漁書日誌 3.0

はてなダイアリー廃止(201901)を受けてはてなブログに移設しました。

渋谷東急東横の最後

谷東急東横大古本市って、いつくらいから行くようになったのかあまり覚えていない。覚えてはいないのだが、自分のホームページの記述を検索してみると、2004年8月28日がいちばん最初の記述のようだ。してみると16年にもなるのか。その間、だいたい毎回通っていると思う。渋谷東急は会場が他に比べて広い印象で、21時までやっているものだからじっくり見れてしまう。だからなのか、いつもここにくるとぐったり疲れるような記憶。新宿伊勢丹も、小田急新宿もというふうにお馴染みのデパート展がどんどんと消えていく。通い始めたのはついこの間という気もするのだが、16年というのはけっこうしんどい年月だ。

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で。さすがに朝イチの気力はない。いつも夕方である。初日である2月20日の18時過ぎに到着。しかも次に予定があり40分くらいザッとみて終了。それでも2冊を購入。

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澁澤龍彦「高丘親王航海記」(平凡社)昭和62年10月25日初版凾帯300円

ジョン・パリス「空間と視線」(美術公論社)初凾1000円

実は澁澤晩年の本って持っておらず。こないだ「龍彦親王航海記」も出たことだしと、初版だったので買ってみた。帯の背の部分にブックオフの105円のレッテルが貼付されたままだったが、これは古書店がわざと残して出してるのかなどと思ったことであった。「空間と視線」はちょっと読んでおきたく前から見つけたらと思っていたもの。ちょっとしか見られなかったが、この時にチラとみた本が気になってしまい、結局翌日の夜また会場に行ってしまった。

翌日というのは金曜日。ぐろりや会の初日である。

30分くらいザッとまわり、結局買ったのは以下。

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デザインの現場編集部編「本づくり大全」(美術出版社)重カバ300円

復刻版「夏目漱石山鳥」原稿」(ほるぷ)500円

「本づくり大全」はいろいろと勉強になった。なかに須川バインダリーがドドンと取り上げられていて、こんな記事知らなかったと今更ながらに購入。

それから渋谷へ向かう。渋谷東急である。半蔵門線神保町駅から行こうと古書会館から歩いていく。田村書店の外ワゴンをフト見る。そこにちょっとボロい重版の「夏くさ」を発見。迷ったが買ってしまった。

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島崎藤村「夏くさ」(春陽堂明治36年3月16日4版少痛汚2000円

決して安くはないが、この「夏くさ」は6名の画家が挿絵を描いている。明治から大正頭くらいまでの美術と文学関連でこれはちょっと持っていたいなと無理矢理理由を付けて納得。というのは、渋谷で買おうと思っている本が少々値が張るのである。渋谷、会場に着いて一目散に昨夜見たところの棚に向かう。あった。

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佐々木健一「フランスを中心とする18世紀美学史の研究」(岩波書店)初カバ6000円

昨日この値段で出ているのを見かけてしまってから気になって逡巡していたものである。定価の半額、しかもあんまり古書で出ないし安くもならない印象で、悩んだがいってしまう。まあお勉強用の本。もう金もないけれども、一応と会場をじっくり見ていく。

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金子国義「メトミニー」(アスタルテ書房)内容見本200円

「アートシアター」500円

「メトミニー」の内容見本は大判のもので、これだけでもなかなかのもの。「アートシアター」は、写真のように「ポリー・マグーお前は誰だ」のパンフ。なかにチラシやアートシアター友の会入会申込書などが挟まっていたので購入。

そして帰宅してみると、先日の扶桑書房目録速報で注文した本が届いていた。

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永井龍男「絵本」(四季社)昭和9年6月5日限定350部記番帙欠3200円

なんで急に永井龍男をというふうに不審に思われる読者もいるかもしれないが、この四季社の限定本、実は学生時代の三島由紀夫が持っていて、こういう限定本を将来作りたい云々と書簡で語っていたような、曖昧な記憶があって注文したものであった。350部のうち50部が著者自家用で署名入り。これは署名無し。

結局は、金曜日1日でかなりの散財。そんな余裕はないのに…。

池袋から窓へ

 水曜日、池袋リブロならぬ三省堂池袋店古本まつりの初日であった。夕方、向かう。注文品、珍しく4点くらい注文していたが、なんとか1点のみ確保。細かく見て行くと、あっと言う間に3時間とか経過してしまう。

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泉鏡花「りんだうとなでしこ」(プラトン社)大正13年7月5日初版凾4000円

川端康成「僕の標本室」(新潮社:新興芸術派叢書)昭和5年4月20日12版1000円

注文品は鏡花。凾のこの緑の題箋が擦れやすく背も焼けているのが多い(この凾は谷崎潤一郎の「無明と愛染」と同じ意匠で、あちらもこのアート紙のような題箋が擦れまくる)。前に五反田だったかで裸ならば500円で買ったことがあるし本自体はそこまで魅力がないが、状態がよければというところか。川端の方は重版だし背も少し痛んでいるが、これでも十年くらい前は6千円くらいしたなあとか。モダニズムはもう食傷気味なのだが、まあ千円ならと買ってしまう。

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瀬沼壽雄編「水守亀之助書誌と作品」(京王書房)カバ700円

蒲原有明「夢は呼び交わす」(岩波文庫)カバ200円

雑誌「えこた」2号(1971.3)300円

瀬沼壽雄氏という人は、古書会館にベンツで乗り付け、お伴の女性秘書と一緒に古書展会場を歩いているという伝説のイメージが強い。伝説というか何度も趣味展などの朝イチの行列に並んでいるのを見ているが、ぶいぶい言わせていた頃の伝説は幾つか聞いたことがある。この他に、十一谷義三郎、片岡鉄兵の書誌も出ているけれども、いままで十一谷しか持っていなかった。十一谷のは限定300部、片岡鉄兵は限定350部、では水守はというと限定部数記載無し。といって300部くらいと思うが。しかし今はもう千円以下か。「えこた」は昭和48年の日本大学芸術学部の雑誌研究というゼミの雑誌。三島由紀夫文献として買ったのだが、巻頭にはヌードグラビアとか掲載されていて、大学のゼミの雑誌でヌードとはと時代性を感じる。

そして、今日金曜は、窓展初日。

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土井晩翠「暁鐘」(有千閣)明治35年7月5日3版カバ500円

中村利器太郎「私より見たる三越回顧録」(日本百貨店通信社)1500円

「書物展望」(1935.5)200円

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小山内薫「霧積」(春陽堂:現代文芸叢書)大正1年9月13日3版背痛200円

 斎藤茂「喜劇 新聞記者」(アカギ叢書)大正3年6月20日3版200円

徳永直「光をかかげる人々」(河出書房)昭和18年11月20日初版カバ400円

野坂昭如編「弱者の悪知恵」(青春出版社)昭和40年12月15日初版カバ300円

「光をかかげる人々」は本木昌造関係作品というか、近代活字史への興味から前々より適価で探していたもの。「暁鐘」は重版だがカバーが嬉しい。

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ルイス・キャロル(矢川澄子訳)「鏡の国のアリス」(新潮社)カバ400円

ハンス・ベルティング「美術史の終焉?」(勁草書房)カバ帯200円

アリスは、文庫でも出ているけれどもこれは大判の画集というか絵本のような体裁。ドゥシャン・カーライ挿絵。1991年の初版で定価5500円だからなかなかのものである。勁草書房の本は中に鉛筆でライン引きがあるためにこの値段。

もう2月

1月の末から2月初頭にかけてはいろいろと仕事が立て込んでいる。気がつくとあっと言う間に1週間が経過している。すべてにぐったりしている。それでも古書展には赴く。なにしろ気分転換になる。

ということで、先週は和洋会古書展には行けなかったが五反田遊古会には行った。そのことから。というよりは家を出る時間が遅くどちらかの会場ひとつしか回れないとなって五反田を選んだのである。

で、まずは1階のガレージを。雑誌「玻璃」が2冊あった。安い。あれ、これ、前回手に取ってみたがその時は諦めて棚に戻したな、というのを思い出した。たしかあの時は千円。それが200円になっている。すごい値下げ率。しかし探してみたが創刊号はない。取り敢えず購入して、入口入ったところで荷物をあずける。ふと振り向くと。公衆電話のしたあたりに見覚えのある冊子が。手に取って見ると200円、よし購入と抱えて、そのまま2階へ。残り15分。ザーッと回って1冊のみ。そして時間切れ。

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「玻璃」2号、3号、各200円

関川左木夫が発行人の雑誌で、限定300部、すべて和紙(本文は耳付き和紙アンカット)を使用、表紙には銅版画貼付、巻頭口絵も木版画が貼付してあるという凝った造本。3号には本来アンカットの頁を切らなくても読めるように別に洋紙刷り本が付属していたというが今回の本は欠。矢野峰人南條竹則ら寄稿。創刊号、日本の古本屋で検索して別途注文してしまった。

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佐々木桔梗「五行山荘限定版書目細見」(プレス・ビブリオマーヌ)昭和54年6月帯200円

室生犀星「印刷庭苑」(竹村書房)昭和11年6月15日初版凾欠500円

佐々木桔梗のこれ、前々から安ければとケチケチ買わなかったが、とうとう200円まで下がるとは。正に隔世の感。それから犀星のこれも前から欲しかった本。凾は表紙とほぼ同意匠。中身は近作エッセイ集だが、この明治期の実用書のような表紙が前々から気になっていた。

で、今週。

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小栗風葉「心中くらべ」(春陽堂明治35年7月11日初版口絵欠3000円

ワイリー・サイファー「ルネサンス様式の四段階」(河出書房新社)昭和51年7月30日初凾1000円

週明けとつぜん舞い込んできた扶桑書房目録速報から注文したのが、風葉。今回は風葉の「美丈夫」とか、けっこう珍しいところがズラッと出ていた。欲しい本はあるけれども、金もないし、これだけ。それからサイファーは非常勤先のある商店街の古本屋にて。

そして金曜。

我楽多展である。非常勤先で卒制面接をやり。その帰りギリギリ滑り込めるかと神保町に向かったらラスト8分くらい見ることが出来た。

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室生犀星「蒼白き巣窟」(冬樹社)昭和52年5月15日凾帯200円

小池清治「現代日本語文法入門」(ちくま学芸文庫)カバ帯200円

加賀野井秀一「メルロ・ポンティ挑発する思想」(白水社)カバ500円

佐々木敦「「批評」とは何か?」(メディア総合研究所)カバ300円

犀星のは、御存知生原稿から伏字復元した復刻版のような本。とうに所持していたのだが、最近なぜかこの本にネコがゲロしたので買い換え。そして古書展のあと、18時過ぎにまだ開いている店はと澤口書店を覗いたら、探求書がドンピシャにあって思わず購入。それから東京堂へ行き今月号の「ユリイカ」購入。なかなかの出費になってしまった。

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ルノート・ベーメ「雰囲気の美学」(晃洋書房)カバ帯2500円

ユリイカ」(2020.3)特集・書体の世界、定価購入

翌日も凝りもせずに我楽多展を5分ほど覗き、寿岳文章の本を1冊。それから今度は田村書店の外ワゴンを見て、そこから2冊。

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寿岳文章「書物の世界」(出版ニュース社)カバ300円

秋田雨雀「幻影と夜曲」(新陽堂)大正3年9月1日3版裸700円

坪内逍遙「役の行者」(玄文社)大正6年5月5日初版凾欠300円

このなかでは実は「幻影と夜曲」が前々からの探求書であった。おそらくもともとはカバー装だと思うのだが、どんなデザインだったのか。というのも、この本は本間国雄が章題扉など描いていて、カバーも本間によるものだろうと思っているからだ(未見)。

というか、かなり散財しているな。ストレスのあらわれか。

年明けて

なんだかあれこれと立て込んでいるうえに、くたびれてしまってここのブログもしばらく放置してしまっていた。年末感も新年感もなくただ連続で冬であるというばかりで、切れ目とも節目とも感ぜられない。ただまあ、古本だけはお金もないのにちょびちょびと買っていたので記録としても書いておきたい。

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広津柳浪「自暴自棄」前編(春陽堂明治39年8月28日初版口絵カバ欠

広津柳浪「自暴自棄」後編(春陽堂明治39年10月18日初版カバ欠揃7000円

柳浪の「自暴自棄」。川村清雄装幀。ツートンカラーが映える。口絵欠でこの値段はちょっとというのもあるが、柳浪の現代もので長篇は当時の単行本でないと読めないからなあと。まずはこれ、年末に来た扶桑書房目録速報からの注文品。そして年明けて。

1月4日、下町書友会。ちゃっと覗いて、3冊ほど購入。

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羽田鋭治他「最近犯罪の研究」(天弦堂書房)大正5年5月25日凾欠800円

ドンデ「人魚伝説」(創元社)カバ200円

George Bataille L'Erotisme, Editions de Minuit, Paris, 1979 500円

仏語など読めないけれど、バタイユのこれは一応。「最近犯罪の研究」がちょっと面白い。むろんロンブローゾの影響を受けている。

その翌週の愛書会古書展は行けず。そして今週の趣味展である。趣味展も、前回逃したので久々というところ。といっても、会場到着はオープン5分前で、これというほどの買い物があったわけではない。

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佐々木茂索「困つた人達」(白水社昭和6年12月25日初版凾1800円

武者小路実篤金色夜叉」(坂上書院)昭和17年1月15日初版凾限定1500円

まずはこれら2冊。佐々木茂索は、この本は前から欲しかった。小穴隆一装幀。この時期の白水社の風格のある造本。それから「金色夜叉」はむろん紅葉原作のものを武者が戯曲にしているもの。こちらもアダプテーション作品として前から欲しかった。こちらは河野通勢装幀、挿絵。本文2色刷、1頁大挿絵多数、折込口絵ありと、こんな時代にしてはかなり凝った豪華本。奥付には限定一千部とあるが、これとは別に特製がある。

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泉俊秀「オルレアン戦」(岡本偉業館)大正3年11月10日初版300円

「藤村文集」(新潮社)大正9年10月18日13版凾300円

辻潤ですぺら」(新作社)大正13年7月10日初版カバ欠印1000円

岡本偉業館のはイクサ叢書というまあアカギ叢書モドキ。岡本偉業館からもこんなのが出ていたのかと。それから面白いのは「ですぺら」。これと同じ外装欠をずいぶんまえにこれの8倍くらいの価格で買ったことがあるが(しかもこれより汚れている)、今回のこの本は前見返し欠、扉に書き込み、中扉に印がある。

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が、印がされこうべ型で面白いと思っていたら、ツイッターでそれは気仙沼図書館の館長で辻潤マニアの菅野青顔の蔵書印だと教えて貰った。それはちょっと面白いと思っていたが、扉の書き込みは全然異なる人だしなと思うのもつかの間、別の人にその青沼白心という人は富ノ澤麟太郎「あめんちあ」に出てくる人だと教えられた。いやはや、どういう履歴を経た本なのだろうか。何か御存知の方、お教え下さい。

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「文芸文化」昭和18年3月1日300円

モリス「理想の書物」(細川書店)昭和26年4月15日限定500部記番1200円

日夏耿之介編「近代日本詩集」(アテネ文庫)昭和26年6月30日初版200円

曽根博義「岡本芳雄」(エディトリアルデザイン研究所)500円

名著復刊全集近代文学館刊行記念「漱石名作漫画」凾300円

モリスのは庄司浅水訳編。エッチング入り背革90部の特製がほかにあり、残り410部がこの背布装。薄目の冊子だが品がある装幀、造本。EDIアルシーフは、正にその細川書店の創業者の伝記本。ほるぷの復刻版にこんな漱石漫画がおまけでついていたというのは知らなかった。岡本一平の「現代漫画大観」から本文復刻した豆本である。ただ、奥付はあるものの刊記がない。作っている人間が古書マニアではないからなんだろなあ。

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上の写真は、今月の歌舞伎座公演。三島由紀夫作「鰯売恋曳網」を夜の部で上演中。久しぶりの歌舞伎座、幕見で見て来た。勘三郎七之助七之助の存在感ったらなかった。下の写真は、町田市民文学館で始まった三島由紀夫展・肉体というsecond laguageの内覧会に行った時のもの。遠藤周作宛署名本や小島智雄(日大ボクシング部コーチ)宛署名本が展示されていた。

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 荷風研究の新世代の第一人者、多田蔵人さん編集の荷風追想文アンソロジー。お送り頂きました、感謝。註が古書マニア的で実に実に面白い。

荷風追想 (岩波文庫)

荷風追想 (岩波文庫)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/01/18
  • メディア: 文庫
 

 

師走の窓展

パリに行っていたので趣味展には行けなかったが、窓展はということで、いつものように会場15分前くらいに古書会館に到着。いつもに比べると、多少人が少ない感じ。10時開場。

で、ザーッと見て行くが、今回は抱え込む本はあまり多くなかった。その代わりといってはなんだが、雑誌があれこれと。「書痴往来」や「愛書家クラブ」など1冊200円だったので、ポツポツ棚から引き抜いていたら、けっこうあるではないか。1号から12号まであったが、どうしても9号がない。先に買われたか、それとも棚にまだ埋もれているのかと徹底的に探したが、ない。あとで喫茶店で一服しながらパラパラ見ていたら、中にむかしのタスキが挟まっていて、9号欠11冊揃15000円とあった。そんなにするものか。以下、今回買ったもの。

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北原白秋「白秋小唄集」(アルス)大正12年12月15日32版凾200円

柴田芳水「紅葉の著書から」(大盛堂書店)大正11年6月15日初凾欠300円

白秋の方は恩地孝四郞装幀か。これが凾付で200円は嬉しい。小さい判型だが、表紙は5ミリくらいの厚さがあり、赤の絹張りに箔押。「小唄」といった時のイメージをモダナイズしている装幀。そして今回一番嬉しかった収穫は実はこれ「紅葉の著書から」。「紫」「隣の女」あたりから「金色夜叉」「多情多恨」までの紅葉作品梗概本。これ1冊で読んだ気になれる本。

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山崎一芳編著「マッカーサー元帥」(丹頂書房)昭和20年12月1日初200円

村上信彦「出版屋庄平の悲劇 上巻」(西荻書店)昭和25年7月8日初版300円
 室生犀星「蜜のあはれ」(新潮社)昭和34年12月5日初版凾200円

マッカーサー」のは日本側が企画執筆したという体裁になっているが、占領政策に一環かしら。ともかく戦後資料。村上信彦のは出版史資料として読むつもり。ただ下巻がない。探すか。ちなみに村上信彦は村上浪六の子息。

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中央公論」明治45年2月400円

「本の虫」創刊号300円

中央公論」は谷崎潤一郎「悪魔」初出。初出は現行テキストとラストが違うのです。「本の虫」は「愛書家くらぶ」を改題してのリニューアル創刊号。発禁本「ふらんす物語」の種々の伝説について検証している面白いエッセイあり。この元になっている「愛書家くらぶ」は場にほかにあったが買わず。

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「書痴往来」1〜12、9号欠の11冊、各200円

齋藤昌三主宰の雑誌。この他に13号、14〜16を1冊にまとめた号があるという(13号には特装50部本あり)。これは復刻もないが、小冊子とバカに出来ず、中身にはなかなか興味深いエッセイが収録されていたりする。雑誌といえば、お次もそう。

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「寿多袋」第6号、24号、26号、各300円

趣味雑誌。古書目録などでその名前を見聞いてはいたが、実物を購入するのは初めて。まあ参考にとたまたま棚にあったものを購入。なかは謄写版刷りで、写真、宝くじ、舟券、展覧会の半券等々が実際に貼付され、雑多な趣味的なものとなっているが、田中冬二の原稿などもあり、興味深い。

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竹中郁「動物磁気」(尾崎書房)昭和23年7月1日カバ欠1000円

これはネットオークションで落札。紙質はあまりよくないが、造本、装幀にスタイリッシュな魅力がある。カバーは表紙と同柄なのでなくてもかまわない。

パリでの三島シンポジウム

11月20日、昼過ぎ。羽田よりエールフランスでパリへ向かう。現地時間20日18時半頃にシャルルドゴール空港着。タクシーでホテルへ向かう。ホテルにて、トマ・ガルサン、竹本俊雄、ジェラール・シアリの主宰各先生とご挨拶。そこにジョン・ネイスン先生が奥様と一緒にいらっしゃる。そのまま近所のカフェに飲みに行く。

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翌21日。ホテル近くの会場であるパリ大学(=パリ・ディドロ大学=パリ第7大学)へ移動。国際シンポジウム「50Years Later, Another MISHIMA?」初日。まずはジョン・ネイスン先生の基調講演。続いて、井上隆史先生の発表、そして3番目がワタクシの発表Mishima Yukio’s "self-image" – Who controls it?。その後コーヒー・ブレイクを挟んで、お昼過ぎまで発表が続き、お昼は関係者一同で大学関係のレストランでランチ。当然のようにワイン、みな飲んでいる。そして14時からまた発表が続き、コーヒー・ブレイクを挟んで17時まで。その後、一旦ホテルに戻り休んでから、18時半よりレセプション。立食パーティー。フランス、ドイツ、イタリア、アメリカ等々よりの三島研究者が集まっているが、日本語が出来る人が多く助かる。しかしビックリしたのは、大学のトイレは男女兼用だったことなど(完全密閉の個室でそれぞれ個室に電気スイッチがある)。

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22日も9時半より発表、コーヒー・ブレイク、発表、レストランでランチ、発表、コーヒー・ブレイク……17時くらいまで。今日は個人発表ばかりでなく、最近『仮面の告白』の新訳を出されたドミニク・パルメ先生の講演、イルメラ・日地谷=キルシュネライト先生の基調講演、英語、仏語、イタリア語訳の訳者3名によるパネルなどぶっ通しで続く。あいまに、ネイスン先生にMISHIMA, A Biographyハードカバー版初版にサインを入れて貰う。本来なら米国初版に入れて貰いたかったが、ワタクシが所持しているのはUK版初版。

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その後、ホテルに戻り一休み。さすがにくたびれる。夕食の時間まで、近所の売店で買い物をしてみたり、本屋を覗いたりうろうろと徘徊した。最近プレイヤッドの1冊として出たロマン・ガリのポスターの横に今回のシンポジウムのポスターが出ていた。漫画のコーナーは日本のものばかり。

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19時に集合して、今度は少し歩いたところにあるレストランへ皆でいく。そこで食べ飲み、歓談。ちょうど席が隣り合うソルボンヌに留学している中国人の学生さん(「憂国」中国語訳の訳文について研究発表)とパルメ先生とあれこれと話す。プレイヤッドで三島が出る計画もあったらしいが頓挫した話とか、三島を離れて、ガリマールの話からロマン・ガリの愛人の話、マンディアルグやマルセル・シュオッブの話なども振ってみた。

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23日、シンポジウム最終日。9時半より平野啓一郎氏の基調講演(ビデオ上映)。コーヒー・ブレイクを挟んで4本の個人発表のあと、総括的討論。最後の討論では、三島における暴力性やテロリズム天皇論などの話題も出て盛り上がりを見せた。使用言語は主に英語だったが、個人発表ではフランス語使用の人も数名。12時半過ぎ、終了。基調講演3、個人発表16、パネル1、という塩梅。「文化防衛論」や、「愛の処刑」にからめた発表もあった。

 

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レジュメ冊子とプログラムのリーフレット

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プログラム

その後、近くのカフェでランチ。帰りの便は夜半近くのもので、その間の数時間、あれこれと聞いて一人でパリの中心部へ出てみることにした。もとより観光するつもりはなかったが、せっかくだしと地下鉄でルーヴル、オペラ座のあたりをブラブラとフラヌール。スマホはあれどワイファイがなければネットは使えないし、そうなるとスマホはただのカメラでしかない。観光客で混雑している中に紛れたり、適当にブラブラしながら、裏通りの地元民が行くようなスーパーなど見て歩いたり。古本屋の情報も調べてくればよかったのだが失敗した。

その後ホテルに戻ってからシャルルドゴールへ、そして夜半近くのエールフランスで帰途に就く。日曜の夜中に出て、日曜の夕方に羽田着。

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大学近く、文学者の名前がついた通りの看板。この辺は新しく開発された地域らしく、元々は広い停車場の一部だったらしい(ゾラの「獣人」なんか思い出した)。会場からはセーヌ川も見えるが、近くにはマンションだか建築現場があちこちに目についた。

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そして今度は三島由紀夫文学館である。三島由紀夫文学館創立20周年記念フォーラムが11月30日に開催。高橋睦郎さんの特別講演「『詩人』三島由紀夫」と、続けて田村一行さんら大駱駝艦の面々による舞踏パフォーマンス「ハグクミ申ス者〜三島由紀夫に捧ぐ」の上演(田村さんは宮本亜門演出「金閣寺」に出演された方で、実はワタクシの大学時代のクラブの後輩)。こちらも素晴らしかった。本来は10月に開催予定が台風で延期になったものだが、それでも50名近くの参加者が集まった。スタッフとして参加したが、文学館のフォーラムでこうしたパフォーマンスは初である。

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巴里前

さて、青展が済み、金欠状態ではあるのだが、それでもネットやら古本屋へ立ち寄ったりなど、結局はポツポツと古書を購入してしまう。ちょっと面白いものも入手できたし、ここのところの収穫を記していこうと思う。まずはネットオークションで落札したこれ。

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扇屋亜夫「白い血の猟人」(妙義出版)昭和32年2月25日初版1000円

岡落葉「明治大正の文士」(古通豆本)平成2年12月25日416円

「白い血の猟人」はずっと探求書だったもの。帯が欠だが仕方ない。昭和30年前後のホモセクシュアル文学関連で、そのうち三島由紀夫からめて書こうと思っている。それから岡落葉は前に「独歩の周辺」を読んで面白かったので、古通豆本で出ているもう1冊をと。独歩の「武蔵野」の装幀をした人で大学館にいた人である。

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三島由紀夫金閣寺」(新潮社)重版カバ帯ビニカバ500円

photographer's gallery press(10号)1200円

これは下北沢の古書店で。仕事帰りに立ち寄ってたまたま入ったら目についたもの。雑誌の方はジョルジュ・:ディディ=ユベルマン特集のため。また「金閣寺」は、ATGで映画化した時の重版。三島没後もとうに文庫になっていたにもかかわらず初刊そのままの重版で出ていたのである。これが興味深い。単行本では何版までいったのか。そういえば大江健三郎ノーベル賞とった時、書店にズラリと大江の著作が並んだが、そのなかに「死者の奢り」元版単行本があって、おおわざわざ単行本重版するのかと思ったものである。しかしもう今ではないだろうなあ。

それからお次は通販で買った展覧会図録。

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図録「帝国美術学校の誕生」(武蔵野美術大学美術館・図書館)2019年10月18日1800円

600ページを超える厚冊。分厚いがやわらかな造本で軽い。これは買っておくべきだろうと買ってみたが、送料と振込手数料で結局3000円弱になってしまった。

そして、これは今日行って来た五反田遊古会にて購入したもの。

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志賀直哉「蝕まれた友情」(全国書房)昭和22年7月20日初版カバ800円

堀太一「新聞の秘密」(光文社カッパブックス)昭和34年9月30日初カバ200円

福島鋳郎編「戦後雑誌発掘」(日本エディタースクール出版部)凾欠200円

目録注文品は無し。しかし黒っぽい棚もありじっくり見ればいろいろとあったかもしれない。「蝕まれた友情」はお馴染み全国書房のものだが、これが本文は耳付き和紙、カバーは草木染を渋刷毛で染めてある。資材のない時代にいちいち凝っている。

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■告知■

国際三島由紀夫シンポジウム50 ans après, un autre Mishima ? 

というのに登壇します。来週の21〜23日です。会場はパリ第7大学(ディドロ大学)。もしちょうどその頃パリにいるという方がいましたらお運び下さい。

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