漁書日誌 3.0

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梅雨明けの趣味展

久々の趣味展開催である。何ヶ月ぶりか。目録注文品もあったし、なによりも場を楽しみにしていた。

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しかし、である。ここ数日は都内新規コロナ患者が連日1000人超え、ギリギリ滑り込めるかアウトかという心配もあった。また、客の半数以上を占めるであろう後期高齢者がワクチン接種を済ませ一気に混雑するかという心配もあった。混雑するか逆に少なくなるか。ということで、いつもより少し早めに会場へ向かう。9時15分くらいに会場に到着。誰も居ない。整理券制で20番台前半。近くのドトールに行き古書仲間と合流。一服してから10分前に会場へ。グループ毎に入場。まずは20番まで。第1グループでなかったのはきついな…。続いて入場。しかし、どちらかといえば昨年コロナ下の状況と同じくらい。そこまでは混んでいないというところか。

で、扶桑書房の棚へ。壁のように人だかりで見られないということはない。これはというのを見て行く。扶桑さんも空いたところへガンガンと追加補充。やたら白秋のものが出ていた印象。じっくり漁ったあとに、月の輪さんの棚へ。ここもリーフレットの類や原稿などゴチャゴチャ山盛りで漁るのが面白い棚。

ある程度目処をつけて、取り置きしてもらってから、仲間と丸香うどんへ昼食に行って、喫茶店で一服。その後、ワタクシは編集者との打ち合わせに抜けて、終わった後に神保町に。田村書店を覗いてから、会場へ。

今回は一寸何を棚に戻すのか、午前中に一度吟味を重ねて戻してはいたが、合計額がすごいことになり、それでも幾つか戻す。

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樋口二葉「終懺悔」(岡本増進堂明治44年2月25日初版綴穴2000円

幸田露伴「天うつ浪」(春陽堂明治39年1月1日〜40年1月1日全3冊初版揃2500円

二葉のはそのパロディあるところから購入。作品名ではよく便乗本があるけれど、作者名では日夏由紀夫くらいしか知らなかった。逆にいえば、当時樋口一葉がすでにカノンとなっていたということか。清方の木版口絵入り。「天うつ浪」は既に1巻は持っているが、それぞれ梶田半古、鰭先英朋、鈴木華邨の木版口絵入り。いいラインナップ。

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新声社同人「青葉蔭」(新声社)明治34年8月8日再版400円

菊池暁汀「魔風恋風の詩」(盛光堂)明治39年10月28日初版500円

真山青果「夢」(新潮社)明治42年5月28日初版300円

志賀直哉「或る朝」(春陽堂)大正10年6月20日再版裸1500円

里見トン「二人の弟子」(春陽堂大正6年5月15日初版凾欠痛200円

小型本まとめて。「二人の弟子」は見返し画を山内神斧がやっておりお安く探していたのでボロいが嬉しいところ。あた「或る朝」は再版だけれども、これ発禁本だよねえ。初版が18日発行、再版が20日発行。ほとんど同時出荷じゃないかと思うけれども、発禁になってから再版ということはないだろうし。高いけれども発禁だよなあと思い切って購入…が、しかしあれって大正一桁じゃなかったかなあと調べたら、やはり発禁は大正7年の。「剃刀」かと思っていたが「濁った頭」だ。確かに削除した後版だ。学生の頃に城市郎「発禁本」で読んだわ。これに1500円は痛い出費だった…。

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阿部次郎、小宮豊隆安倍能成森田草平「影と声」(春陽堂明治44年3月16日初版裸400円

夏目漱石虞美人草」(春陽堂)大正5年1月1日縮刷初版凾2000円

夏目漱石硝子戸の中」(岩波書店大正8年11月10日22版凾300円

夏目漱石「心」(岩波書店大正6年5月18日縮刷初版凾欠1200円

漱石関係一括。「影と声」は安倍能成の分の目次が欠でコピーで補ってあった。まあそれでも安いかなと。「硝子戸の中」は前所持していた本を売ってしまったので嬉しい。

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小川未明「底の社会へ」(岡村書店)大正3年9月5日初版凾欠1500円

伊藤白蓮「几帳のかげ」(玄文社)大正10年10月1日改訂14版凾付300円

藤井真澄「妖怪時代」(創文館)大正12年5月15日再版凾付500円

なんといっても未明は嬉しい。この本は持っていなかった。凾欠とはいえ美本。白蓮は改訂版だがピンクのバックスキン装で本体はピンピン。「妖怪時代」もボロいのを持っていた筈だが美本なので行ってしまう。大森眠歩「幻想時代」と同じ版元で装幀もほぼ一緒である。

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帰山教正「映画の性的魅惑」(文久社)昭和3年4月25日初版カバ欠400円

石川淳「普賢」(版画荘)昭和12年3月20日初版凾欠汚れ200円

尾崎士郎石田三成」(中央公論社昭和13年12月1日初版凾500円

帰山の単著は2冊でこれで全部入手かなと。カバ欠は惜しいけれども、これ後年になって発禁になったのではなかったか。尾崎士郎のは変形版で木版装幀のどっしりとした本。こういう横綴じ本については近いうちに論にまとめようと思っている。それからなんといっても「普賢」。これは凾がついていたらけっこうなお値段のもの。凾欠、それから見返しに何か剥がした痕があり扉が欠なのでこの値段なのか。しかし、である。扉の対抗ページに印が写っておりかつ本文冒頭にも隠し印があった。

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このマークどこかでみたことあるぞと検索したら、やはりそうだ。南満洲鉄道株式会社のマークだ。ということは見返しの剥がし痕は貸し出しカード入れを剥がした痕で満鉄の図書館の旧蔵ということか。これは面白い。

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長田幹彦「文豪の素顔」(要書房)昭和28年11月25日初版カバ帯300円

五味康祐八百長人生論」(角川書店昭和35年7月30日初版カバ帯400円

池田得太郎「家畜小屋」(中央公論社)昭和34年2月20日初版カバ帯2500円

五味康祐のは装幀買い。雁垂カバーに帯付きである。そしてなんといっても、武者小路書房に目録注文した「家畜小屋」。初めて買ってから20年くらい経過したがやっとのこと元版の帯付きを適価で入手。本体は貸本仕様のようだが、外装は状態もよく、これは所持本と差し替え用。

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「太陽」臨時増刊「文芸史」(明治42年2月20日)500円

「日本戯曲全集」月報不揃26部200円

「太陽」の臨時増刊は明治41年までの明治文芸の総括。当時の代表作と今との違いが面白い。そして円本の月報も安い。月報がビニル袋に入ってドサリとあったけれども、そこからこれを。改造社の最初の円本のもあったが、あれも買っておけばよかったか。

いやしかし、買いすぎ。すっからかんである。まあ前回の会場分と合わせてと思って頑張るしかないか。