漁書日誌 3.0

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五反田復活

五反田遊古会も久しぶりである。感染者数も連日千人越え、五輪も始まるという流れで、しかし、和洋会、五反田遊古会と開催するという。久しぶりでもあり、まずは五反田を見てから神保町に出るかということで家を出る。

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とはいえ、結局南部古書会館に到着したのは17時少し前。さて、どんなものかなとまずは1階のガレージから見て行くが、これがなかなか面白い。とりわけ雑多な新書がそこかしこにあり、これがなかなか面白そう。また出版、編集関連の棚などもあり、それぞれ安いのであれこれと抱えてしまいそうになるのだが、抑えて、これはというのだけ購入。

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谷崎潤一郎文章読本」(中央公論社)50版カバ300円

寺山修司「戦後詩」(紀伊國屋新書)昭和40年11月25日初版帯200円

戸井田道三「演技」(紀伊國屋新書)昭和38年11月30日初版帯200円

現代芸術講座2「芸術の歩み」(河出新書)昭和30年11月25日初版カバ200円

現代芸術講座3「社会と芸術」(河出新書)昭和30年12月15日初版カバ200円

現代芸術講座4「現代芸術用語事典」(河出新書)昭和31年3月20日初版カバ200円

文章読本」は50版という重版だったため。あとは新書だが、現代芸術講座はすでに1を持っているのでこれで揃いかと買ったもの。1巻は「現代芸術入門」。瀧口修造岡本太郎黛敏郎ほかいろいろな人の寄稿からなっているシリーズ。で、2階に向かう。

ザーッと見て行くが、200円均一棚が一番面白かった。ちょっといま吉田健一について調べているので、あれこれ漁る。ふと気がつくと、もう17時半を過ぎていた。ああ、本当はここを早めに切り上げて神保町に出て和洋会に行こうと思っていたが、もう無理だ、ここもうちょっとじっくり見ていくかと、閉場ギリギリまで。

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吉田健一「文学あちらこちら」(東方新書)昭和31年5月1日初版カバ200円

現代知性全集35「吉田健一集」(日本書房)昭和34年10月25日初版カバ200円

長谷川郁夫「吉田健一」(新潮社)カバ帯2500円

評伝、思い切っていってしまったが、マケプレだともっと安いのを後から知った。

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夏目漱石「こころ」(岩波書店大正7年10月15日14版凾欠300円

愛書趣味別冊「明治文芸研究資料展覧会目録」200円

新生新派筋書(御園座昭和15年1月200円

「国文学解釈と鑑賞」昭和43年8月200円

御園座の筋書は新派の「春季抄」上演時のもの。愛書趣味別冊もそうだが、これ1年前に入手していたら拙著で使えたのになあとも。

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「辻留清談」刊記無し綴穴200円

これ、12倍以上で買っているのに…ということで買ってしまう。でもやっぱりこのくらいの値段が相応しいのかもしれないなあと。

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「手紙雑誌」(明治39年10月、11月)2冊500円

手紙雑誌ハ実物を1冊も持っていなかったので参考用に。ということで、注文品もないのに五反田でこんなにお金を使うのは初くらいに買ってしまった。まあ吉田健一評伝が大きいのだが。

梅雨明けの趣味展

久々の趣味展開催である。何ヶ月ぶりか。目録注文品もあったし、なによりも場を楽しみにしていた。

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しかし、である。ここ数日は都内新規コロナ患者が連日1000人超え、ギリギリ滑り込めるかアウトかという心配もあった。また、客の半数以上を占めるであろう後期高齢者がワクチン接種を済ませ一気に混雑するかという心配もあった。混雑するか逆に少なくなるか。ということで、いつもより少し早めに会場へ向かう。9時15分くらいに会場に到着。誰も居ない。整理券制で20番台前半。近くのドトールに行き古書仲間と合流。一服してから10分前に会場へ。グループ毎に入場。まずは20番まで。第1グループでなかったのはきついな…。続いて入場。しかし、どちらかといえば昨年コロナ下の状況と同じくらい。そこまでは混んでいないというところか。

で、扶桑書房の棚へ。壁のように人だかりで見られないということはない。これはというのを見て行く。扶桑さんも空いたところへガンガンと追加補充。やたら白秋のものが出ていた印象。じっくり漁ったあとに、月の輪さんの棚へ。ここもリーフレットの類や原稿などゴチャゴチャ山盛りで漁るのが面白い棚。

ある程度目処をつけて、取り置きしてもらってから、仲間と丸香うどんへ昼食に行って、喫茶店で一服。その後、ワタクシは編集者との打ち合わせに抜けて、終わった後に神保町に。田村書店を覗いてから、会場へ。

今回は一寸何を棚に戻すのか、午前中に一度吟味を重ねて戻してはいたが、合計額がすごいことになり、それでも幾つか戻す。

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樋口二葉「終懺悔」(岡本増進堂明治44年2月25日初版綴穴2000円

幸田露伴「天うつ浪」(春陽堂明治39年1月1日〜40年1月1日全3冊初版揃2500円

二葉のはそのパロディあるところから購入。作品名ではよく便乗本があるけれど、作者名では日夏由紀夫くらいしか知らなかった。逆にいえば、当時樋口一葉がすでにカノンとなっていたということか。清方の木版口絵入り。「天うつ浪」は既に1巻は持っているが、それぞれ梶田半古、鰭先英朋、鈴木華邨の木版口絵入り。いいラインナップ。

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新声社同人「青葉蔭」(新声社)明治34年8月8日再版400円

菊池暁汀「魔風恋風の詩」(盛光堂)明治39年10月28日初版500円

真山青果「夢」(新潮社)明治42年5月28日初版300円

志賀直哉「或る朝」(春陽堂)大正10年6月20日再版裸1500円

里見トン「二人の弟子」(春陽堂大正6年5月15日初版凾欠痛200円

小型本まとめて。「二人の弟子」は見返し画を山内神斧がやっておりお安く探していたのでボロいが嬉しいところ。あた「或る朝」は再版だけれども、これ発禁本だよねえ。初版が18日発行、再版が20日発行。ほとんど同時出荷じゃないかと思うけれども、発禁になってから再版ということはないだろうし。高いけれども発禁だよなあと思い切って購入…が、しかしあれって大正一桁じゃなかったかなあと調べたら、やはり発禁は大正7年の。「剃刀」かと思っていたが「濁った頭」だ。確かに削除した後版だ。学生の頃に城市郎「発禁本」で読んだわ。これに1500円は痛い出費だった…。

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阿部次郎、小宮豊隆安倍能成森田草平「影と声」(春陽堂明治44年3月16日初版裸400円

夏目漱石虞美人草」(春陽堂)大正5年1月1日縮刷初版凾2000円

夏目漱石硝子戸の中」(岩波書店大正8年11月10日22版凾300円

夏目漱石「心」(岩波書店大正6年5月18日縮刷初版凾欠1200円

漱石関係一括。「影と声」は安倍能成の分の目次が欠でコピーで補ってあった。まあそれでも安いかなと。「硝子戸の中」は前所持していた本を売ってしまったので嬉しい。

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小川未明「底の社会へ」(岡村書店)大正3年9月5日初版凾欠1500円

伊藤白蓮「几帳のかげ」(玄文社)大正10年10月1日改訂14版凾付300円

藤井真澄「妖怪時代」(創文館)大正12年5月15日再版凾付500円

なんといっても未明は嬉しい。この本は持っていなかった。凾欠とはいえ美本。白蓮は改訂版だがピンクのバックスキン装で本体はピンピン。「妖怪時代」もボロいのを持っていた筈だが美本なので行ってしまう。大森眠歩「幻想時代」と同じ版元で装幀もほぼ一緒である。

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帰山教正「映画の性的魅惑」(文久社)昭和3年4月25日初版カバ欠400円

石川淳「普賢」(版画荘)昭和12年3月20日初版凾欠汚れ200円

尾崎士郎石田三成」(中央公論社昭和13年12月1日初版凾500円

帰山の単著は2冊でこれで全部入手かなと。カバ欠は惜しいけれども、これ後年になって発禁になったのではなかったか。尾崎士郎のは変形版で木版装幀のどっしりとした本。こういう横綴じ本については近いうちに論にまとめようと思っている。それからなんといっても「普賢」。これは凾がついていたらけっこうなお値段のもの。凾欠、それから見返しに何か剥がした痕があり扉が欠なのでこの値段なのか。しかし、である。扉の対抗ページに印が写っておりかつ本文冒頭にも隠し印があった。

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このマークどこかでみたことあるぞと検索したら、やはりそうだ。南満洲鉄道株式会社のマークだ。ということは見返しの剥がし痕は貸し出しカード入れを剥がした痕で満鉄の図書館の旧蔵ということか。これは面白い。

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長田幹彦「文豪の素顔」(要書房)昭和28年11月25日初版カバ帯300円

五味康祐八百長人生論」(角川書店昭和35年7月30日初版カバ帯400円

池田得太郎「家畜小屋」(中央公論社)昭和34年2月20日初版カバ帯2500円

五味康祐のは装幀買い。雁垂カバーに帯付きである。そしてなんといっても、武者小路書房に目録注文した「家畜小屋」。初めて買ってから20年くらい経過したがやっとのこと元版の帯付きを適価で入手。本体は貸本仕様のようだが、外装は状態もよく、これは所持本と差し替え用。

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「太陽」臨時増刊「文芸史」(明治42年2月20日)500円

「日本戯曲全集」月報不揃26部200円

「太陽」の臨時増刊は明治41年までの明治文芸の総括。当時の代表作と今との違いが面白い。そして円本の月報も安い。月報がビニル袋に入ってドサリとあったけれども、そこからこれを。改造社の最初の円本のもあったが、あれも買っておけばよかったか。

いやしかし、買いすぎ。すっからかんである。まあ前回の会場分と合わせてと思って頑張るしかないか。

 

帰って来た古書展

本部会館での古書展は、すでに先週の新興展があったわけだが、今日のぐろりや会古書展はようやく通常営業の2日間開催。特に注文品があったわけではないが、所用で都内に出たので向かう。

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目録送って来た封筒を出して検温、消毒のあと入場。ザーッと見て行く。映像関係多めに出してますという棚、よさそうなお勉強本があるもカバーが破れていたり付箋そのままだったりして安いのかなと思いきや対して安くなく。また他の棚は戦前の雑誌などかなりお安くザクザクあってなかなか面白かったり。一応買っておくかと手に取るも、いま安いからといってこれを買ってどうすると正気になり、結局は文庫本ばかり数冊。

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川本三郎「マイ・バック・ページ」(河出文庫文芸コレクション)カバ帯150円

ロートレアモン「マルドロールの歌」(集英社文庫)カバ150円

高階秀爾「20世紀美術」(ちくま学芸文庫)カバ200円

「文学部学生要覧」200円

文庫はどうでもいいが、「学生要覧」は東大文学部の。昭和23年4月〜24年3月のもの。ちょうど東京帝国大学東京大学と改称し新制大学になった頃合いのもので、本当は戦後直ぐの帝大の頃のもの、すなわち三島由紀夫山崎晃嗣在学中のものが欲しかったが、まあ参考用にと買ってみた。研究室と講師陣、講師の住所録などが掲載されている。

で、その後、久しぶりに田村書店に立ち寄ってみたら、ちょっと探していた本があったので購入。

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久保田万太郎「鵙屋春琴」(劇と評論社)昭和10年8月1日印2000円

もちろん、谷崎潤一郎春琴抄」の劇化台本。論文書いた時にコピーは揃えたが、ようやく。「歌行燈」舞台版と一緒に単行本になっているものは既に持っているのだが、こちらの1篇だけで冊子になっているのは実物を持っていなかった。

そして踵を返し国会図書館へ向かい(16時以降はフリーで入れる)、あれこれとコピーなどしたりして帰途。

1日のみの古書展

6月18日金曜日、1日のみ本部古書会館で新興展古書展が開催されるとのことで、夕方行ってみた。緊急事態宣言以降、もう数ヶ月本部古書会館では古書展をやっておらず、ほんとうに久しぶりである。

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もちろん新興展であるので6割方は和本なのだが、それでもこういう感じでドサッとある本を見ていってあれこれ弄りながら古本を買うってのはやはり楽しい。40分ほど見て回って、お会計。

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「東京書籍商組合五十年史」(東京書籍商組合)昭和12年5月18日裸500円

ブラインズ「マックアーサーズ・ジャパン」(中央公論社)昭和24年6月15日500円

「日本の美学」13号、400円

それから古書会館を出て澤口書店をチラと見たら、外に「アート・シアター」がズラリと500円均一で出ていたので、「憂国小間使の日記」を購入。表紙に「憂国」と入っている方が後版。上映してみて人気だったので後刷分にタイトルを入れたと葛井欣士郎氏に確認したことがある。「東京書籍商組合五十年史」はちょっと面白そうでいろいろと資料になりそうだ。

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そういえば、先週の金曜日はシネマヴェーラ渋谷勅使河原宏の特集をやっていたのでこちらも久々に行ってきた。というのも、大阪万博で上映された安部公房原案脚本、勅使河原宏監督の映画「1日240時間」を上映するというからだ。確かこの映画、ある研究者が草月から掘り出して科研費なんか使って見られるようにしたのではなかったか。その人の研究発表で一部見て以来、これは見たいと思っていたのであった。パビリオン内で上映された3面マルチのちょいとブラックな舞台のような作品であった。

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で、どうも今回のフィルムを借りる時にデッドストックが発見されたのか、受付で公開当時の映画「砂の女」チラシとリーフレット、「他人の顔」シナリオ小冊子3点で1000円というのがあったので購入。

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これは先週買った新刊書だが、このほかにもお勉強用やら資料用やらの古本をあれこれ買ったりしていた。しかし定期的にこのブログをつけないといろいろ忘れてしまう。

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プラーツ「官能の庭」(ありな書房)カバ帯3000円

これなんかは昨日うっかり地元古書店を覗いたらこういう悩ましい価格であったので、買ってしまったもの。今更という気もするがプラーツの凾入りの美術関連書は高いからってので後回しにしてそのままになっていた。段ボールの凾が欠だけれども、カバーもあるしいらないよと。買ってきて帰宅後調べると、いまはありな書房から2冊組み?で出ているようだ。改訳とかしてあるのであろうか。

5月の雪

学校も新学期が始まったが、コロナを巡る状況は相も変わらずどころかまた緊急事態宣言という状況となり、古書展へ足を運ぶ機会も少なくなってきたように思う。宣言以後、あれこれも趣味展まで会場中止。しかしまあ、考えようによっては、それで少し助かったのかもしれない。

というのは、結局会場販売がなくなった愛書会古書展の目録で注文していた高額な本が当たったからである。どのくらい注文がきたのだろうか。10年前ならせどり含めてすごいごとになっていそうでもある。

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三島由紀夫「橋づくし(雪の巻)」(牧羊社)昭和46年1月7日、35000円

いやあ高いものをいってしまった。とはいえ、これ今までの相場感覚からすれば半額以下ではないかとも思う。この本、雪月花と色などが異なるバージョンがそれぞれ120部ずつ合計360部限定版、毛筆署名入りで、生前署名の入った最後の限定本である。外箱に夫婦凾、そのなかに平岡家の家紋である抱き茗荷が入った袱紗にたとうに挟まれた縮緬表紙の和本が入っているという仕様。3冊セットで30前後とかしていたし、バラで1冊でも10万はしていた。この値段は最安値だろう。むろん、本冊見返しにはわずかにポツポツカビが出ており、貼り奥付の箇所が、糊の水分でのびた和紙が乾いて縮まりシワになってしまっているという難点もある。が、こんな値段でなければ貧乏書生には全く手の届かないものだし思い切って注文したものである。

 

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本文。和綴じの芯に橋と月が印刷された紫の紙が用いられており、それが透けてこのような感じに見える。とにかく凝った造本。三島の死んだ直後で版元もこれはすぐに売り切れただろうなあ。誰だったか古書店主のエッセイで、「岬にての物語」限定本が売れず在庫の山を見た云々という記述を見た覚えがある。三島の本なら何でもとなったのは、やはり三島の死によるブームと、折からの戦後初版本、限定本ブームによってであろう。牧羊社のものでは、はるか後年になってから、直筆原稿復刻版をこの限定版「橋づくし」のような体裁で(残存していた三島毛筆署名を綴じ込み)少部数限定刊行した「女方」があるのはあまり知られていない。店を閉じてしまった龍生書林のラストの方の目録に写真入りで掲載されていた。

さて、それはそうと、このブログ1ヶ月あまり更新していなかったが、なにかこれという古書の買物があったかといえば、扶桑書房の目録速報で注文して買ったこれを記しておかなければならない。

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広津柳浪「いとし児」(春陽堂明治27年6月9日5000円

文学世界の第12編である。本文用紙は袋綴じで原稿用紙のように罫線がある。そこに製版印刷された本文。江戸からの流れを汲んだ、まさに製本の近代化の端境期の本といっていい。既に洋紙に活版印刷の小説本はあったのに敢えての造本か。奥付や裏表紙のシリーズラインナップ広告は活字組。ノドの2箇所が朱色の糸で綴じてある。小説百家選とかもそうだが、このへんの装幀造本は本当に興味深い。
 

窓から散歩

仕事が始まってバタバタとしているうちにあっと言う間に1週間経過してしまい、ここ2週間のものを記します。

先週の木曜深夜、アレ明日は窓展じゃないのと気がつき、ドロドロの寝不足で向かったのだが、あきつ書店とかみはる書房とかは出ていないということをすっかり忘れていたのである。まあそれでも折角早く来たのだしとあれこれと見て、結局はお安いところを幾つか。

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熊野純彦他『西洋哲学史Ⅰ』(講談社選書メチエ)カバ帯500円

「書物春秋」(昭和8年1月)200円

「文芸」(昭和23年3月)200円

「新思潮」(昭和23年9月)200円

パンフ「モルガンお雪」昭和26年2月6日300円

ドリルの棚があれこれと安くてちょっと面白かった。それからまた「モルガンお雪」パンフは前々から安く欲しかったものでこれは嬉しい。「書物春秋」は、矢野目源一「書物を偏愛する人」というエッセイが掲載されており、そのために購入。他雑誌は三島由紀夫関連。

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そして今日。注文品が当たり、時間ギリギリだったが出発。なんと閉場3分前に到着して、すでにいま会計してる人が終わったら終わりというところに滑り込み、注文品を受け取ってきた。これがまた嬉しい買物。

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「櫂詩劇作品集」(的場書房)昭和32年9月1日カバ3900円

これは嬉しい。前々から欲しかったけれどもなかなかの相場で手が出なかった本。同人誌「櫂」同人の詩劇を収録したものだが、同人外の寺山修司「忘れた領分」も収録。谷川俊太郎茨木のり子岸田衿子らの作品を収録。昭和30年代初頭の詩劇については前々から研究的な興味があったので、この本は欲しかったのである。的場書房は寺山の「はだしの恋歌」の版元。「忘れた領分」自体は近年の単行本で読めるのだが、そのほかの作品がこれでないと読めないので貴重。

古書ほがい

コロナ第4波来るのかというところで、またぞろ緊急事態宣言が出てしまうとへたをしたら見られなくなってしまうかもと、今週は文学展ふたつに赴いた。

ひとつが、さいたま文学館で開催中の「江戸川乱歩と猟奇耽異」展である。本来は1月16日からであったのが2ヶ月もおしてしまったのである。実は、ワタクシはこの展覧会に資料を貸し出しており元より見に行く予定であった。

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桶川も下車したのは初めてで、文学館は駅からも近く新しめの複合的施設のようであった。乱歩ばかりでなく、涙香の「無惨」以後の探偵小説(的)作品も紹介され、全体的には、近代文学における乱歩的なものがどういう流れで拡がりをもっていたかがはあくできるような展示であった。ワタクシの行った翌日から入場は予約制になった由。

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こちらが限定700部の図録と会場で買うともらえる特製乱歩栞。

そしてもうひとつが神奈川県近代文学館で開催中の「永遠に「新青年」なるもの」展。こちらは20日から開幕。

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こちらにもまた涙香「無惨」の横溝正史旧蔵本が展示。乱歩もそうだが、「新青年」周辺の作家の肉筆ものなどズラリと展示してあり、幅広く「新青年」なるものとはというものを追いかけている。探偵小説ばかりでなくファッション記事などにもフォーカスをあてていたのが面白かった。

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こちらが図録。バッヂは学芸員さんにいただいたもの。さいたま文学館の図録もそうだが、こちらもマストバイだろうなあ。奇しくも乱歩二連続のような感じになったが、やはりガラス越しにでも実物を見るという体験はやはり違うなあと。

で、ちょうど横浜に行った日に扶桑目録が到着。あるコレクターの蔵書処分特集ということらしい。乱歩の欲しいところがお安めに出ていたので注文してみたがすべて売り切れ。結局、1点のみ欲しいのが残っていてそれが土曜日午前中に届く。

土曜日、扶桑書房事務所をひさびさに開けるというので赴き、少々古書を買ったので以下にまとめて記す。

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吉井勇「酒ほがひ」(昴発行所)明治43年9月7日初版裸4000円

夏目漱石吾輩は猫である」(春陽堂)縮刷大正6年10月10日35版凾欠800円

「酒ほがひ」が目録注文したもの。正誤表もついている。状態もよくこの価格というのは嬉しい。装幀は高村光太郎。縮刷の猫は耳が完全な状態。こちらは事務所で購入したもの。

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久米正雄「蛍草」(春陽堂大正8年1月25日4版凾欠

島田孤村「妖婦短冊お留」(春江堂書店)大正2年9月1日初版印裸

夏目漱石「こころ」(岩波書店大正11年9月15日43版凾欠

黒川嘉雄「愛は輝く」(蛍文閣)大正15年3月1日初版

長田幹彦「鶯姫」(春陽堂大正8年6月25日3版凾欠

小杉天外「縮刷魔風恋風」(春陽堂大正11年3月15日11版凾欠

以上、3冊100円で合計200円

怒濤の100円コーナーで面白いものをお安く入手できた。とりわけ「蛍草」は嬉しいところ。

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アバンギャルドシアターEX『MISHIMA祭り』@池袋GEKIBAでの「あやめ」(寺原航平演出)、「班女」(八木タケル演出)を観劇。年明け最初の芝居である。「あやめ」は上演自体珍しいところ。2名が複数を演じ分けながらやるという構成。「班女」もそうだが、両方とも俳優は台本を手にしていながらほとんどそれを読まない。わざとああいうスタイルにしているのか。4月2日。