直だが、前川は同じ版元で吉行淳之介の「薔薇販売人」も装幀をやっているけれどもあれは一見革のように見えるクロスであった。で、今回のも実際に手にしてみると、どうにも革ではなく革っぽいクロスのような感じなのである。どうなんだろ…。

2月の窓展

窓展。今年最初の窓展である。ということで、いつものように開場15分前に古書会館に向かったのだが、バスが遅れ電車も遅れ、いつも通りきたのにも関わらず会場到着は10時3分くらいに。

まずはあきつ書店の棚へ。かなりの混み合い。なんだろう、趣味展の扶桑書房の棚よりもマナーの悪い爺様が多い印象。慣れてはいるが、自分のペースで突っ込んでぶつかってくるのはやはり少し苛立つ。いくつか抱えながらも、他の書店の棚を回る。

いつものことだが、なぜか今日は眠れず寝不足がひどい。昼過ぎには会計して、友人とお茶して帰る。

で、会場で買ったものは以下。

溝口白羊「不如帰の歌」(岡村書店)明治42年9月25日44版800円

高山樗牛「滝口入道」(春陽堂大正2年11月1日18版300円

上田貞治郎「魔法的写真術」(上田写真機店)大正9年8月13日3版300円

「魔法的写真術」というのは正直、タイトルに惹かれて購入。「趣味深き写真術」要は写真テクのこと。どうも輸入書の翻訳のようでもあり挿絵などが海外っぽい。写真叢書の第3編。「不如帰の歌」はとうに所持しているが、奥付を見てみると「発行所」の記載はない代わりに「発売所」として三つの書店が記されている。その一つに東京堂書店がある。これって大正時代に書籍商組合ができる前の「特約販売」ということだ。つまり販売している小売が制作資金出して一手に売り捌く本。

荒江啓「真珠の夢」(宝文館)昭和4年7月10日7版函欠背欠600円

柳原白蓮「指鬘外道」(大鎧閣)大正10年11月5日5版函欠300円

長谷川伸「一本刀土俵入」(日本小説文庫)昭和10年3月10日12版300円

「真珠の夢」という本は全然知らなかったが、スモーキーな水色羽二重に銀と薄桃色の箔押し、白クロスの継表紙。装幀は衣川美鈴。カラー口絵ほか挿絵入り。「指鬘外道」も凾付を持っているが、表紙模様が異装。口絵は夢二。それから長谷川伸は、小林秀恒の挿絵入り。

久保田万太郎脚色「鵙屋春琴」(劇と評論社)昭和10年8月1日記名200円

民間情報教育部編纂「国体の民主化とは」(社会教育聯合会)昭和22年9月1日改訂版」300円

「鵙屋春琴」は前に綺麗なのを2000円で買ったが、200円だったので悔しくて購入。ただ記名のところに購入日が記してあり昭和10年8月15日に買ったようだ。もしかしたら劇場で売られてて観劇ついでに買ったのかも。「国体の民主化」はCIE発行。占領期資料。

新橋演舞場」10月号(松竹)昭和24年10月3日110円

「アートシアター」122(日本ATG)昭和51年7月17日300円

日本オペラ協会公演「春琴抄」パンフレット100円

ATGのは「金閣寺」の。持ってるが安いので予備にと。それから「新橋演舞場」は筋書きで、昭和24年10月の。谷崎原作、久保万脚色の「お艶殺し」。10月号となっているが、当時雑誌形式だったのか。

三越のあゆみ」(三越本部総務部)昭和29年11月1日函挨拶状付600円

「游魚」7号、8号、各200円

三越のは呉服店時代から明治大正の展開がわかる資料として。「游魚」は何冊か持っているが、5〜6冊が1冊200円であって逡巡したが重いので2冊だけ。

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石丸梧平「小説家志願」(大阪屋号書店大正13年5月1日初版函1500円

これは前々からちょっと欲しかった本で、古書展とは別に日本の古本屋経由で注文したもの。蕗谷虹児装幀。明治大正期の小説家表象の参考資料である。が、買ってみたらどうも著者の自伝的小説であった。

城南展、ほか

城南古書展が、今回を以て休会だという。実質終わりということだ。高齢化とか色々と理由があるのだと思うが寂しいものである。

で、金曜日に行けなかった城南展、2日目の土曜日にちらと覗く時間があった。ザーッと回って、2冊。

それから御茶ノ水駅に戻り、一路高円寺へ。西部古書会館での中央線古書展。高円寺に来るのは夏以来だから半年ぶりか。ザッとだけ見て文庫を2冊。

で、城南展、中央線展で購入したもの。

ルポルタージュと生活記録」(日本機関紙協会)200円

上田博他編「明治文芸館4」(嵯峨野書院)100円

久松真一「茶道の哲学」(講談社学術文庫)200円

秦孝治郎「露天市・縁日市」(中公文庫)200円

上記2点が城南展。ルポルタージュのは刊記なしの小冊子。1950年代の左翼芸術の記録芸術関係の資料になるかと購入。

その後、座・高円寺へ向かう。高円寺を環七側に行くのも20年ぶりくらいか。実は座・高円寺に行くのは初なのである。おおというくらいに整備された綺麗な劇場。今日はここに、アポロの杯公演「船の挨拶・灯台」を観に来たのである。

アポロの杯公演、三島由紀夫作「船の挨拶」「灯台」@座・高円寺2。

「船の挨拶」は昨年艤装会社の寮を使った上演を観たが、今回はある程度間口のある劇場での上演、どうしてもスペースが空くが、上手に舞台を、下手にはブラインドを下げて、チェロの生演奏(蝶が入ってきたシーンのみ)とカゴに小豆を入れた波音の効果音などをその場でやるという処理。ただチェロの演奏音はちょっと大きすぎたかもしれない。一方「灯台」は、奥に夫婦の寝室があるていでベッド的オブジェ、手前に2つベッド的オブジェ。俳優はなかなかの熱演で、戯曲ではあくまで会話で進められる昇といさ子だが、今回は手を握ったりあわやキスシーンというような感じのかなり突っ込んだ演出がなされていた。現代の観客にもわかりような演出ともいうべきか。衣装など細部もいいもので面白く観た。

実はパンフに寄稿しており御招待だったのだが、そういうこととは関係なく良質の成果だったと思う。

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そういえば、先日届いた扶桑書房目録速報での注文品。

堀口大学詩集」(第一書房昭和3年6月15日総革三方金スレ函4500円

泉鏡花「薄紅梅」(中央公論社昭和14年10月28日函痛スレ4000円

大学詩集は第一書房の総革装特に天小口に装飾のある本が欲しかったため。雪岱装幀の「薄紅梅」は未所持だったし、やはりこの清方の口絵のある本は前から欲しかった。美本ではないがこの値段ならば大満足。

天小口の装飾とはこれのこと。大学詩集は奥付にも初刷〇〇部などの記載がないが定価6円はかなり高額だと思う。小口の金へのこうした装飾や、表紙のチリ部分への装飾が施された近代文学書はあまり多くないと思う。第一書房の革装本については、革質だの製本だのについてあれこれ言われることもあるが、まあ第一書房の装幀本がなかったら、こんなに装幀に興味を持っていなかったかもしれない。

年明け趣味展

さて、年末年始ほかに古書展あったかもしれないが、あれやこれやで行けなかったのがある。三省堂書店池袋の大古本市もそうだ。注文はしていたのだが、外れたのでそのままになってしまった。毎年欠かさず行っていたのだが。

で、1月14日初日の趣味展。いつもよりもちょっと早く、9時40分には到着。それでも40人くらいは並んでいたか。検温があるので、3分前くらいには開場。まずは扶桑書房の棚へ。今回は、やたら野口米次郎の本が多かった印象。一通り漁ってから、会場を一周。色々と悩みながらも吟味し数を減らしたが、それでも結構いってしまいそう。昼に友人とちょいと抜けてお茶してから再度リバース分などを見て、お会計。

水谷不倒「枯野の真葛」(春陽堂明治30年8月8日1500円

夏目漱石「漾虚集」(大倉書店)大正6年1月24日11版1500円

不倒のは永洗の木版口絵入り。漾虚集の方はご存じ橋口五葉装。

リヒテル「小説 社会主義が実行されたなら」(天書閣書楼)明治43年4月10日400円

柳原白蓮「踏絵」(竹柏会)大正10年6月11日6版200円

佐藤春夫「純情詩集」(新潮社)大正12年4月30日8版300円

社会主義」はなかなか面白そうと購入。ドイツ作家の翻訳らしいのだが、小説の中身はドイツが舞台なのに人物は皆日本人にしてありなんだか妙な感じ。白蓮のはだいぶ前に持っていたのを売ってしまったので。夢二装で夢二の口絵も入っている。この本は、前に総革装の本を買ったことがあるが特装らしい。そして「純情詩集」。これももちろん重版は既に持っている。前に何で読んだのか思い出せないのだが、確かこの本も特装本があってそれは重版の一部に羽二重装幀がある云々といったことを読んだ朧な記憶がある。あれでも元々これって羽二重装ではという疑問もあったが、奥付の検印が印ではなくて万年筆で書いた「春」だったので、この値段ならいいかと購入。しかしあれは何で読んだんだろう。

現代日本の底辺1「最下層の人びと」(三一書房)初カバ200円

現代日本の底辺2「行商人と日雇」(三一書房)初カバ月報200円

現代日本の底辺3「行商人と日雇」(三一書房)再カバ200円

フーケ「ウンディーネ」(ホセコルティ)1943背割1000円

現代日本の底辺」は全4巻、300円以下縛りで探してきたがこれで揃った。しかしカバー違いがある。ただ月報はまだ2冊分足りない。こんなの集めている人はいないだろうが、当時のドキュメントとして興味深い。

それからウンディーネ

フーケ没後100年を記念して出た仏語訳で、ヴァランティーヌ・ユゴーリトグラフが挿絵として18葉挿入されている。この女流画家はブルトンの本で知ったなあ。まあ千円ならば手が出るかと購入。前にも趣味展だったか窓展だったかで、アラステア挿絵の仏語訳サロメを買ったことがあるが、こういう本がポンと紛れているのが面白い。

三島由紀夫関連演劇チラシ一括1000円

映画「RAMPO」パンフ300円

三島関連チラシはNLTのリュイ・ブラス、浪曼劇場のクレオパトラ、皇女フェドラ、薔薇と海賊。同じものが10枚以上どさっと入っている演目もある。

これでもかなり抑えたつもりだが結構な金額になってしまった。貧乏書生としては、またあれこれと本を売却しなければならない。