漁書日誌 3.0

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秋空の趣味展

趣味展初日。
今日はちょっと早めに出てきたのだけれども、電車が時間調整とかいうことで遅れ、合計10分くらい到着が遅くなり、結局はいつもと同じく9時40分頃に古書会館到着。列ぶ。そして開場。
今日はかなりの収穫があった反面、久々に1万円以上買ってしまう。節約の秋だというのに、である。しかし会場の中でも扶桑書房の棚はスゴイ。10時半頃には、既に歯抜けのようにスカスカになってる段もあり、その後続々と追加されたが、夕方再度見に来て、ぺんぺん草も生えないというよりは、お金があったらあれも欲しいという具合に本が残っているのである。二日目は追加分とかってあったのかしらん。今日は何故か森銑三中野重治久保田万太郎、古書関連・編集者回想書が目立ってあれこれと出ていたような気がする。中村真一郎矢内原伊作宛献呈署名本も数冊棚に混じっていた。

芥川龍之介「春服」(春陽堂大正12年5月25日5版凾補修1500円
宇野浩二「蔵の中」(聚英閣)大正9年3月15日3版凾底欠800円
「春服」は重版ですらなかなか出ないし、お手頃な価格であっても凾欠で痛みが酷かったりして重版凾付をずっと入手出来ずにいたのだが、これでようやくである。初版美本などは望んでいないが、これくらいは欲しかったところ。本体は凾のおかげか背にスレある以外は良好な状態。そして「蔵の中」は、凾の底が欠だけれども、凾付でこの価格なら御の字というべきだろう。勿論、元版である。

岩野泡鳴「ぼんち」(三星社)大正10年6月25日10版凾欠背少痛500円
正宗白鳥「心中未遂」(三星社)大正10年6月30日7版凾欠背少痛1000円
清水澄子「さゝやき」(宝文館)大正15年3月20日15版凾800円
これらも嬉しい収穫。「さゝやき」はこないだ凾欠の綺麗なの買ったばかりだが、半額以下で凾付が(ただし表紙の銀箔の状態はこちらが格段に落ちるが)。三星社のは、もともとは植竹書院の現代傑作叢書の後版。後版も版により装幀が変わって何種類かあるようだが実態はどうなのかいまだにつかめないでいるけれども、この装幀は五葉なんだろうか。今まで場では見たことすらなかったのだが、なかなか瀟洒な本である。

水上瀧太郎「葡萄酒」(東光閣書店)大正11年12月27日3版凾400円
水上瀧太郎「旅情」(春陽堂大正8年12月1日再版凾欠200円
久保田万太郎「夜鴉」(新潮社)昭和2年12月13日初版凾500円
徳田秋声「小説の作り方」(新潮社)大正14年4月15日18版カバ欠300円
瀧太郎、万太郎のは小村雪岱装。「旅情」は持っていたが、3.11の時に床に落下し背革が切れたので、新しくキレイめなのを探していたのである。「葡萄酒」は重版ながらコンディションよく嬉しい。何となく明治大正期の瀧太郎本を集めているので、これでまた穴が一つ埋まった。



耶止説夫「長崎丸船長」(新興亜社)昭和17年7月20日初版1000円
国枝史郎「読切小説自選帖」(文松堂)昭和17年11月20日初版1000円
菊池寛「文芸当座帳」(改造社)大正15年6月12日初版凾1000円
石川桂郎「剃刀日記」(目黒書店)昭和26年6月15日初版帯欠300円
春草会歌集「雑草」(大学書房)昭和2年3月15日凾欠300円
下沢瑞世「都会に於ける美的児童研究」(洛陽堂)明治45年1月24日裸300円
「長崎丸船長」は、耶止説夫名義の最初の本。耶止は、八切止夫こと本名・矢留節夫のペンネームである。東條英機序文。状態もなかなかよい。国枝史郎のも初めて見た本であった。「剃刀日記」も安く欲しかった。菊池寛のは各種雑文がなんと三段組みで入っているのだが、当時の文士生活を知るになかなか面白そうな証言があって前々から読みたかったもの。予算的に今回この本で千円はきつかったが、まあ仕方ないといったところか。

「中学世界」大正元年11月800円
「新小説」明治43年8月木版口絵欠500円
「新小説」大正2年5月木版口絵欠500円
「新小説」は口絵が欠だが、まあこの値段ならばよいかというところ。柳浪や鏡花掲載。「中学世界」は表紙が小川千甕。夢二の詩画なども収録。この表紙、抒情的で好きである。で、お次は新しいもので、お勉強用など。

ポーター「啓蒙主義」(岩波書店)500円
シュミット「政治神学」(未来社)300円
野原一夫「編集者三十年」(サンケイ出版)200円
尾形界而「古書無月譚」(東京堂出版)400円
「映画評論」昭和43年10月200円
「映画評論」は異常性愛映画特集で、岡部道男「クレージー・ラブ」と寺山修司「さらば映画よ」なんていうキャムプな映画のシナリオ掲載号。「古書無月譚」は、三島由紀夫「岬にての物語」帯付きの話が出てくるのだが、これ、そもそもが小説であるってことに気がつかなかった。体験談を書いているのかと思い込み、これは新証言と買ったのだが失敗であった。
目録注文していた大蔵貢「わが芸と金と恋」2000円はハズレ。著者は新東宝の社長。これの帯付き欲しいのだがなあ。