漁書日誌 3.0

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西部に朝イチ

西部古書会館に開場前に行って並んで開場と共に入場したことは前に一度ある。その時は元版(貼凾の)『悪徳の栄え』正続凾付を800円で見つけて喜んだ記憶がある。今調べてみると1998年10月3日であった。なんともう四半世紀近く前ではないか。当時はまだ中野区在住で自転車で行っていたのであった。

今日はvintage book lab.という1日限りの新しい古書展なのである。目録注文品もあり、前もって会場の棚の写真がTwitterにアップされ、盛林堂書店などは目録掲載品以外は500円均一だという。これは、ということで四半世紀ぶりに西部古書会館の開場前に赴く。開場10分前くらい、すでにガレージ部分は解放されていて、30人くらいはいたであろうか。入り口には半分くらいの客がぐじゃぐじゃに列んでいる。そして開場。もうここは靴を脱がなくても良いのである。これはというのを棚写真で見つけていたので、あるかなと行ってみると、ある。これもある、あれもあるとカゴに入れていく。群がっているお客は、おそらくはミステリ関係のコレクターが多いのであろう。文学系のものは案外残っていた。そこに目録注文していた盛林堂主人がやってきて注文品2点とも当たりという。まさか両方とも当たるとは思わず、予算が全然足りない。あれやこれやを棚に戻して、カゴを帳場に預けて外に出る。

銀行に行ってから戻ってお会計。古書仲間と合流し、その後、ぎょうざの満州で昼食、高円寺茶房でお茶して一服。今回はとてもいい買い物ができたのだが、先々月のパソコン買い替えやら、先月の「悪魔」のこともあり、一気に貧窮問答歌である。こんなに立て続けに高い買い物をしたのは初めてでではないか。相場よりもお安くいい本が買えたのではあるが、お金のことを考えると暗澹とする…。

まずは500円均一の収穫から。

大藪春彦「火制地帯」(浪速書房)昭和35年6月30日函欠

中原弓彦「虚栄の市」(河出書房新社)昭和39年1月25日初版帯欠少痛

寺山修司「誰か故郷を想はざる」(芳賀書店)昭和43年10月20日初版カバ帯

棚写真で目をつけていて一目散に確保したのが大藪のである。函欠で少し汚れがあるが、何を隠そうこの本はロス・マクドナルド「青いジャングル」(創元推理文庫)からの盗作が発覚し回収された本。それから「虚栄の市」は、本当は角川文庫版で欲しかったが、まあ読めれば十分とこちらの元版を。この河出ペーパーバックのシリーズは、帯とビニルカバーが外装。このシリーズは、ナボコフやメイラー、クロソウフスキーなんかを買ったなあと。結構いいラインナップだったなあという印象。寺山のはすでにもっているが帯のために購入。

小沼丹「汽船」(青娥書房)昭和46年6月25日初版凾帯月報付焼

郡司正勝荷風別れ」(コーベブックス)昭和51年9月25日凾帯

篠田知和基「土手の大浪」(コーベブックス)昭和51年11月30日凾帯

小沼丹は文庫本をもっているくらいだが、この「汽船」は前々から欲しかった本。ちょっと焼けがあるがまあ(確か帯が2種類ある)。それからコーベブックスの南柯叢書ー近代文学逍遥シリーズの荷風(郡司)、百間(篠田)。これは、限定500部記番入り。用紙や印刷、造本がいい。贅沢な和紙、活版印刷、シンプルな装幀、いまこんな本を作ろうと思っても作れないだろうなあと。このシリーズは数冊持っていて、金欠で売却したが、まあこの値段ならば持っていたい本である。

カッシーラー「個と宇宙」(名古屋大学出版会)カバ帯

出口裕弘澁澤龍彦の手紙」(朝日新聞社)カバ帯

菅沼定憲「いまなぜ寺山修司か」(彩流社)カバ

出口のは書き下ろしエッセイで三島文献、寺山のもちょっと読んでおきたかった本。

丸山薫「一日集」(版画荘)昭和11年9月15日凾

新興芸術派十二人「モダン・TOKIO円舞曲」(春陽堂昭和5年5月8日カバ欠15000円

丸山薫の方は均一棚からの収穫だが、世界大都会尖端ジャズ文学叢書のコレは目録注文品。これはもう昔から欲しかった本。このシリーズは同じデザインのカバーがつくが、カバ欠の少痛本ならなんとか手が出せる価格になるんではないか、と思ってはや20年。そんな都合の良い出物はなく、今回ようやく、である。そして、お次のが今回外れるだろうと実はたかを括っていた注文品。

泉鏡花婦系図」前編(春陽堂明治41年2月15日初版カバ欠

   「婦系図」後編(春陽堂大正2年4月1日3版カバ欠、前後編揃25000円

この辺はやはりいつかは欲しいというものだけれども重版口絵欠なら手が届くかもしれないが、そういう都合のいい出物はない。今回のは前編が前見返しが半分破れ、後編が本文一頁目が半分破れ欠なのである。モダン東京もあるしかなりキツいが、こういう出物はまずないだろうしと注文したもの。3版は少しクロスの質が異なり、背のタイトル文字も太明朝のような初版とは異なる書体で、ごくわずかだが判型が大きい。あれと思ったが印刷所が異なっていた。口絵は英朋と清方。良いのだけど、ここのところの立て続けの出費はキツい…色々売却していくしかないか。