漁書日誌 3.0

はてなダイアリー廃止(201901)を受けてはてなブログに移設しました。

胃カメラ古書

前日夜9時から絶食。それというのも市の健診で胃カメラをやることになっていたのである。9時に予約していた病院へ行き、胃のなかであぶくが出ないようにする液体を飲み、その後かなりドロっとした(麻酔?)をコップ半分飲み、残り半分は指示通り2分間口に留めておいてから飲む。台に横になってマウスピースを咥え、これからかなと思った次の瞬間、気がつくと別のベッドに寝てい、全てが終わっていた。眠くなってきたというのもない、一瞬でスイッチオフみたいに寝てしまったようだ。結果説明のあと、ようやく病院から解放。茶店に行って一服し、それから昼食。そして神保町に向かう。

和洋会の初日。ザーッとみていくが、なんと買うものが一冊もない。そのまま今度は神保町駅に向かい、一路五反田へ。

五反田遊古会、初日。こちらでも目録注文品はない。まずはガレージ。特にないかなあという感じだったが、これは買っておくかというので3冊ほど。ヘッセの文庫は背が水色の新潮文庫しか知らなかったが角川文庫でも出ていたんだなと。新潮文庫の復刊シリーズに入っていたような気もするが勘違いかも。

LOUIS VUITTON CITY GUIDE TOKYO」函200円

ユリイカ」特集澁澤龍彦(1975.9)200円

ヘッセ「世界文学をどう読むか」(角川文庫)カバ200円

「お軽と勘平」(帝国劇場)パンフレット500円

ヴィトンのは中をパラパラしたら三島由紀夫が云々という記事が出てきたので買ってみたというもの。エノケンとコーチャンのお軽と勘平は昭和26年12月のもの。ただしこれは2階の会場で買ったもの。2階の会場では、ザーッと回って以下のものを購入。

吉田健一吉田茂・大磯対談」(文藝春秋新社)昭和31年12月20日初版カバ300円

原田禹雄「白き西風の花」(湯川書房)昭和49年8月25日カバ毛筆署名500円

「K K通信」(1953.12)200円

「白き西風の花」は叢書・火の雉子の一冊。あれこれは函欠かなと思っていたのだがどうもこの叢書は途中からカバー装になったようだ。解題は塚本邦雄で限定300部。表紙に折れ跡があるがこの値段なら買っておくかと。

なるべくお金を使わないようにとそのまま帰宅。帰宅してみるとネットで入手した本が届いていた。

有吉佐和子「非色」(中央公論社)昭和39年8月8日初版カバ帯美1000円

これは前々から状態の良いものを欲しかった本で、装幀資料として。この本、小口三方が黒染なのである。見返しも扉も黒。黒と白ツートンカラーの装幀。

連続朝イチ

先週は窓展そして今週は趣味展と、2週連続で朝イチの古書展であった。いつもより金も使うし、気力体力も使うので連続というのはちょっとキツいものがある。今日はまたちょっと路線バスが遅れて乗る予定だった電車に乗れず、結局古書会館についたのは開場5分前だったのだが、入り口に降りて行くとすでに開場していた。カゴを持って扶桑書房の棚に向かう。おおこれはというものは特になく、それでもいくつかカゴに。今日はやたら与謝野晶子の本が目立った。一応署名のあるなしを確認するが無し。博文館の「少年文学」がズラッとあったので、そこから一冊選ぶ。会場をぐるりと回っていく。オッという見つけものもあり、とりあえず帳場に預けて友人とお茶。

その後、再度会場に戻りリバース分などあるかどうか確認、その後カゴのものを吟味してお会計。

饗庭篁村「むら竹第14巻」(春陽堂明治23年3月21日裏表紙落書500円

尾崎紅葉「紅鹿子」(春陽堂明治29年2月4日3版背欠500円

尾崎紅葉金色夜叉 前編」(春陽堂明治31年7月6日初版裸

    「金色夜叉 中編」(春陽堂明治32年5月1日再版裸

    「金色夜叉 後編」(春陽堂明治34年11月12日3版裸揃800円

一応抱えたがと、「金色夜叉」の奥付を見るとなんと初版。残念ながら1冊だけだったがまあ。もちろん裸の揃いは既に持っている。「紅鹿子」は桂舟の挿絵がちらほらと入っている。表紙が痛んでいるが。「むら竹」は今回初めて買ってみたが、これは雑誌扱いの単行本で良いのか。つまり「新著百種」みたいなものか。

松林伯円「北雪美人 雪夜情誌」(駸々堂明治22年10月落丁奥付欠400円

村井弦斎「紀文大盡」(博文館)明治26年7月20日再版印400円

若菜家胡蝶編「端唄集」(松陽堂書店)大正8年10月25日400円

ボール表紙本は落丁部分のコピー(おそらく国会のデジコレ)が挟んであってまあこの値段ならとよく確認しなかったのだが、購入後よく見るとコピーは挟んであるのではなくてA4を折りたたんだのをノドに糊付けしていた。判型思い切りはみ出ているのに何してくれてるんだ。しかも奥付欠。国会デジコレで確認してみると冒頭の挿絵も一枚無い様子でこれは失敗したか。国会デジコレのは納本分で奥付の月日が流布本とは違っていそう。弦斎のは「少年文学」がズラッとあった中から状態がいいからと選んだもの。端唄のは「江戸歌曲叢書」というシリーズの1冊で一応木版口絵が入っている。携帯用の小型本。どれも装幀資料として購入。

志賀直哉豊年虫」(座右宝刊行会)昭和21年7月30日限定函帯欠

「書物往来」大正13年7月200円

「書物往来」大正14年2•3月200円

「遊女さめやま/談奇館随筆」内容見本(文芸市場社)200円

文芸市場社の内容見本?は「さめやま」と「香具師奥義書」「同性愛の種々相」のもの。談奇館随筆はそういえば「同性愛の種々相」は持ってないな。

岡倉由三郎「岡倉本・イーリア随筆」(帖面舎)昭和40年4月1日限定300部函220円

松居桃楼「アリの町のマリア北原怜子」(春秋社)昭和41年3月20日2刷函200円

生田耕作「黒い文学館」(白水社)昭和56年10月8日初版カバ帯200円

「イーリア随筆」は前にネットオークションで見たことがあって記憶に残っていた。手に取ると220円という安さ。背革天金で限定300部。ラムの「エリア随筆」の抄訳。戦前「英語青年」などに出たものを訳者没後に福原麟太郎が遺族に許可を取って出したものらしい。シンプルな装幀は瀟洒でいいものだが、いかんせん印刷が全体的にちょと掠れていたりして目障りなのが玉に瑕。

会計して外に出てみると雷鳴が低く轟いて雨が降っている。夕方からと予報で言っていたがもう降っているのかと10分くらい待機していたら止んだ。その間にと街に出たがまた降ってきて、これは止みそうもないというので傘を買って帰途。ぐったり疲れた。

こちらはネットオークションの落札品。

塚原渋柿園「葵と桐 上巻」(左久良書房)明治40年11月24日初版函

     「葵と桐 下巻」(左久良書房)明治40年11月26日初版函揃1100円

引き出すためのくり抜きがある函のために購入。正直、渋柿園は興味がない。函は元の函だと思うがタイトルなど一切文字はない印刷マーブルの函。くり抜きの半円は下なのか上なのかと思うが、跡がついているように上なのだろう。この時代、明治の末期あたりにこういう引き出し用の半円的くり抜きって見かけるような気がする。

窓展台風クラブ

8月7日木曜日、天気予報を見る限りではどうしたって翌日台風13号は東京を通過するような雲行きであった。夜中から雨、夜半から朝にかけては強めの風雨。こんなふうに台風のど真ん中で古書展に向かうのは実は初めてではないかとも思った。木曜日にうっかり寝過ぎてしまったせいか全然寝付けず、雨音がそれに拍車をかける。結局ドロドロの寝不足で起床してお風呂に入り支度して家を出る。路線バスが遅れているが、傘をさしているだけで横殴りの風雨で足元はすでにぐっしょり。そしてもちろん電車も遅れており。強い風雨の中、瞬間傘を飛ばされそうになりつつ、古書会館へ向かう道すがら「これで台風のため中止」だったらもう目も当てられないなと思っていた。

10時ジャストくらいに古書会館到着。すでに開場している。一目散にあきつ書店の棚に。やはり雨のせいか、ゆったりとみられる感じ。綺麗めな「鏡花叢書」が900円であったが、あれ鏡花は持ってるよなと手放し。しばらくしてから、会場全体を回る。いつの間にかお昼。帳場に取置きを頼んで、昼食に出る。会場を出てみると、さっきまでの暴風雨はなんだったんだという具合で雨も止み風もない。なぜだもう上陸しているのか、それとも台風の目的なものかなどと思いつつ、会場に戻る。ざっと一通り見て行ったが、結局あきつ書店の雑誌のところでいくつか、かわほり堂でいくつか抱えてしまうことになった。来るときは暴風雨の中重い本を持って帰るのは嫌だなあと思っていたのだが、まあ雨も止んだしと買ってしまう。

西条八十「詩集 砂金」(交蘭社)大正11年10月15日15版函300円

青柳瑞穂「詩集 睡眠」(第一書房昭和6年1月20日函欠印300円

佐藤春夫「新詩集 東天紅」(中央公論社昭和13年10月5日函欠500円

まずは詩集。といっても装幀目当てといったところか。「砂金」はよくみる本だが状態が良い。スウェード総革装。「睡眠」は背革装。そして「東天紅」は折本仕立ての造本。

谷崎潤一郎「卍」(新生社)昭和21年12月1日初版函美200円

谷崎潤一郎「鍵」(中央公論社)昭和47年6月5日22版函帯300円

「鍵」は重版調査をしていたので奥付をチェックするのだが22版は現在までに私が把握している最後の版。しかも帯が挟まっていた。「鍵」重版に帯があることは前から聞いており、だいぶ前だがネットオークションに出たのもみたことがある。その時はもっと薄い色の帯だったが。重版はとうにストップして文庫化もされているのに何かの話題で元版の単行本が重版されることがある。「金閣寺」も映画化された時に、「死者の奢り」は著者がノーベル賞受賞した際に元の単行本が重版されている。「鍵」も映画化だろうか。

三島由紀夫「岬にての物語」(櫻井書店)昭和22年12月20日初版表紙背表紙欠3000円

荒木精之「神風連実話」(新人物往来社)昭和46年11月15日初版カバ献呈署名200円

「岬にての物語」に出会うとは思いもよらなかった。しかも表紙欠。これに3千円は高すぎだともいえるが、未だにやけ汚れのある表紙のついた本であれば10万円前後することを考えると、悩ましい。4千円だったら買ってはいない。うまい値付けである。今日一番の高額本。

澁澤龍彦「世界悪女物語」(桃源社)昭和39年4月25日初版カバ400円

澁澤龍彦「妖人奇人館」(桃源社)昭和46年2月20日初版函900円

今更澁澤というところもあるのだが桃源社の単行本は持っていたいなと。ともに帯欠だが構わない。「世界悪女物語」はずっと桃源選書かと思っていたが上製本。「妖人奇人館」は後版を持っていたと思うがこちらは持っていなかった。ただ買ってみて、本としての魅力が薄い。

吉田健一訳「ラフォルグ抄」(小沢書店)昭和50年8月20日初版函函カバ400円

岩谷邦夫「澁澤龍彦の時空」(河出書房新社)平成10年3月25日カバ帯500円

ラフォルグのは20年くらい前に後版を買っているはずなのだけど行方不明なので。函にトンネル型に巻かれているカバーは汚れ背も焼けているが、これは外して本に挟んだ。限定1200部記番、天金。天金といっても赤っぽく変色気味、80年代以降の天金を施してある本でこういうの見かけるが、これって本金ではないからこうなるのだろうなと思う。戦前の第一書房などの天金と比べて明らかに肌理が異なるしどうしても安っぽく見えちゃう。巌谷のはちょっと引用したい箇所があり安く探していたもの。

沼正三「限定愛蔵版 家畜人ヤプー」(角川書店)函外函署名入900円

これは2000円くらいなら…と思ったら千円以下だったのでちょっと嬉しい。沼正三と挿絵を担当している村上芳正(昴名義)の署名が入って、カラー挿絵や見返しなども凝っている造本。しかし限定愛蔵版という割には、そもそも限定何部なのか記載がなく記番もない。パッと見は背革装のように見えるが、これも模造革っぽい。これだけ凝っているのに、奥付には用紙や革などの会社名はなく、素材の説明なども一切ない。編集者がわかってないのだろうな。豪華にすればいいんでしょ、じゃないんだよ。「ラフォルグ抄」と比べれば違いは瞭然。都市出版社からも豪華版が限定2000部(それは限定の部数じゃないのではというのは今は措く)出ているがそれには記番はあった。それでも村上芳正署名が作者署名と同列に並んでいるのが嬉しい本ではある。

「帝国画報」臨時増刊・東京博覧会大画報(明治40年5月)落丁500円

「帝国画報」続東京博覧会大画報(明治40年7月)落丁500円

明治40年の東京勧業博覧会の特集雑誌2冊。冨山房の「帝国画報」である。少し切り取られた箇所があるが、写真が多く見ていて面白い。この東京勧業博覧会って、漱石の「三四郎」に出てくるやつか。

新生新派筋書(南座昭和15年1月300円

新生新派筋書(明治座昭和17年6月300円

「書物往来」大正14年4月200円

「書物往来」大正14年8月200円

南座の筋書は久保田万太郎脚色「春琴抄」上演時のもの。「書物往来」はちょっと読みたい記事があったので。図書館にコピーしに行く交通費を考えれば買った方が早く安い。

いやしかし買いも買ったりだ。今回は「岬にての物語」という大物もあり、けっこう財布を叩いてしまった。鞄に詰めて会場の外に出てみると、雨が降っている。疲労と寝不足でふらふらになりながら帰途についた。これで困るのは本の置き場所だ。薄ものは別としてもどうするのか。

帰宅後、台風は上陸前に熱帯低気圧になったと知る。

*************************************

大川企画「笑う」(脚本演出:松森モヘー)@王子小劇場

9月6日夜観劇。機関銃のように会話をしているのだけど意味を取り違えたり聞きそびれたりコミュニケーションがディスコミュニケーションになってしまう皮肉とおかしみ。脚本自体、公演ごとに変わっていきそうな感じがする。

夏も後半の古書

夏は高円寺まではグングンと突き進んだけれども、やはり今夏は猛烈に暑い。かなり気をつけていたはずだのに、今年は生まれて初めて熱中症的症状に見舞われることがあった。家ではダラダラしてしまうし、冷房の効いたファミレスに本を持参してゆっくり読書と以前ならそうしていたこともあったけれども、以前は24時間営業やら深夜2時までやらやっていたファミレスもコロナ以後は22時閉店(近所は遅くても22時閉店ばかり)で以前のようには行かなくなった。

で、夏の風物詩でもあったデパート展も、今や東京では元リブロ・三省堂池袋の古書展のみだろうか。たまに黒い本もあって面白いのだが、今回は2日目の夜に向かう。会場の棚の配置が今までとは全く違っていた。目録注文品もなく、ザーッと会場を回って2冊のみ。

清水徹「書物の夢・夢の書物」(筑摩書房)カバ帯500円

澁澤龍彦「夢の宇宙誌」(河出文庫)カバ200円

澁澤はちょっとチェックする必要があって、書き込みできる文庫本を購入。置き場所もないしなあと購入したのはこれだけ。

そして8月25日土曜日、しばらくぶりの紙魚展。2日目である。夕方に来てザッと回る。

クララ・リーヴ「老英男爵」(牧神社)初版函500円

ユリイカ」臨時増刊・澁澤龍彦300円

「老英男爵」は持っていたようななかったような曖昧な記憶だったが購入。実は読んだことがない。パラ読みしてみると、正字正かな遣いの擬古典的訳文だった。ゴシック・ロマンスだからそれに合わせたということか。この「埋もれた文学の館」シリーズ、リーヴにウォルポール、ルイスにベックフォード、そしてミルボー「責苦の庭」だ。みんなゴシックだと思うけれども「責苦の庭」もゴシック系だろうか。確か大学2年の時に「オトラント城綺譚」をたまたま公民館のご自由にどうぞコーナーで見つけ(捨て猫みたいに段ボールに入った本が屋外に置いてあった)嬉々として持ち帰り読んだなあと。その後「責苦の庭」を入手して読んだくらいか。「ヴァテック」は奢灞都版で入手して読んだし、ルイスとリーヴは未読なのであった。澁澤特集ユリイカは、若桑みどり「註のない文章について」を改めて読んだ。そんなことはどうでもいいが、2日目なので17時で閉場。神保町駅から半蔵門線で表参道まで出て、今度はビリケン・ギャラリーで今日から開催の寺山修司没後40年記念「田園に死す」展に赴く。

いわゆる寺山トリビュート展である。で、これを見てからせっかくここまで来たんだし、イメージフォーラムまで歩いて、ちょっと気になっていた映画「オオカミの家」を見てこようと思っていた。18時過ぎに劇場に行ってみると、18時半の回はもちろん次回のも全部売切れだという。立ち見でもいいと思ったが、鼻から立ち見席は用意していないとの由で、諦めて帰る。この人気で少し長めに上映してくれるだろうから、まあそのうち。

************************************

扶桑書房目録で注文した本が届いた。

森鴎外「青年」(籾山書店)大正2年2月10日初版函欠4500円

長田幹彦「旅役者」(濱口書店)大正2年12月15日初版函5000円

以上2点。「青年」はなぜか今まで逃してしまい手に入らなかったもの。胡蝶本を集めるとはなしに集めているのでお安く函欠で欲しかったが今回のは状態もよく嬉しいところ。「旅役者」は代表的名作選集でも出ているけれどこちらの元版が欲しかった。函欠を買ったのは今から20年前。その前に、教育会館で古書展をやっていた時にどこかの目録に凾付7000円で出て注文したのに外れたということがあった。それから函欠を入手することができたが、その後は万越えで1度目録で見たような気がするけれど当時それでは手が出ないなあと思っていたものである。

夏目漱石吾輩は猫である 下編」(大倉書店)明治42年8月26日8版裸汚3000円

こちらはオークション落札品。上中下巻を合本したものは持っていたけれども、バラでは上中のみで下巻を持っていなかった。これでようやくバラで上中下巻が揃った。

 

 

 

 

炎天下のヴィンテージ

ヴィンテージ・ブック・ラボ展も今回で3回目であろうか。昨年の同じ頃にかなりの注文をして買ったのを覚えているが、今はもうあんな注文ができない。なので目録の方には欲しいものがなかったのは幸いだった。

9時半ごろに高円寺駅着。ポカリを流し込みながら40分過ぎに会場へ。昨夜、熱中症らしき症状に悩まされたので、万全を期したつもり。ここは毎回そうだが、入場前の列は曖昧である。なんとなく列んでそのまま入場のような感じなのでなるべく外は見ずにそのまま列に着く。ふと下を見ると、ちょっと興味のある新書があったので、それを持ったまま入場。10時開場だが数分前に開けたと思う。入り口のカゴを持って真ん中の列にある盛林堂の棚へ。先日の残り分などがあるかと思っていたがないようであった。1冊500円。突き当たりの均一棚は、各書店による200〜400円棚。色々抱えていたが、よく考えてみるとこれ持っていたなというのもあり、どしどしリバース。すると同じようにリバースされたものがちらほら。あれこれと吟味。しかし暑い。場内、空調はあんまり効いてない?のか、汗がダラダラたれてくる。また荷物持ち込みなので、リュックの人などはバシバシ当たるし、なんとも。均一棚もなかなか興味深く、何冊か抱える。

ということで、お会計。

大正九年文章日記」(新潮社)大正8年11月20日函欠500円

井伏鱒二「なつかしき現実」(改造社昭和5年7月3日初版500円

佐々木信綱「短歌入門」(改造社昭和6年10月28日初版函500円

「文章日記」は嬉しい。未使用。実は今まで未所持だったので参考用に1冊は欲しかったもの。「短歌入門」は雪岱装幀。改造社の新鋭文学叢書は5冊くらいあったように思うけれど前から欲しかった井伏のがあったので購入。

羽太鋭治「キネマ・スターの素顔と表情」(南海書院)昭和3年5月28日初版裸500円

「講談雑誌」昭和9年1月号付録500円

羽太鋭治はこんな本も書いていたのか、と。「週刊朝日」連載をまとめたものだが、日活とのタイアップもののようでもある。本文中に精力剤やら羽太の性科学関係著書やら医院やらの広告がずらずらと入っていて、表紙のアルファベット表記といい、いかにも南海書院だなあと。雑誌付録の方は口絵ばかりを集めた経本のような製本。

木々高太郎熊笹にかくれて」(桃源社昭和35年5月25日初版函500円

吉村昭「少女架刑」(南北社)昭和38年7月15日初版カバ500円

木々のは確かハンセン病に絡んだ実際の事件をモデルにしたものだと何かで読んだことがあって、これはちょっと買っておこうかと手を出したもの。この書下ろし推理小説全集というのは初めて買ったのだが、四六判よりちょっと横広い絶妙な判型。「少女架刑」は帯欠。

三浦哲郎忍ぶ川」(新潮社)昭和36年3月3日初版カバ帯500円

三島由紀夫「目」(集英社)昭和40年8月20日初版函帯500円

三浦哲郎は初版だったので思わず買ってしまったけれども。「目」も元版(元の帯)。もちろんすでに持っているが前にこの10倍以上で買ったなあと。

柴田南雄「現代音楽の歩み」(角川新書)昭和40年2月10日初版カバ200円

遠藤鎭雄「かわら版明治史」(角川新書)昭和42年8月10日初版カバ300円

寺山修司「地下想像力」(講談社)昭和46年5月30日初版カバ帯500円

柴田南雄の本が外のガレージで抱えた本。「かわら版明治史」のみ盛林堂ではない書店での購入物。この辺の新書は面白いし中身もある。寺山のは持ってなかった本で、寺山が当初担当したミュージカル「ヘアー」の日本版台本収録。

須永朝彦「滅紫篇」(コーベブックス)昭和51年5月10日限定960部記番函帯500円

ラルボー岩崎力訳)「罰せられざる悪徳・読書」(コーベブックス)昭和51年6月25日初版函帯500円

そしてコーベブックスの2冊。須永のは特装版を、ラルボーのは後版を持っているのだが参考資料として。ラルボーのは今ではみすずブックスで出ているのではなかったか。南柯書局ででた後版は、池袋のぽえむ・ぱろうるで学生時代に定価で買ったものだ。

バークヘッド「恐怖小説史」(牧神社)昭和50年8月30日初版カバ帯200円

メーテルランク(杉本秀太郎訳)「ペレアスとメリザンド」(湯川書房)昭和53年5月10日初版カバ500円

「季刊 湯川」2号500円

皆川博子講演会録」(同志社ミステリ研究会)500円

「恐怖小説史」は安く買えてよかった。「季刊湯川」は持っていないので試しに。

まあしかし、買いも買ったりだ。会場で古書仲間に会ったので一緒にぎょうざの満州へ昼食へいき、その後、4丁目カフェで一服してから帰途。寝不足、炎天下で汗だく、重い、の三重苦。ヘトヘトであった。

 

神保町に中央線

先週の金土曜日と本部古書会館で中央線はしからはしまで古本フェスタが行われた。これは…ということで朝イチで参戦。9時40分ごろに来てみると、会館前の行列はいつもの搬入口とは逆方向で明大通りの方に伸びている。前に地図屋だったところの先前伸びていて、大丈夫かねこれはと思っていた矢先に会館のドアが開いて地下の会場入り口前の溜まり場に。そして10時、開場。

まずは盛林堂の棚に。ここはやはり面白い。黒っぽいものから最近の学術書まであれこれとある。一通りチェックして本を抱えてから他の棚を回る。にわとり文庫も相変わらず黒っぽい棚で見応えがあり。意外に面白かったのは、りんてん舎、目目書店。詩歌系で、いつかはと思っていた本が相場よりも安くあって思わず抱えてしまう。これもあれも、余裕があったら欲しいという本が格安であったけれども、お金もそうだし置く場所を考えると買うわけには行かないというのがちらほらとあった。仕方がない。学生時代から欲しかった本で状態も良く買えなくはない価格のものなどもあったけれども、逡巡に逡巡を重ねて棚に戻したり。

ということでお会計。今日は夕方から用事があり、かなりの寝不足で向かうわけには行かないので、早々に切り上げて帰宅し一眠りしてから再度都内に出る予定であったのだ。で、買ったものは以下。

谷崎潤一郎痴人の愛」(改造社大正14年9月20日50版函500円

太宰治「右大臣実朝」(実業之日本社昭和18年9月25日初版カバ欠500円

泉鏡花初出個人製本2200円

明治座「各派男女優合同劇」昭和9年6月筋書300円

明治座の筋書は漱石原作「虞美人草」上演時のもの。「痴人の愛」も凾付重版は昨今見かけなくなった。

瀧口修造「地球創造説」(書肆山田)昭和48年9月10日帯2500円

橋本真理「幽明婚」(深夜叢書社)昭和49年1月16日限定500部記番帯1000円

藤原月彦「王権神授説」(深夜叢書社)昭和50年12月31日函1500円

橋本真理は何で知ったのだったか忘れてしまったが、ちょっと読んでみたいと思いつつお安くないかなと探していたもの。藤原月彦も知ったのは10年くらい前だったと思うが今回手が出せるお値段であった。黒の用紙に黒の印刷の「地球創造説」はやっぱり持っていないとと思っていた本だけれども帯背褪色でこの値段ならと。「王権神授説」は本文が全部青色印刷、函に帯かと思っていたが帯に見えるのは印刷で、函もたとうのような形式のものであった。

九十九十郎「悪魔術の塔」(あまとりあ社)昭和39年9月5日初版カバ500円

日夏耿之介「吸血妖魅考」(牧神社)昭和51年3月25日初版函帯背焼1500円

蓮實重彦フーコードゥルーズデリダ」(河出文庫)カバ帯150円

「悪魔術の塔」はようやく初版を。中川彩子挿絵のため。「吸血妖魅考」は前々からきれいなコンディションのものが欲しかった。清原悦史装幀だが、こういうデザインのものは古色は味にならずに汚らしく見えてしまうのが弱点だと思っている。牧神社についてちょっと調べているので買っておこうと。

3枚目写真の真ん中に今回の古書展のロゴが印刷されているのが写っているが、この紺地の厚い不織布のトートが5000円以上買うともらえる。これも、いい。盛林堂狙いでいったのだったが、他にもなかなか面白い棚がギュウギュウに詰め込んである感じで、いつもの古書展よりも密度がかなり濃かった。密度というのは文字通りの意味で、じっくり見ていたら、いつもの倍以上時間がかかったろうと思われる。中央線沿線古書店の色々なものがギュッと濃縮還元された感じで、見ているだけでも楽しめた。惜しむらくは、翌日の二日目にはちょっと間に合わず行けなかったことだが、まあ次回を期待したい。

*************************************

で、こちらは先日の五反田遊古会古書展での買い物。

大平三次訳「五大洲中海底旅行 上編」(四通社)明治17年10月シミ500円

「シナリオ」昭和38年2月号200円

「アートシアター」40号300円

演劇実験室天井桟敷パンフ「毛皮のマリー」5000円

まずは1階のガレージで三島由紀夫原作映画「獣の戯れ」脚本掲載の「シナリオ」と、ジュール・ベルヌの重訳本「海底旅行」を。「海底旅行」は写真のように表紙のシミが酷いがだからこそ安く買えたかと。クロス装だが明治17年じゃ輸入クロスだろうなあ。で2階に行って、もう複数持っているけれども安かったので映画「憂国」のパンフ(憂国と左上に入っている後版)、そして結構逡巡したけれども、天井桟敷の「毛皮のマリー」パンフを購入。前回たしか7000円だったかだと思うんだけど値下げしていたし、ええいと。天井桟敷のパンフは、たぶんソノシート付きの新聞形式の「花札伝奇」が難しいかなあと思う。

炎暑の趣味展

趣味展である。朝イチ、開場の15分くらい前に開場前に並ぶ。10分前くらいか、入り口のガラスドアが開いて中に。しばらくするとゆっくりと階下へ進んでいく。下の会場入り口前の帳場前の溜まりに人を詰めているのだろうなと降りていくと、すでに開場しているではないか。まだ9時55分であった。なんで一斉スタートにしないんだろう。

扶桑書房の棚へ。そんなに混んでいるというわけでもなく、量もいつもよりは少なめのような気がした。扶桑さんに聞いてみると、今回は追加はなしということであった。しばらく漁ってから、会場を一周。

お昼過ぎ、会計。

澤柳政太郎「読書法」(宝永館書店)明治35年7月28日12版1000円

吉本襄「読書と静坐」(狂簡文荘)明治35年1月5日再版300円

「読書法」は英米の読書論などを参考に「編述」したものだと序文にある。千円はちょっと高いが、明治期における読書言説として3個資料として。「読書と静坐」はそれの中国版とでも言った趣のもの。

岡鬼太郎「あつま唄」(南人社)大正7年5月15日4版毛筆献呈署名入800円

吉井勇「娑婆風流」(岡倉書房)昭和10年7月18日初版函1000円

鬼太郎のはとうに持っているけれども署名入りということもあって購入。「娑婆風流」は前からちょいと欲しかった随筆集。というのは本体の青水色白のチェック柄の布装が気に入っていたからである。同じ本が同じ値段で2冊あったんで綺麗な方を選んだ。

西川一草亭「風流生活」(第一書房昭和7年1月25日帙500円

この本、本の存在自体は前に第一書房の本をちょっと調べた時に知ってはいたのだが、実物を見るのは初めて。菊版角背上製本316ページ、背題簽はもとよりなし。限定425部。すごいのが見返し、本文と全部のページに著者による2種の絵を雲母刷してあることである。刊行者あとがきによれば、雲母に活版印刷すると活字に雲母の粉が詰まってしまい10枚くらい刷ってはいちいち洗ってを繰り返し他との由。定価は7円。かなり凝った造本で、これは製作資金を著者が出しているのかなあとも思われた。著者は生け花の家元。さすが金がある。帙の紐が片方切れてしまっているが、安いし、印刷物資料として購入。

斎藤昌三「三十六人の好色家」(有光書房)昭和48年4月ビニカバ函550円

三島由紀夫「近代能楽集」(新潮社)平成2年9月10日筒函550円

斎藤昌三のは亀山巌装幀の本でこれは普及版。確か特装は表紙が分厚い透明アクリル板が貼付してあるような本だったと思う。この本の新書版はとうに持っているけれど、まあいっておくかと。三島のは三島没後20年の1990年に「新装復刊」としてでた8冊のうちの一つ。筒函になっている装蹄は菊池信義。シリーズ全部が同じ値段で出てて、余裕があれば全部買っていたかもしれない。

そしてこちらは先日届いた扶桑書房目録で注文したもの。

仮名垣魯文「高橋阿伝夜刃譚」第8編上中下袋4500円

これは袋目当てで、何も当該作を揃えようとも思っていない。いわゆる明治草双紙の袋付きを資料用として持っていたかったのである。

まあこれがあったので、趣味展会場ではなるべく買わないようにしていたのであった。