一年に一度の特選古書展と青空古本まつりである。
金曜の初日、開場5分前くらいに到着。あきつ、かわほり、魚山堂などなどじっくり見ていく。これはどうしようかと散々逡巡したものがあったが、結局買ってしまった。
「一葉全集」(博文館)明治30年1月7日初版裏表紙と口絵欠600円
若松しづ訳「小公子」(博文館)明治44年11月20日21版500円
先日表紙裏表紙と口絵欠の「一葉全集」を買ったけれども、今回のは口絵欠。本文も一ページ分コピーで補われていた。とはいえ、これで初版1冊分の資料が揃う。「小公子」は明治期の翻訳事情を伝える1冊として資料用に購入。
村上浪六「草枕」(青木嵩山堂)明治30年4月25日6版500円
末広鉄腸「雪中梅」(青木嵩山堂)明治33年3月1日17版1200円
「草枕」というのは浪六の友人・島田澄三の日記を元にして浪六が執筆したものの由。前編後編のうち前編。口絵は中野春郊。「雪中梅」訂正増補合本版で口絵は水野年方。
斎藤昌三「閑板書国巡礼記」(書物展望社)昭和8年12月29日限定函欠400円
内田魯庵「魯庵随筆 続紙魚繁昌記」(書物展望社)昭和9年4月10日限定函900円
蚊帳のやつは表紙がいたんだ本を前に買っているけれども、400円でそれより綺麗な状態の本だしと。表紙の蚊帳の一部が敗れているけれどこれは修復できそう。巻頭に「御令名奉祝の日/十二月二十九日/著者/呈上」と毛筆署名。両方とも天小口は黒染めというか鉛筆の芯のような黒光り。これはただの天黒染というのではないのかな。
「木下杢太郎詩集」(第一書房)昭和5年1月15日函欠2800円
柳原白蓮「改訂 几帳のかけ」(玄文社)大正9年11月25日改訂7版函500円
「文藝倶楽部」明治40年5月号600円
杢太郎詩集、これはいつか函欠の本が欲しかった。この値段は激安だがもちろん訳があって、背の溝が片方切れている。何かの接着剤で補修してあるのだが、これがまあうまい感じに補修されている。どうしようか逡巡したが、結局買ってしまった。それから白蓮の本は、後ろ見返しと函に「河井」「河井31」と記した付箋が貼付してある。どうもこれは河井酔茗旧蔵書らしい。
で、古書会館を一通り回ってから抱えた本を取り置きし、次は靖国通り沿いの出店へ。まずは盛林堂書房へ。かなりの人だかりであったが、朝イチからは落ち着いた感じなのかなとは思う(朝イチ古書会館だからわからないけれど)。
谷崎潤一郎「肉塊」(春陽堂)大正14年2月5日7版函美印
ベン・ヘクト「1001夜・シカゴ狂想曲」(春陽堂)昭和5年5月18日カバ欠6000円
いやあしかし世界大都会尖端ジャズ文学叢書のベン・ヘクトは嬉しい。カバーは同じ柄だからいらない、カバー欠で安くないものだろうかと思いつつウン10年経過。この本、初夏に本部古書会館あった中央線いろいろ展にも同額で出ていて逡巡した本。昭和初期の翻訳文学資料として。
井伏鱒二「仕事部屋」(春陽堂)昭和6年8月5日背少痛函3700円
これも欲しかった本。最近けっこうお安めで見かけるようになり、チャンスがあればと思っていた本。枡形変形であることも、硲伊之助装幀の絵もいい。
結城昌治「隠花植物」(桃源社)昭和36年3月25日函帯300円
三島由紀夫「黒蜥蜴」(牧羊社)昭和44年7月20日2版函800円
田島莉茉子「野球殺人事件」(深夜叢書社)昭和51年12月15日限定函帯500円
結城昌治のは桃源社の書下し推理長編第2期の1冊。第1期は枡形っぽい変型判だったような気がするが、やっぱりああいうのは取次から文句が来たのかしら。「黒蜥蜴」は2版。初版には1500部と記載があったが、2版は何部だろうか。常識的に考えれば500部か。
で、お昼を済ませて茶店で一服し、古書会館に戻る前に靖国通り沿いの出店をひとつひとつ見ていく。
岸田典子「黄冠の歌人」(コーベブックス)昭和52年3月25日限定函帯800円
谷崎潤一郎訳「ウインダミーヤ夫人の扇」(春陽堂文庫)昭和7年10月1日初版400円
かなりお金を使ってしまったので、これというのに絞って購入。コーベブックスの近代文学逍遙は限定500部。これはお安く探していたので嬉しい。そして春陽堂文庫。
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そして土曜日。すずらん通りのブックフェスが始まる。
といっても15時半ごろ神保町に到着。ちらっと盛林堂の出店を見る。
永山一郎「出発してしまったA'」(永山一郎遺稿刊行会)昭和40年12月31日函2000円
平井呈一訳「アーサー・マッケン作品集成1」(牧神社)昭和50年2月15日2刷カバ函カバ500円
中村三春編「映画と文学交響する想像力」(森話社)1700円
昨日買いすぎてしまっているしどうかなあと、昨日も逡巡したのだが残っていたので購入。永山一郎遺稿刊行会の発起人に齋藤愼爾がいるのだが、この本は裏見返しに齋藤愼爾の記名がある。冬樹社から永山一郎全集が出ているけれども、やはりこちらの本は持っていたかった。マッケンのは牧神社資料として。そして森開社のはすずらん通りのブックフェスにて。軍資金はとっくに尽きているけれども一応と。