漁書日誌 3.0

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三匹目の麒麟など

連休初日である金曜日、寒く雨であったこともあり蟄居。このところ、ぐっと暖かくというか暑くなりヒートテック下着すらいらないなと仕舞い込んだのに急にグッと冷え込み、また戻りという不安定な気候が続く。土曜日は一転して快晴、暖かになった。古書会館では城北展である。それに先日扶桑書房目録が届いて結構注文してしまっていたので、あまり出費はしたくない。出費ももちろんだが、最近は本の置き場所をまず考えてしまって、「安いからついでに」という買い物をしなくなった。もうゴミ屋敷状態なのである。

それはさておき、土曜は所用で神保町に出たので、夕方閉場までの1時間ほど城北展を回った。今回、目録が届いていない。これは切られたのかと、入場の際に帳場の人に聞いてみると、今回は目録発行をしていないのだという。幾つか抱えるも、お金や場所を考えて、あれもこれもと棚に戻す。最終的に購入したのは以下。

寿岳文章「書物之道」(書物展望社昭和9年12月7日初版函200円

宇能鴻一郎「味な旅 舌の旅」(中公文庫)300円

雑誌「ブックマン」26号200円

「書物之道」は嬉しい。函背がないなと思ったら本体に挟んであった。簡単に修理で治る。しかし200円てのは安い。初版は950部、布装で天小口が藍色染。

で扶桑書房目録で買ったもの。今回の目録は速報ではなくて、前回に引き続き、私もお世話になったりしている某コレクターのコレクション処分のもので、前回が高額商品がドシドシ出ていたのに比べると、お手頃なものなどがドサリと出ていた。谷崎松子代筆の谷崎書簡なども出ていたが、結局注文したのは4点。

尾崎紅葉「二人比丘尼色懺悔」(吉岡書店:新著百種)明治22年4月1日初版4000円

菊池寛藤十郎の恋」(新潮社)大正10年6月25日14版パラフィンカバー6000円

谷崎潤一郎麒麟」(植竹書院)大正4年3月1日5版函8000円

谷崎潤一郎「近代情痴集」(新潮文庫昭和4年2月17日初版3000円

以上である。紅葉のは蔵書印があるがかなりの美本。やっと入手したと思いきや、なんと少々痛んだ同書を自宅書架で発見…まあ今回のが美本だからいいかと。そして「藤十郎の恋」は前回の目録でも初版のパラフィンカバー付きが出ていたが、初版などは手が出ないのでこちらの重版を。パラフィンカバーと言っているが、元パラにタイトル印刷がしてあるというもの。これが資料として欲しかった。こちらもかなりのコンディション。

そして谷崎の本。まずは今回購入品の目玉である「麒麟」5版。多分これが植竹書院版の最終版。植竹倒産後に引き継いだ、後版であるところの三星堂版はすべてなぜか「参版」なのである。植竹版の「麒麟」は青表紙と途中の重版から朱色表紙(今回の)とあるが、前に再販青表紙函付を入手しているので、これで「麒麟」は三匹。初版は手が出ないのでこれでひとまずはよしとする。「近代情痴集」は四六判の新潮文庫版。こちらも持っていなかった。表紙や奥付では「近代情痴集」だが、扉では「増補近代情痴集附り異国綺譚」となっている。元版と比べ、収録作品に異動があるのである。

で、間が空いてしまってうっかり忘れてしまっていたが、ぐろりや会古書展に4月22日に行ってきたのであった。

山東功「唱歌と国語」(講談社選書メチエ)カバ帯550円

ブランショ「書物の不在」(月曜社)2版カバ1300円

林房雄大東亜戦争肯定論」(中公文庫)カバ600円

雑誌「批評」昭和40年春号200円

ブランショのこの本が安く入手できてよかった。林房雄のは元版で持っているが読むのにはこちらのがよい。「批評」は所持本が汚れているので、というところ。

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佐藤未央子「谷崎潤一郎と映画の存在論」(水声社

献呈していただきました。感謝。映画と谷崎に関する決定的な研究書。観念的なイメージを徹底的な同時代言説の博捜からなる実証で裏打ちしていく優れた成果。スタイリッシュな装幀は真田幸治君。