さて、窓展である。昨日から雨。雨の中、トートバッグに古本いっぱい詰めて帰るのは嫌だなあと思っていた。だからなのかどうか、古書会館前の行列はいつもよりはほんのちょっと少ないように感じた。開場15分前くらいにきたのだが、5分前くらいには古書会館入り口を開放し階下の開場入り口前のたまりに入れたのでやっぱり人数は少ないのだろう。そしてスタート。
まずあきつ書店の棚へ。窓展はカゴがないので確保分は手で持つしかなく、あまり持ってもいられない。で、いくつか抱えたが、これといったものはないし、これ今買っても仕方ないよなあというのは手放し。それから他の書店も回る。けやき書店の棚、かわほり堂の棚を特にじっくりと見る。かわほり堂では、澁澤龍彦あたりの本やら桃源社の「大ロマンの復活」シリーズがズラッと千円以下で並んでいて感慨深いものがあった。ここでは安ければ買うようにしているコーベブックスの「近代文学逍遥」シリーズの泡鳴のやつを購入。これで5冊目か。この本、印刷、紙、製本どれもシックでとても良いのだが、本文にポツポツかび?が出やすいのが玉に瑕。その後、知らない本屋の棚で書誌ユリイカの「ロートレアモン全集」3巻の函欠を300円で見つける。真鍋博のエッチングが入った本。これは嬉しい。そしてお会計。
片岡昇「カメラ社会相」(文芸市場社)昭和4年1月30日3版ノド補修印500円
ラディゲ(堀口大学訳)「ドルヂェル伯の舞踏会」(白水社)昭和6年1月10日カバ欠署名300円
「カメラ社会相」は梅原北明発行、酒井潔装幀。普及版の方。小学館の蔵書印、小学館資料課のバーコードなどがついてるが放出本か。他にも数冊あった。それからラディゲの本は、20年くらい前に買って持っているが大学の署名があったし安いので購入したもの。帰宅後に所持本と比較してよく見てみると献呈先の画家の氏名と本の番号が活版印刷されたページと署名ページが増補されている。本文は明灰色のコットン紙なのだがこのページは異なり、ページ下部に小さく「ドルヂェル伯の舞踏会(一〜二五〇)とある。これ、おそらく限定250部の限定本なのだろう。そのページ以外は所持本と同じようであった。こんな限定版があったの全く知らなかった。試しに佐々木桔梗「五行山荘限定版書目細見」を繰ってみると、本書については言及なしだが、同時期の「怖るべき子供たち」については限定本があった旨記してあった。のちに江川書房を設立する江川正之の白水社時代の仕事である。白水社の「ドルヂェル伯」「怖るべき子供たち」「恋愛株式会社」「世界選手」はおそらく全部江川が手がけた本であろう。これらは手元に置いておきたい本である。会場には別の本屋の棚で同書をもう1冊見かけたがそちらは署名入りではなかった。
谷崎潤一郎「刺青」(全国書房)昭和22年6月20日函300円
栗田勇訳「ロートレアモン全集」(書肆ユリイカ)3巻昭和33年4月30日函欠300円
上記したようにロートレアモンのは口絵のエッチング目当て。全国書房版の「刺青」もとうに持っているが安かったので。
沼正三「初版本・家畜人ヤプー」(出帆社)昭和50年7月30日初函帯500円
窪田般弥「詩人泡鳴」(コーベブックス)昭和51年9月25日函帯限定500部800円
白石かずこ「愛たちけものたち神たち」(天声出版)昭和43年7月15日初カバ帯300円
「ヤプー」は、奥付記載のタイトルは「初版本・家畜人ヤプー」。都市出版社版の紙型をそのまま流用しているから「初版本」とついているのだろう。しかしこの名称は帯と奥付にしか記されていない。トンネル函で小口三方黒染。装幀資料として購入。白石かずこの本は横尾忠則装幀。これは三島由紀夫を論じた箇所があるので購入。かわほり堂の棚に「世界異端の文学」シリーズの「肉の影」カバ函帯付が500円であって、これも原稿用に抱えたが、重いし結局棚に戻した。
婦女界特別付録「「茅の屋根」と「母親」」大正12年7月300円
「短歌」昭和37年2月号200円
「文学散歩」(昭和37年2月)回想の岡田八千代特集200円
婦女界の付録はちょっと面白いので資料として購入。全紙を折って折って64ページになっているのだが裁断されていないのである。なので拡げると表裏に印刷された全紙になる。こんなの初めて見た。角川の「短歌」は寺山修司作品のため。
「写真集ゆるせない日からの記録」(麥書房)昭和35年7月25日3刷300円
「アートシアター」(日本ATG)昭和38年3月400円
百年文庫「夢」(ポプラ社)初版カバ帯300円
クェンティン「二人の妻をもつ男」(創元推理文庫)重カバ110円
「夢」というのは短編アンソロジーで三島作品が入っているため。新刊で出た時にこんなの古本で買えばいいやと思っていたが、なぜか見かける古本は皆帯欠だった。奥付見たら2010年刊行、あれからもう10年経過したのかと。ATGのパンフはオムニバス映画「二十歳の恋」のもの。トリフォーのパリ篇はケーブルテレビなんかでも放映されるが石原慎太郎が監督した東京篇は見てみたい。ソフト化しないのだろうか。そして写真集(といってもペラペラの冊子)は安保改定の時のやつ。資料として。
お会計を済ませて、外に出てみると雨は止んでいた。
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実は先々週末の和洋会古書展、五反田遊古会古書展も行きそびれてしまい、先週は神保町で古書展なし。ということで、うっかりとネットで手を出してしまった古書が以下。
吉川英治「檜山兄弟 上巻」(新潮社)昭和7年7月22日函420円
長谷川伸「瞼の母」(新小説社)昭和11年7月20日函欠1360円
グロイス「アート・パワー」(現代企画室)カバ帯1680円
「檜山兄弟」は上下巻なので上巻だけでは意味がないのだが、装幀参考資料として。枡形で、本体表紙および中の挿絵は堂本印象。中の挿絵もたっぷりと見せる造本。「瞼の母」もいつかと思っていた本で嬉しい。表紙は木版。グロイスはお勉強用。