漁書日誌 3.0

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和洋会

和洋会古書展。入口にいまだとユニクロとかスーパーとかに設置してある顔をカメラに向けると体温を測定するアレが設置してある。古書展によって有人で手に当てて体温測定する場合もあるが、これは古書会館の備品ではなくそれぞれの会のものなのだろう。

で、ザーッと会場を回って購入したのは以下。

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大泉黒石「読心術」(万里閣書房)昭和5年2月5日再版カバ欠300円

荒井士郎他「或る特異犯罪」(一粒社)昭和31年7月30日初版カバ帯400円

「輔仁会雑誌」174号(昭和28年12月)300円

マッド・アマノ他「パロディ角戦争」(新潮文庫)カバ100円

「読心術」は表紙と同じデザインのカバーが本来は付いている。観想学なんかにもリンクするかと。「輔仁会雑誌」は三島参加座談会掲載のため。「或る特異犯罪」は「二重無期被告荒井士郎の手記」という副題。婦女暴行殺人放火で6人以上殺している殺人者の手記と弁護人、精神医学者らの論文などを収めた本。吹上佐太郎、小平義雄に並ぶ犯罪者と帯にはあるが、今まで知らなかった。

花粉舞う趣味展

趣味展の初日である。ようよう暖かくなってきたが、薬で抑えているものの花粉の飛翔もすごい。

開場15分前くらいに到着してみると、整理券番号47番であった。開場時間前に入口が開き、一人ずつ体温測定、手消毒、封筒ない人は住所氏名電話記入という流れ作業で入場。うしろのほうであったワタクシが入場する頃には開場10分くらいは経過していた。

目当ての扶桑書房の棚へ。開場10分も経過するとすでに扶桑棚だけ押し合いへし合いということもなく、いいところはもう抜かれてしまったような気もする。しかしまあここに張り付いてじっくりと見たあとに会場全体をまわる。

途中昼食に抜けたが、その後もじっくり見て吟味しての買物となった。というのは目録注文品が当たっていたというのもあって節約しないとならないが、またこういうときに限ってこれはというのも出てくる。最終的に購入したのは以下。

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谷崎潤一郎麒麟」(植竹書院)大正3年12月7日再版凾7500円

ゾラ(飯田旗軒訳)「金」(博文館)大正4年12月31日初凾欠1500円

溝口白羊「不如帰の歌」(岡村書店)明治40年10月28日30版カバ欠300円

「創作戯曲選集」(プラトン社)大正14年5月15日製本300円

麒麟」はようやく植竹書院版を入手。これは嬉しい。本体背に切れ目があるもののワタクシにとっては全く問題ない。このへんは拙著でも書いたが、植竹書院版は5版まで刊行を確認しているが、後版である三星社版はおそらく3版しか存在しない。後者はたまに見かけるが、植竹書院版は出てくることも稀で、重版でもこの3倍以上するのではあるまいか。武者小路書房の出品本である。また、ゾラ「金」は、名越国三郎が口絵、挿絵を担当しているもの。ただし装幀は名家小説文庫そっくりそのまま。これも適価で探していたものである。またちょっと面白いのは、「戯曲選集」で、これはプラトン社の「苦楽」付録の冊子を版元合本したもの。初めて見た。おそらくは余った在庫を無理矢理な表紙を付けて売ったのであろう。奥付には製本年月日しか記載されていない。赤本的に夜店なんかにながしたのであろうか。

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島村抱月脚色「復活」(新潮社)大正3318日初版カバ1500

柳原白蓮「幻の華」(新潮社)大正8年3月25日初版凾1000円

「復活」はカバー付。これは珍しい。珍しいが1500円であったのでケチケチとかなり逡巡。須磨子の有名どころでもあるしと買ってしまう。

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長田幹彦「続金色夜叉」(春陽堂大正9年4月17日改訂17版凾1500円

芥川龍之介邪宗門」(春陽堂)大正111163版凾欠1000

佐藤春夫「詩集 魔女」(以士帖印社)昭和6年10月5日読書家版凾欠宝石欠1200円

クローデル「三つの声」(立命館出版部)昭和10年1月10日初凾400円

「魔女」は宝石欠。代わりにビーズでも入れておくか。クローデルのは少し前にこの本のことを知ったのだが、すぐに出てくるとは思わなかった。限定350部記番、藤田嗣治装幀で、丸背横綴じの本。三方金である。

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宮澤賢治風の又三郎」(羽田書店)昭和14年12月20日背欠カバ欠800円

三島由紀夫「創作ノオト」(ひまわり社)昭和30年7月25日帙欠200円

風の又三郎」は背欠。三島のはもちろん所持しているがあまりに安いので。三島の文章と生写真が添付してあるリーフレットは挟まれていたが、奥付が印刷してある凾がない。

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高橋啓介「江川・山本・野田の限定本追録」(湯川書房)昭和53年12月20日署名入300円

近藤恒次「小栗風葉書誌」(豊橋文化協会)昭和50年12月10日凾400円

「輔仁会雑誌」(194号)500円

小林利明「父と子の思想」(ちくま新書)200円

芥川龍之介「上海游記・江南游記」(ちくま学芸文庫)300円

高橋啓介のは限定350部、毛筆署名落款入りだが抜き刷りみたいなぺらぺらの冊子。風葉書誌も限定350部。輔仁会雑誌は三島の旧作再録号である。

久々の趣味展で面白かったことは面白かったが、かなりの出費をしてしまった。

我楽他宗+池袋三省堂古本まつり

3月5日、多摩美まで赴いた。武蔵美はかつて学生の頃に図書館でやっていた展覧会を観に行ったことがあるが、多摩美は初めてである。それというのも「我楽他宗——民芸とモダンデザイナーの集まり」展を見るためにである。翌日が最終日だというし、来場者のみにパンフを配布するという。小田急橋本駅からバス。17時までだが、16時半過ぎのバスで向かう。山の斜面に拡がっているコンクリ打ちっ放しのモダンなキャンパス。小雨が降ってきたなか駆け足で向かう。入場無料。カラーで71頁ある立派な図録だが、おそらく販売しないということでお金が出ているのだろうし少部数なので1人1部までとなっているのであろう。我楽他宗、つまり三田平凡寺(三田林蔵)である。変人・平凡寺の集めた文字通りガラクタ、発行物等々の展示で、大正から昭和にかけての趣味人のネットワークなどもよくわかる展示。とくに黄金仏陀と称して、糞便を型に取り金を塗布したものの実物が展示されていた。1尺4寸。

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で、17時閉館。即、踵を返して今度は池袋へ向かう。

三星堂書店池袋本店古本まつりに向かうのである。緊急事態宣言中だが、普通に開催。ただしいつもは21時までやっているのが19時半閉店。ここは、なかなか面白い棚があるので人気で、いつも朝イチで行列が出来る。18時過ぎに到着してザッと見ていく。幾つか抱えてお会計。

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橋本忍私は貝になりたい」(現代社)昭和34年3月25日初版500円

早船ちよ「定稿版 キューポラのある街」(理論社)昭和38年3月初版凾500円

上坂冬子「楽しいBG講座」(集英社)昭和41年7月10日初版カバ500円

図録「小出楢重の粗描/小出楢重谷崎潤一郎」凾1000円

昭和30年代資料としてけっこう買ってしまった。「キューポラ」はなかなか面白くて、原作本ではなく映画がヒットしてからの改訂版。本文中に映画スチールなどが入っている。まさにメディアミクス本。それから小出楢重の図録は角背上製で段ボール凾が突いている。小出へ宛てた谷崎書簡などがカラーで入っていて面白い。

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そのままジュンク堂へ向かって、「みすず」(1+2月合併号)とロザリンド・クラウスアヴァンギャルドのオリジナリティ」(月曜社)を購入。

「みすず」は読書アンケート特集で、拙著「谷崎潤一郎と書物」を挙げて下さっている人がいるというので購入。鈴木一誌氏と武藤康史氏のお二人である。学会誌は別として、一般紙誌の書評では全く取り上げられなかったので、たいへん嬉しい。感謝です。

それとロザリンド・クラウスのは、「オリジナリティと反復」の新訳版。むかし日本の古本屋を毎日検索して、半年くらいかかってようやく古書で購入したことがある。これは買っておかないとということで新品購入。

 

みすず 2005年1・2月合併号

みすず 2005年1・2月合併号

  • メディア: 雑誌
 

 

 

 

対談【小村雪岱の装幀本を探して】

3月11日木曜日、今日は日比谷図書文化館で開催中の「複製芸術家小村雪岱」の関連イベント対談「小村雪岱の装丁本を探して」に出演するためにお昼過ぎに日比谷に。ゲストとしてわたしを招いてくれたのは本展の監修者である真田幸治君。拙著を装幀してくれた装幀家であり古書仲間でもある。

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打ち合わせをした後、14時開場、14時半開始。真田君の要してくれたスライドを見ながら、古書をどうやって買うのかから、初版重版の話、出版社やら内容見本やらとあれこれの話をしていたら90分はあっと言う間であった。コロナ対策で限定60名でしたが、お運びいただいた皆様に感謝申し上げます。

その後、すでに古書価がついている東京ステーションギャラリーでの「夢二繚乱」展の図録がここ日比谷図書文化館の売店で売っているというので定価購入。ついでに600円だった「江戸の人びと本をたしなむ」展図録も購入。

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その後は、徒歩で銀座のgggギャラリーまで行き、石岡瑛子展を見る。ごく一部を除き、写真撮影自由であった。

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【告知】「小村雪岱の装幀本を探して」出演します

現在、日比谷図書文化館で開催中の「複製芸術家 小村雪岱 装幀と挿絵に見る二つの精華」の関連講座として開催されるトーク小村雪岱の装幀本を探して」に出ます。

お相手は、この展覧会の監修者(出品物は全て本人のコレクション)であり、拙著『谷崎潤一郎と書物』の装幀をしてくれた真田幸治君です。20年来の古書仲間です。あまり肩肘張らずに文学と装幀、古書と装幀、古書の思い出などフランクに語ろうと思っています。

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3月11日14時半〜16時@日比谷図書文化館

要申込(先着60名)広い会場ですがソーシャルディスタンスでゆったり目です。

詳細・申込はこのリンクを

*2月21日現在、定員に達し申込締め切ったようです。ありがとうございました。

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忙殺2月

相変わらず緊急事態宣下中であり、古書展はなかなか開催されない。無駄にお金を使わないことはよいことではある。が、そもそも2月頭は採点で猛烈に忙しく、締切に遅れている原稿などもあり気の休まる暇も無い。

というところに来たのが扶桑書房目録。

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泉鏡花「白鷺」(春陽堂明治43年2月15日初版裸7500円

三島由紀夫仮面の告白」(河出書房)昭和25年3月20日4版カバ2000円

欲しいところ残っていた。「白鷺」は金子薫園木版口絵付。嬉しい。そして「仮面の告白」は最後の重版である4版。背焼けはしているがまずまずの状態のカバー。

そして、ついついストレスゆえか、ネットオークションやら日本の古本屋でも買い物してしまう。

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「校訂 一葉全集」(博文館)明治39年10月5日19版カバ1530円

重版は既に所持(表紙が木版のものと印刷のものと)しているのだが、カバー狙いで。一葉全集はどの版から表紙が木版ではなく印刷になったのか。こういうのは重版をひとつひとつ確認しないとわからないだろうなあ。

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吉田健一「交遊録」(新潮社)昭和49年5月30日限定500部凾1650円

サインが入っているわけでもないのでもともと高い本ではないけれども、前から欲しかった本。凾の差し入れ口の革がボロボロなので格安であった。これは流布本よりも判型が大きく、本文は罫線で囲まれ、用紙は真珠アルトン。見返しは手染めマーブルか。無染革で流布本とは用紙と判型を変え、ただ革で包んだだけでも版画を入れただけでもない、これだけのためというエディションで、シンプルな造本はストイックな限定版という感じがする。用紙などは同時期新潮社発行の「三島由紀夫全集」特装版やら吉行淳之介「湿った空乾いた空」特装と同じ。吉田健一はよい読者ではないけれども、これは愛蔵に耐える。

それからこれは先月買った本だが、春陽堂より復刻された「人魚の嘆き・魔術師」をようやく購入。

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出版は昨年末だけれどもそのうちと思っているといつの間にか絶版になっていたりするので。左は架蔵の初版本。院生時代にバイトでお金貯めて買った記憶が蘇りました。巻末解説には拙著も言及されています。やっぱり水島爾保布のあの挿絵は文庫本だと細い線が潰れてしまうのでこのくらいの判型で見たいものです。

 

人魚の嘆き・魔術師

人魚の嘆き・魔術師

 


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昨年は三島由紀夫没後50周年ということで種々のイベントがありましたが、イタリア・トリノで開催されるはずがコロナで中止になった三島由紀夫展に合わせた三島由紀夫論集が刊行されました。

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Teresa Ciapparoni La Rocca編『MISHIMA MONOGATARI UN SAMURAI DELLE ARTI』(Lindau, 2020)

こちらに拙稿伊訳「Mishima Yukio : scrittore, attore, performer」を寄稿しております。

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ガラクタからスパン

ここのところ古書展が立て続けに中止されているなかで、昨日今日の我楽多市展は開催。久しぶりということで、行ってきた。

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塚本邦雄寺山修司「火と水の対話」(新書館)初版凾300円

平野啓一郎「ある男」(文芸春秋)初版カバ帯署名500円

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フロベール庄司浅水訳「愛書狂の話」(ブックドム社)昭和7年9月15日限定凾月報800円

横光利一「上海」(講談社文芸文庫)カバ200円

三島由紀夫「頭文字」(新潮文庫)重帯100円

三島由紀夫「盗賊」(新潮文庫)初帯100円

三島由紀夫「沈める瀧」(新潮文庫)初帯100円

塚本と寺山のやつは前から読みたかったものだが、下手したら既に所持しているかもしれない。「ある男」はちょっと読んでおきたかった。そして「愛書狂の話」は限定千部でそのうち30部が総革装特製、残りが木炭紙装、全部記番してある。これが凾付で800円は安いがちょっと迷ってやはりしかし買ってしまった。

しかしやはり古書展会場を漁るのは楽しい。

その後、田村の外ワゴンなどを見てから、一路京橋へ。

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伊豫田晃一個展Loop@スパンアートギャラリーへ赴く。会期は明日まで。前はしょっちゅう行っていたスパンだが、移転後は今回が初めて。署名入り画集も売っていたが、今回は見逃してポストカードセットのみ購入。ついでに丸尾末広「天国」(エンターブレイン)署名入を購入。

次は最近買った新刊書。

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日比野啓「三島の子どもたち」(白水社

川崎弘二他編「日本のライブ・エレクトロニクス音楽」(エンジンブックス)