趣味展の初日である。ようよう暖かくなってきたが、薬で抑えているものの花粉の飛翔もすごい。
開場15分前くらいに到着してみると、整理券番号47番であった。開場時間前に入口が開き、一人ずつ体温測定、手消毒、封筒ない人は住所氏名電話記入という流れ作業で入場。うしろのほうであったワタクシが入場する頃には開場10分くらいは経過していた。
目当ての扶桑書房の棚へ。開場10分も経過するとすでに扶桑棚だけ押し合いへし合いということもなく、いいところはもう抜かれてしまったような気もする。しかしまあここに張り付いてじっくりと見たあとに会場全体をまわる。
途中昼食に抜けたが、その後もじっくり見て吟味しての買物となった。というのは目録注文品が当たっていたというのもあって節約しないとならないが、またこういうときに限ってこれはというのも出てくる。最終的に購入したのは以下。
谷崎潤一郎「麒麟」(植竹書院)大正3年12月7日再版凾7500円
ゾラ(飯田旗軒訳)「金」(博文館)大正4年12月31日初凾欠1500円
溝口白羊「不如帰の歌」(岡村書店)明治40年10月28日30版カバ欠300円
「創作戯曲選集」(プラトン社)大正14年5月15日製本300円
「麒麟」はようやく植竹書院版を入手。これは嬉しい。本体背に切れ目があるもののワタクシにとっては全く問題ない。このへんは拙著でも書いたが、植竹書院版は5版まで刊行を確認しているが、後版である三星社版はおそらく3版しか存在しない。後者はたまに見かけるが、植竹書院版は出てくることも稀で、重版でもこの3倍以上するのではあるまいか。武者小路書房の出品本である。また、ゾラ「金」は、名越国三郎が口絵、挿絵を担当しているもの。ただし装幀は名家小説文庫そっくりそのまま。これも適価で探していたものである。またちょっと面白いのは、「戯曲選集」で、これはプラトン社の「苦楽」付録の冊子を版元合本したもの。初めて見た。おそらくは余った在庫を無理矢理な表紙を付けて売ったのであろう。奥付には製本年月日しか記載されていない。赤本的に夜店なんかにながしたのであろうか。
島村抱月脚色「復活」(新潮社)大正3年3月18日初版カバ1500円
柳原白蓮「幻の華」(新潮社)大正8年3月25日初版凾1000円
「復活」はカバー付。これは珍しい。珍しいが1500円であったのでケチケチとかなり逡巡。須磨子の有名どころでもあるしと買ってしまう。
長田幹彦「続金色夜叉」(春陽堂)大正9年4月17日改訂17版凾1500円
芥川龍之介「邪宗門」(春陽堂)大正11年1月16日3版凾欠1000円
佐藤春夫「詩集 魔女」(以士帖印社)昭和6年10月5日読書家版凾欠宝石欠1200円
クローデル「三つの声」(立命館出版部)昭和10年1月10日初凾400円
「魔女」は宝石欠。代わりにビーズでも入れておくか。クローデルのは少し前にこの本のことを知ったのだが、すぐに出てくるとは思わなかった。限定350部記番、藤田嗣治装幀で、丸背横綴じの本。三方金である。
宮澤賢治「風の又三郎」(羽田書店)昭和14年12月20日背欠カバ欠800円
三島由紀夫「創作ノオト」(ひまわり社)昭和30年7月25日帙欠200円
「風の又三郎」は背欠。三島のはもちろん所持しているがあまりに安いので。三島の文章と生写真が添付してあるリーフレットは挟まれていたが、奥付が印刷してある凾がない。
高橋啓介「江川・山本・野田の限定本追録」(湯川書房)昭和53年12月20日署名入300円
近藤恒次「小栗風葉書誌」(豊橋文化協会)昭和50年12月10日凾400円
「輔仁会雑誌」(194号)500円
小林利明「父と子の思想」(ちくま新書)200円
高橋啓介のは限定350部、毛筆署名落款入りだが抜き刷りみたいなぺらぺらの冊子。風葉書誌も限定350部。輔仁会雑誌は三島の旧作再録号である。
久々の趣味展で面白かったことは面白かったが、かなりの出費をしてしまった。