漁書日誌 3.0

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趣味展、快晴

5月20日、快晴。趣味展の初日である。先日の扶桑書房目録で買い物をしたばかりであるのに、こちらの趣味展の目録でも扶桑書房他いくつかの古書店へ注文をしている。正直、お金が心配だ。いつものように新御茶ノ水駅に9時40分くらいに到着して、そのまま古書会館へ一直線。ワタクシが到着した時点で40数名並んでいる。コロナが収まってきて、かつ、快晴ということもあるだろう。入場には無論検温と手消毒。そして開場。扶桑書房の棚へ向かう。すると、棚が少ない。いつもは3棚あって、1棚は目録掲載のタスキ本が並んでいるのだが、今回は2棚で、つまりフリーの棚が1つ少ないのである。

今回はしかし、注文本もある。後ろの方で到着が遅れたからか、ワタクシにとって興味ありそうなところは、いつもよりは少ない感じ。花袋のエッセイや紀行本などが目立つ。一通り見てから、会場を一回り。その後、お昼に抜ける際に注文品を確認。全部当たっている。古書仲間の人とお昼を食べ、お茶してから会場に戻り、予算的にいくつか棚に戻す。戻しながらもまた棚から抜く。予算は限られている。そして14時頃、お会計。

長与善郎「項羽と劉邦」(新潮社)大正11年6月5日改版函4500円

相馬健作「文壇太平記」(万生閣)大正15年10月15日3版裸4500円

福沢諭吉「学問ノススメ」初編第2編2冊3000円

まずは目録注文品。長与善郎のは今度の原稿のために必要あって購入。実は既に裸本は所持しているけれども函付きが嬉しい。「文壇太平記」は国会デジタルで読んで、面白そうだったので実物入手。単に読み物としても面白い。福沢諭吉は明治初期ベストセラー本として実物を持っておきたかった。高いのか安いのかもよくわからない。ざっと検索してみると、慶應義塾のサイトに詳しい情報があり、最初に出た版ではないらしい。最初は1冊のみの予定が続くことになったので、後刷のものはタイトルに初編と入っているという。巻末の刊記には明治6年4月真片仮名再刻とあるが、実際には、明治6年11月に第二篇を出すにあたりタイトルに初編と入れたバージョンのようだ。初編には慶應義塾の印、2編には福沢の印があるから偽版ではないだろう。

三省堂編「書斎と読書」(三省堂昭和16年12月15日3版裸400円

ブルーム「影響の不安」(新曜社)カバ2000円

「影響の不安」も目録注文品。2004年の本だがこれがまた古書で全然でなくて、マケプレでバカみたいなプレミアをつけるものだから古書店でも2万とか平気でつけている。ここ20年の学術系の本で、こういう妙なプレミア価格になっている本が目立つ。刷部数が少ないからというのもあるだろうけれども、マケプレの影響なのだろう。大学の予算で自分の金ではないからこのくらいつけても研究者は買うだろうと踏んでのことか、と思われる。三省堂の本はこれも原稿のための資料本。

金子薫園「小詩国」(新潮社)明治38年4月12日再販裸400円

辻潤訳「阿片溺愛者の告白」(三陽堂書店)大正7年5月20日再販カバ欠500円

薫園の歌集はその判型のため。原稿資料用。ド・クインシーのもまあ資料だが、辻潤の本としてこれは欲しいところ。同じ判型、同じような装幀の「響影」はもう10年以上前に扶桑目録で買った。両者とも本当はカバーがついている本。薫園のはカバーがあったのだろうか(ありそう)。

「文芸懇話会」佐藤春夫編緝臨時特緝号400円

「午前」昭和21年7月号800円

「新文学」昭和22年2月号300円

「舢板」第3期13号200円

「午前」は福岡の雑誌で三島掲載号、「新文学」は全国書房の雑誌で、同社から刊行予定で谷崎の凝った本の刊行予告が出ている号(結局未刊、拙著に図版掲載)。「文芸懇話会」は前々から欲しいと思っていた号で「近世文藝名家伝記資料」と銘打ち、黙阿彌から十一谷義三郎までの略歴などが掲載されている号。「舢板」は吉田健一の「でたらめろん」についてのエッセイが出ているので読みたくて購入。

いやしかし、買いも買ったり、だ。こんなに立て続けであれこれと買っているけれども、もちろん火の車でどうしようもない。「これは原稿の資料だから」と自分に言い訳を立てて買っているが、容赦なく現実に押し潰されて行くのだろうなあ。

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21日、土曜日。珍しくぐっすりと寝て午前中に起床した。天気も良く、暗澹とお先真っ暗な行く末を考えて鬱々とするよりはと、映画を観に出かける。

若松孝二初期傑作選@シネマヴェーラ渋谷。18時からの「恐ろしき遺産 裸の影」(1964)である。本当は「カーマスートラ」も観たかった。若松の初期は「壁の中の秘事」とか「胎児が密猟する時」くらいしか観たことがなかった。今度のは初めてみるもの。少女漫画に出てきそうな元気な女子高生が、自分が胎内被曝し原爆症を発症していることを自覚して自殺するという話。昭和40年前後、高峰秀子の「原爆少女」との対談(同著「私のインタビュー」収録)とか、映画「愛と死を見つめて」とか「その夜は忘れない」というのも昔観たことがあった。意外な監督作だったが、必ずしも必要なかろう女子高バレー部合宿での入浴シーンとか、やはり若松だなという感じもしないでもない。