なんだかあれこれと立て込んでいるうえに、くたびれてしまってここのブログもしばらく放置してしまっていた。年末感も新年感もなくただ連続で冬であるというばかりで、切れ目とも節目とも感ぜられない。ただまあ、古本だけはお金もないのにちょびちょびと買っていたので記録としても書いておきたい。
広津柳浪「自暴自棄」前編(春陽堂)明治39年8月28日初版口絵カバ欠
広津柳浪「自暴自棄」後編(春陽堂)明治39年10月18日初版カバ欠揃7000円
柳浪の「自暴自棄」。川村清雄装幀。ツートンカラーが映える。口絵欠でこの値段はちょっとというのもあるが、柳浪の現代もので長篇は当時の単行本でないと読めないからなあと。まずはこれ、年末に来た扶桑書房目録速報からの注文品。そして年明けて。
1月4日、下町書友会。ちゃっと覗いて、3冊ほど購入。
羽田鋭治他「最近犯罪の研究」(天弦堂書房)大正5年5月25日凾欠800円
ドンデ「人魚伝説」(創元社)カバ200円
George Bataille L'Erotisme, Editions de Minuit, Paris, 1979 500円
仏語など読めないけれど、バタイユのこれは一応。「最近犯罪の研究」がちょっと面白い。むろんロンブローゾの影響を受けている。
その翌週の愛書会古書展は行けず。そして今週の趣味展である。趣味展も、前回逃したので久々というところ。といっても、会場到着はオープン5分前で、これというほどの買い物があったわけではない。
佐々木茂索「困つた人達」(白水社)昭和6年12月25日初版凾1800円
武者小路実篤「金色夜叉」(坂上書院)昭和17年1月15日初版凾限定1500円
まずはこれら2冊。佐々木茂索は、この本は前から欲しかった。小穴隆一装幀。この時期の白水社の風格のある造本。それから「金色夜叉」はむろん紅葉原作のものを武者が戯曲にしているもの。こちらもアダプテーション作品として前から欲しかった。こちらは河野通勢装幀、挿絵。本文2色刷、1頁大挿絵多数、折込口絵ありと、こんな時代にしてはかなり凝った豪華本。奥付には限定一千部とあるが、これとは別に特製がある。
泉俊秀「オルレアン戦」(岡本偉業館)大正3年11月10日初版300円
「藤村文集」(新潮社)大正9年10月18日13版凾300円
辻潤「ですぺら」(新作社)大正13年7月10日初版カバ欠印1000円
岡本偉業館のはイクサ叢書というまあアカギ叢書モドキ。岡本偉業館からもこんなのが出ていたのかと。それから面白いのは「ですぺら」。これと同じ外装欠をずいぶんまえにこれの8倍くらいの価格で買ったことがあるが(しかもこれより汚れている)、今回のこの本は前見返し欠、扉に書き込み、中扉に印がある。
が、印がされこうべ型で面白いと思っていたら、ツイッターでそれは気仙沼図書館の館長で辻潤マニアの菅野青顔の蔵書印だと教えて貰った。それはちょっと面白いと思っていたが、扉の書き込みは全然異なる人だしなと思うのもつかの間、別の人にその青沼白心という人は富ノ澤麟太郎「あめんちあ」に出てくる人だと教えられた。いやはや、どういう履歴を経た本なのだろうか。何か御存知の方、お教え下さい。
「文芸文化」昭和18年3月1日300円
モリス「理想の書物」(細川書店)昭和26年4月15日限定500部記番1200円
日夏耿之介編「近代日本詩集」(アテネ文庫)昭和26年6月30日初版200円
曽根博義「岡本芳雄」(エディトリアルデザイン研究所)500円
モリスのは庄司浅水訳編。エッチング入り背革90部の特製がほかにあり、残り410部がこの背布装。薄目の冊子だが品がある装幀、造本。EDIアルシーフは、正にその細川書店の創業者の伝記本。ほるぷの復刻版にこんな漱石漫画がおまけでついていたというのは知らなかった。岡本一平の「現代漫画大観」から本文復刻した豆本である。ただ、奥付はあるものの刊記がない。作っている人間が古書マニアではないからなんだろなあ。
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上の写真は、今月の歌舞伎座公演。三島由紀夫作「鰯売恋曳網」を夜の部で上演中。久しぶりの歌舞伎座、幕見で見て来た。勘三郎、七之助。七之助の存在感ったらなかった。下の写真は、町田市民文学館で始まった三島由紀夫展・肉体というsecond laguageの内覧会に行った時のもの。遠藤周作宛署名本や小島智雄(日大ボクシング部コーチ)宛署名本が展示されていた。
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荷風研究の新世代の第一人者、多田蔵人さん編集の荷風追想文アンソロジー。お送り頂きました、感謝。註が古書マニア的で実に実に面白い。