漁書日誌 3.0

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師走の窓

窓展、今年最後である。いつものように9時40分ごろにはお茶の水に到着、10分前には入り口が開いて中へ。まだ10時には5分くらいあったはずだが、そのまま開場。あきつ書店の棚に向かう。

これはちょっとと手に取ると、大抵は2000円とかの値がついているので棚に戻す。必要最低限、なるべく金を使わない、そう心がけているつもりである。そしてかわほり堂、けやき書店なんかの棚を丁寧に見ていく。けやき書店の棚に、吉田健一の著作翻訳、特に生前のものが大量にあった。論文を書いたこともあって、初期のものはちょっと欲しいけれども大体は文庫で持っているしなあと。ただ、そんな中に「ファニーヒル」の改訂版があったので、それは抱える。再度あきつの棚をリバースがあるかチェックしていく。フッと気がつくと、すでに正午を過ぎていた。今抱えているものをさらにまた吟味して、お会計。

中村正直訳「ポケット校訂西国立志編」(田中宋栄堂)明治43年9月17日400円

夏目鏡子述「漱石の思ひ出」(岩波書店昭和4年10月15日初版函800円

両方とも装幀に関する書きものの資料として。西国立志編はカバーの外装があったか、それとも裸のこのままだったのか。背文字がないのでカバーかなあとも思う。

片岡良一「現代作家論叢」(三笠書房昭和9年3月20日函400円

これはなんとはなしに手に取ってみて、その装幀に興味を持って購入。装幀参考資料。作家ではなく学者による論文集だのにこの派手な装幀。柄染めの背革装、5段バンド(擬似バンド)、天金、そして表紙はザラザラした合板みたいなテクスチャーの表紙に花柄。装幀は秋朱之介。どうりで。かなり豪勢な装幀は金がかかっていそうだが、著者が金出してるとかあるのだろうか。柄に染めた革を使ってるのは初めて見たかもしれない。

太田典礼「青と赤」(妙義出版)昭和32年1月20日200円

吉田健一「読者の立場から見た今日の日本文学」(新潮社)昭和34年4月25日300円

クレランド(吉田健一訳)「ファニー・ヒル」(河出書房)昭和41年12月20日改訂初版帯ビニカバ100円

妙義出版ってのでピンときて。太田典礼はあちらの方でよく見かける名前で性科学的著作は持っているが、これは戦前入獄した時の獄中記。そして吉田の著作は新潮社の「日本文化研究」の4集、抜刷りのようなペラペラな冊子である。そして「ファニー・ヒル」。元の発禁になった方は学生時代に買ってすでに所持している。初版は25000部も発行して、警察が河出に踏み込んで159部を押収したと当時の新聞報道にある。返品分か何かわからないが、しかしそれだけ流通しているので発禁といえども古書ではよく見かける本である。却ってこちらのホットパートを訂正したバージョンの方が見ないかなという体感があって購入。「ファニー・ヒル」は戦前の北明関係で出たのも持っているが、あれも上製本並製本と2種類あったような記憶。

サンデー毎日特別号「小説と講談」大正13年4月1日100円

サンデー毎日週刊朝日あたりの大判週刊誌が少しあったので、そこからこれを。芥川や鏡花、未明なども掲載、名越國三郎、鰭崎英朋他の挿絵もある。表紙は伊東深水

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詩誌「螺旋の器」10号〈特集・書物随筆〉

森開社の小野夕馥さん主宰の雑誌。毎号楽しみに注文しているが(直接注文制)、今回は書物随筆特集ということで、これまた楽しみにしていたもの。フランスの古書店での世紀末文学書、北園克衛の自筆校正本、ローデンバック原書の謎の書き込み、幻の辻野久憲作品集、あるいは堀辰雄、涙香などなど、古書や書物に関する随筆が目白押しで楽しく興味深く読んだ。この雑誌も別冊含めて11冊目である。