漁書日誌 3.0

はてなダイアリー廃止(201901)を受けてはてなブログに移設しました。

花粉と開花

東京では最高25度近くまでいき、桜の開花が確認された今日。久々の趣味展である。9時40分過ぎに古書会館に到着し、一服してからやおら列に並ぶと踊り場あたり。その後も人は増え、会場間際には外にまで行列。いつもの光景である。ただし今日はいつもより気持ち人が多かったような気もする。10時開場。いつものように会場奥の扶桑書房の棚に向かう。既に最前列に入ることは叶わずうしろやら脇からなんとか手を伸ばして棚から本を引き抜く。

今日は前回に引き続き第一書房の背革本やら詩集などがあったが、学生時代は垂涎の的であったこれらも今はあとまわしになる。『続断片』凾付があったので手に取って見ると、背コーネル革装の上にカバーがついて凾に入っている。カバーの存在は知らなかった。800円。既に裸本を持っているので棚に戻す。今日目立ったのは、明治本で背中に紙を貼って補修してある本。たいてい口絵欠で、400〜800円。松岡蔵書という印。誰かコレクターが手放した品だろう。棚の下、雑誌の中に明治の並装本が紛れ込んでおり、幾つか抜く。背の補修された紅葉や桜痴、浪六あたりの本。また、第一書房本は手を出さなかったが、昭和初期の白水社の、似たようなモダンな丸背上製本、『恐るべき子供たち』『ドルヂェル伯の舞踏会』『世界選手』のうち持っていなかったモーランの『世界選手』だけは確保。今更だけれでも、本体表紙のアルミ箔が比較的綺麗に残っていたので。他2冊は東郷青児装幀で表紙と同様のカバー装だったと思う。こちらは阿部金剛装。あとは『恋愛株式会社』の綺麗な凾付を千円以下で欲しいものだ。

で、だいたい30分くらいで扶桑の棚は見終えてしまい、他の書店の棚を見て行く。月の輪の棚の雑誌の山、また新しい中身になっていたような印象なので細かく見て行く。雑誌に紛れて、博文館の「明治文庫・短篇小説」が1冊紛れ込んでいる。しかも口絵付で千円。桜痴や花袋の入っている第10編。1時間少し経過、会場も全部見て回って、再度扶桑棚を見てから、帳場に確保品を預けて、友人らと食事に出る。丸香うどんで食べ、ラドリオで一服し、田村書店を覗く。外ワゴンに講談社学術文庫ちくま学芸文庫がドッサリと積んであったので、そこからシャステル「ルネサンス精神の深層」と池上俊一「身体の中世」を各400円で購入。

古書会館に戻り、確保品を徹底吟味、サクサクと棚に戻す。戻しつつもリバース品をまたチェックして確保したり。今日は「新青年」なんかもドッサリ出ていたが、けっこう売れたのであろう。昼過ぎに戻ってくると、棚はかなりスカスカになっていた。寝不足でもあり、早めにとそそくさと会計。どうも今日は花粉がかなり濃く舞っているのか、いつもなら薬で抑えられているのだが、くしゃみ洟水が酷くつらかった。

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春のやおぼろ「当世書生気質」(晩青堂書店)明治20年6月4頁落丁400円

伊良子清白「孔雀船」(左久良書房)明治39年5月5日初版カバ欠奥付欠1000円

「孔雀船」は嬉しい。見返しのノド部分に同系色の紙で補修があり奥付欠だがそれでもこれは安いだろう。口絵一葉。国会図書館のデジコレで奥付を確認しようとしたら、国会蔵書は口絵欠本であった。

逍遙のは、前に19年発行のクロス装本を買って持っていたが、今回のはボール表紙本。発兌元は同じだが発行人が異なっていた。本文も罫がなくなり新組している。落丁箇所には前の持ち主が該当本文を手書きで書いた紙が挟み込まれていた。むろん「当世書生気質」初版は17冊に分冊されたもの、それらを上下2冊に編み直したもの、今回のように別製本としてクロス装と19年発行のボール紙本、今回のもの、大和綴じのもの、ほか重版異装がごちゃごちゃとある。面白いのは今みたいに単行本があって新装版があって文庫本が…という時系列による諸版の変化があるのではなく、ほぼ数年の間にもしくは同時期に諸版がごちゃまぜで同時に受容されていたことで、かなり調査はされているとはいえ、まだまだ掘ればあれこれと面白くこの辺の本を見ることが出来るのでは無いか、ということである。

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「明治文庫」第10編(博文館)明治27年5月11日少汚1000円

「日本大家論集」第11編(博文館)明治21年4月5日少汚200円

これは月の輪さんの棚で買ったもの。「明治文庫」は先に記したとおり。口絵の多色刷木版画は永洗。この2冊とも、雑誌形式の単行本というか、中間的な発行流通形態の書物。吉岡書店の新著百種ほか、こうした明治期の雑誌的単行本についてはもっと調べないとなあと。「日本大家論集」はまあ、ある種のパクリ出版というか、そういうもののはしりだと思われるが、著作権と、再録刊行と、雑誌形式の単行本と、書誌学的にもこの辺は持っておきたかった資料。

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尾崎紅葉「浮木丸」(春陽堂明治29年9月15日背補修口絵欠800円

尾崎紅葉「黄櫨匂」(春陽堂明治31年1月1日背補修口絵欠800円

柳川春葉「後の世(後編)」(春陽堂明治40年5月10日800円

「浮木丸」「黄櫨匂」共に上記松岡蔵書。口絵欠で背補修だが、この値段であれば持っていたいというものである。「浮木丸」は風葉「世話女房」を併録、「黄櫨匂」は春葉、鏡花、中村雪後の作品も併録している作品集。「後の世」は表紙にカバーの著者名の部分が貼付してあるが、他は程度も良く。多色刷木版口絵は梶田半古。

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吉江孤雁「緑の国」(植竹書院)大正4年6月23日初版凾欠300円

馬場孤蝶「野客漫言」(書物展望社昭和8年9月23日凾欠800円

小村雪岱日本橋檜物町」(高見沢木版社)昭和18年5月20日重版凾欠1500円

吉江孤雁の本はついでのようなものだが、植竹書院のものだったので。堅牢な作りの袖珍本。馬場孤蝶のは前々から欲しかったもので、凾欠で千円くらいでないかしらと思っていたのでまさにドンピシャ。会場には同じ凾欠がもう1冊あった。雪岱のは奥付には「重版」としか記載がないが再版。三版は「三版」と記載があり元より口絵がない。前にも再版凾欠を買ったが、それは口絵欠だったので、ようやく口絵付を入手。

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ポオル・モオラン(飯島正訳)「世界選手」(白水社昭和5年11月30日凾800円

明治文学講座「明治作家研究」(木星社書院)昭和7年12月20日カバ200円

「世界選手」は先に記したとおり。阿部金剛による表紙下半分と扉対向頁のアルミ箔が強烈な印象でモダンな佇まい。

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山宮允「書物と著者」(吾妻書房)昭和24年6月5日初版凾300円

「紳士読本」昭和37年12月号、200円

倉科信一「法網をくぐる人々」(久保書店)昭和39年月10日カバ300円

山宮の本は、この時代にしては凾にビアズレーをあしらい本体もなかなか瀟洒な作りの冴える本。「西国立志編」の贋版の話など。

ところで、バタバタしていて忘れていたが、先週末は五反田の古書展に赴いて来た。目録注文品があったからだが、それも記録として書いておく。

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「雨宮庸蔵宛谷崎潤一郎書簡」(芦屋市立谷崎潤一郎記念館)1500円

奇譚クラブ」昭和33年6月号300円

日本文学報国会編「辻小説集」(八紘社杉山書店昭和18年8月18日1500円

雨宮宛谷崎書簡が目録注文品。新しい谷崎全集は、前にはあった書簡の巻がない。これは芦屋の谷崎記念館発行のもので、論文資料用。

それから「辻小説集」は太宰、安吾、谷崎、足穂ほか200名近くの作家の戦時愛国小説集とでもいうべきか。これはワタクシ初のメルカリ購入古書。背にちょっと痛みがあるほかはなかなかのコンディション。

千里眼で熱帯樹

3月1日、西部古書展へ赴く。予定であった。が、バタバタしているうちにギリギリになり、会場へ電話。閉場の18時に5分くらい遅れるが、注文品が当たっているのを確実に取りに行いたいのだが…と問い合わせると、18時10分には誰もいなくなりますから、ということでOK。10分で誰もいなくなるってのはまあないだろうけれども、それでも駅からダッシュして18時3分頃に到着。ちょうどの金額を払い、注文品を無事受け取る。

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高橋宮二「千里眼問題の真相」(人文書院昭和8年5月5日初版凾2500円

一緒に注文した福来友吉の「増補心霊の現象」(弘学館)凾欠2000円はハズレ。まあノリで注文したようなものだが、この辺は取り敢えず当時のものを少しは持っておきたかった。明治末の千里眼事件を肯定的にまとめてある本、とでもいおうか。口絵には著者への福来友吉書簡の一部が掲載。

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なぜか、昭和30年代?の福来友吉記念館の案内リーフレットが挟まっていた。

そして翌日。

世田谷パブリックシアターのシアタートラムへ、三島由紀夫の「熱帯樹」を見に行く。出演俳優が大人気でチケットがなかなか取れない由。パンフレットに執筆した特権で招待。よい席でじっくり見ることができた。「熱帯樹」自体は、最初に見たのは和敬塾でのク・ナウカの再演、その後、最近ではスズナリでの三条会のものか。久々である。装置は一寸抽象的で、むしろ初演を思わせる。黒い壁に汚れがと思ったのは、海面が月に照らされているところか。見て直ぐメモを取れば良かったのだが、覚書として。若い二人は熱演、脇はベテランが押さえるという感じ。基本的には戯曲そのままだが、ラスト、小鳥が生き返り庭に逃がしてやってから、郁子らの道行となる。地の根を張る熱帯樹の二人と月光に導かれ昇天する二人と、これも対になっているのだろうなあ。マチネであったが、終演後外に出ると既にソワレ当日券の長い列、それもすべて女性であった。そういえば客席も8割は女性だったと思う。3月2日マチネ。

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三島由紀夫作「熱帯樹」小川絵梨子演出@シアタートラム

で、その後は原稿の直しだったりなんだりであっと言う間。古書展もまた行けず。地元の古本屋で何冊か。

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黒川正剛「魔女・怪物・天変地異」(筑摩叢書)カバ帯600円

柄谷行人「日本精神分析」(文藝春秋)カバ帯400円

保昌正夫「川端と横光」(こつう豆本)300円

黒川という人のは、先日似たようなメチエの本を買ったのだったが。日本精神分析はすでに文庫化していた。失敗。 

トークに寄稿、オペラと古書

いろいろと滞っていた仕事があったり、あちらこちらとしているうちに須臾と月日が経ってしまいもう三月。前にこちらで告知したトークも無事終わり、オペラも観劇しに行き、合間に古書を買ったりしていた。

で、いろいろと書くことがあるのだが、まずは仕事関係。

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まずはジュンク堂渋谷店でのトーク。ご来場していただいた方には改めて感謝申し上げます。拙い話ではございましたが、何かしら参考になれば幸甚です。

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東京二期会「オペラ金閣寺宮本亜門新演出は、初日にうかがいました。ドイツ初演、日本初演アメリカ初演、ザ・カレッジ・オペラハウスでの上演、神奈川県立ホールでの上演、二期会宮本亜門新演出といままで6つの演出バージョンがあるわけですが、わたしはかろうじてNHKのBSでザ・カレッジオペラハウスのをテレビで見たのみ。仮にあれがスタンダードとすると、今回のものは台本も一部テキストレジーしながら、ヤング溝口を登場させるなど意欲的な解釈で、あの観念的な金閣の美をこんなふうに舞台上に出現させるのかという圧倒的な舞台をみせてくれました。

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で、仕事の宣伝のようになってしまいますが……

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二期会「オペラ金閣寺」プログラム

こちらの「オペラ金閣寺」プログラムに寄稿しています。

実は「オペラ金閣寺」上演中の東京文化会館で先行発売していましたが、三島由紀夫昭和32年黛敏郎電子音楽楽譜を伴って発表した「理髪師の衒学的欲望とフットボールの食欲との相関関係」という詩+電子音楽のコラボレーションがあり、初演は一昨年でしたが、今回ようやくCDとなって一般発売されます。

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ライナーノーツに三島と黛について解説を寄稿しております。限定250部なので、ご興味ある方は是非ご予約を。購入は、発売元のスリーシェルズさんの特設販売サイトまで。再版はまずないと思います。

そしてさらにまた、現在シアタートラムにて小川絵梨子演出で上演中の舞台「熱帯樹」。

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「熱帯樹」プログラム

舞台はこれから観に行く予定ですが、こちらのプログラムにも寄稿しております。

ご笑覧いただければ幸甚です。

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ということで、仕事の話は以上。

以下はここのところ買った古書の話。といっても、最近はあれやこれやでなかなか古書展会場にも行けず、先週だったか、たまたま吉祥寺に出る用事があり、ここまで来たのならと西荻荻窪とまわって古書店を見て回ったり、ネット古書店やら扶桑目録やらで買ったもの。

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安藤宏「日本近代小説史」(中公選書)カバ帯800円

田澤拓也太宰治の作り方」(角川選書)カバ帯400円

今野真二「リメイクの日本文学史」(平凡社新書)カバ帯300円

瀬崎圭二「海辺の恋と日本人」(青弓社ライブラリ)カバ500円

三島由紀夫「美しい星」(新潮文庫)改版カバ帯250円

吉祥寺の百年、西荻音羽館荻窪ささま書店をまわっての購入本。おべんきょ用のものばかり。新潮文庫のは改版初版だったので。うっかり買い逃すと帯付はなかなか見かけなくなる。

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これもそのうち安くと思っていたのだが、ようやく。

安部公房の劇場」(安部公房スタジオ)昭和54年6月25日400円

安部公房スタジオの上演年譜と舞台写真、批評などを載せた資料本。

それから、ネットでの買い物。

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改造社現代日本文学全集」予約募集内容見本

改造社現代日本文学全集」第2回予約募集内容見本、揃2000円

やっぱり円本の最初のものだし、これは前から欲しかった。案外古書展の場などでは見かけなかったけれども、ネット古書店だとササッと検索できてしまう。

そして扶桑書房の扶桑書房目録速報。残念ながらあれやらこれやら、注文電話したときには既に売り切れだったが、それでもこれはというものは購入できた。

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「叙情」第1輯、昭和21年6月10日発行、4500円

三島由紀夫が寄稿している終戦直後の稀覯雑誌。「しりうす」や「舞踏」に比べればまだある方なのか。16頁の小冊子だが、「三島由紀夫詩集」刊行広告が出ていたりなかなか興味深い。

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坪内逍遙小説神髄」(東京稗史出版社)上下揃題箋奥付欠4000円

まあこの辺は持っておきたかった。復刻版は持っているのだが、元版は9冊の分冊で刊行されたもの。これは上下巻に分けて和綴本で刊行されたバージョン。国会図書館の近代デジタルコレクションで確認すると、これは明治20年発行の再版ということになるらしいのだが、国会蔵書ともちょっと異なっている。写真のように見返しが元版初版の表紙をそのまま流用しているのである。上巻には「第一冊」、下巻には「第二冊」の表紙。あるいは元版初版を用いた手製本かと思われたが、いや、どうなのだろう。上下本の表紙はこの柿色の表紙でよいようだし、また違うバージョンの奥付欠本なのか。

東京の雪、前後

いろいろな原稿の締め切り、講演資料の練り直しやら採点やらなにやら、1月最終週あたりから2月の頭までいろいろとタイミング悪く忙殺。古書展も、五反田やらなにやら行き逃し、窓展と池袋リブロくらいしか赴いていない。ただまあ、なんやかんやでコンスタントには古書を買っている。

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谷沢永一・渡辺一考編「鏡花論集成」(立風書房)凾帯300円

四方田犬彦叙事詩の権能」(哲学書房)カバ帯献呈署名100円

これは古書展に間に合わず、扶桑事務所を覗いて買ったもの。鏡花論のやつはいつか安くと思っていたので良かった。四方田のには三島論収録のため。

そういえば、地元駅前のショッピングモールの一角でいくつかの古本屋が集まって古本ワゴンをやっていたので、それも見てみる。これというのはないのだが、映画パンフがちょっと面白かった。

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図録「岡崎京子 戦場のガールズライフ」カバ帯500円

三島由紀夫「初版本完全復刻版・仮面の告白」(河出書房新社)凾帯300円

竹内道敬・如月青子「邦楽・邦舞」(岩波セミナーブックス)カバ帯200円

こんなものを棚からつまみ出し、お会計後に見てなかった棚を発見、何気なく映画パンフの凾を漁ると、60年代くらいからのパンフがあって、1冊200円ならいいかと見て行くと、ちょっと拾いものかなというのもあり。

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「アフリカ物語」パンフ200円

サスペリア2」パンフ200円

「女は女である」パンフ200円

「アフリカ物語」は寺山修司原案の映画というので一応買っておく。また「サスペリア2」は新しい「サスペリア」をちょうど見に行ったばかりだったので。2などといっているが、本当は「サスペリア」より前のプロフォンド・ロッソという映画なのは有名な話。それから、これはちょっと掘り出し物かなあというのがゴダールの「女は女である」パンフ、封切り時のものであろう。タイトルロゴが東映映画のようだ(笑)。

そして三省堂池袋古本まつり。

注文品はない。しかも会場に着いたのは初日の19時頃。初日以後は行ってもなあと向かったのであった。で、幾つか購入。

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鈴木一誌「ページと力」(青土社)カバ帯1500円

岡田温司「半透明の美学」(岩波書店)カバ帯1200円

野崎歓編「文学と映画のあいだ」(東京大学出版会)カバ帯350円

「新劇」1979年12月号200円

「ページと力」は前々から欲しかったもの。「新劇」はマンディアルグが来日講演したときのもので、マンディアルグの講演に、澁澤龍彦生田耕作中井英夫が寄稿。寺山の戯曲も掲載。

それから、むろん注文はしなかったが、目録にちょっと珍しいものがあったので掲載してく。「血と薔薇」創刊の宣伝マッチ。これ、澁澤龍彦展でしか見たことがなかった。売れたのだろうか。

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で、帰宅してみると扶桑書房目録で注文した品が届いていた。

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広津柳浪「五枚姿絵」(春陽堂明治25年4月15日初版背痛4000円

柳浪初期の時代小説。中国小説の翻案的作品。口絵木版画は永洗。

で、そんなこんなでけっこう出費が嵩んでいるのにもかかわらず、窓展には朝イチで駆けつける。これはもう致し方ない。開場15分くらい前に着いて、ゆっくりと入場。ザーッと見て行きながら、お昼前に会計。

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南雄三「硝子張りの中の人」(東京堂大正13年3月10日55版裸300円

宇野浩二「文芸草子」(竹村書房)昭和10年11月20日初版裸300円

日夏耿之介「日本芸術学の話」(新樹社)昭和32年10月15日再版凾300円

「硝子張り」は実はお安く探していた本。八千代生命、帝国火災、東邦火災の経営者・小原達明の評伝なのだが、水島爾保布装幀。爾保布装ということで探していた。あんまりらしくないテイスト。

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福田恆存著作集8「一度は考へておくべき事」(新潮社)昭和32年9月30日初版凾欠献呈署名500円

文部省「あたらしい憲法のはなし」昭和22年8月2日翻刻発行背補修100円

福田恆存のは西尾実宛献呈署名。1冊くらい持っておくかなと。「あたらしい憲法のはなし」はよく教科書などで見る戦争放棄の図が入っている。占領下資料として。しかし「翻刻発行」ってどういう意味なのだろうか。

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「映画評論」1974年12月号200円

砂の女」映画パンフ(みゆき座)500円

砂の女」パンフはちょっと高かったけれども、まあ、と。

で、お会計後に古書仲間と一緒に昼食に出て、マル香でうどんを食べ、ミロンガで一服し、やおら田村書店の外ワゴンを覗いて見ると、おおっというのがあり、購入。小栗風葉「青春(夏)」の初版で口絵も綺麗に残っているのが1600円。

その後、まっすぐに帰途。寝てから仕事に取りかかるのであった。

講演します。

きたる2月9日(土曜)14時より、渋谷東急7階丸善ジュンク堂書店にて「三島由紀夫金閣寺」の変奏」と題して講演します。*要予約*無料

二期会の「オペラ金閣寺宮本亜門新演出版は、2月22〜24日@東京文化会館で上演。それに先立ってのイベントの一環として講演ということになりました。金閣寺の舞台は、いままで新派やバレエ、それから宮本亜門演出のストレートプレイとしてありましたが、オペラへのアダプテーションはヘンネベルク台本・黛敏郎作曲のみ。アダプテーション的観点から見ても興味深いもので、一口に黛敏郎のオペラといっても演出家によってそれぞれ。当日は、映画や演劇、バレエなどさまざまにアダプテーションされ変奏されていく「金閣寺」についてお話ししたいと思っています。よろしければお運び下さい。詳細は二期会ブログをご参照ください。

年明けからそして三島旧蔵書まで

正月があけてから、もう成人式も終わった。正月気分もすっかり抜けて、というか、ここ10年ほど季節感が希薄で、とりわけ今年などは年末の押し詰まった感じやら正月の気分やらも特になく、休みがあった分たまった仕事やらに忙殺される日々に自然と接続といった感じである。

で、1月4日に年明け早々向かった下町古書展、そして今日の趣味展やら、年明けしてから買ったものを振り返りながら記していこうと思う。

下町古書展は、2点のみ。

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ローデンバッハ窪田般弥訳)「死都ブリュージュ」(冥草舎)昭和51年9月15日凾限定1000円

「日本の美学」19号特集時間、300円

ブリュージュ」はとうに持っているのだが(岩波文庫版も)、そこそこ綺麗な状態でいま千円かと思わず買ってしまった。冥草舎は改めて説明するまでもなく、少部数で美装本を刊行していた個人出版社。といっても、ワタクシ的にピンとくるものは多くなく、唯一といえるのはこのローデンバッハである。サテンのような平、背はパッと見皮に見えるクロスで装幀され、凾はご覧のようなツルツルした紙質。このツルツルにポツポツカビが出るのが玉に瑕。所蔵本と入れ換え用か。それから地元の古本屋をチラと覗いて買ったのが次の本。

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西田稔「基地の女」(河出書房)昭和28年6月25日初版カバ帯附録500円

立川のベース周辺での調査を基にしたノンフィクション的な読み物。附録というのは推薦文が月報のような形でついている。占領期カルチャーに興味があるので、この辺はおさえておきたいところ。戦後独立の直後からGHQの検閲を気にしなくなったためか、こうした暴露的な書物がワンサと出るようになる。

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お次は、昨秋に刊行され、知り合いを通じて版元に直接注文して年明けに入手した復刻版の写真集、というか写真の同人誌である「プロヴォーク」である。中平とか大道とかが参加している、これも説明不要の伝説的写真同人誌。以前、ドイツで刊行された「ジャパニーズボックス」という日本戦後写真史の人気写真集の復刻詰め合わせというのがあった。定価15万で500部だか1000部だか限定のである。全3号(2号のみ帯付き)の復刻もそれに入っていたのだが、著作権だがの関係で、収録テキストの一部が白紙状態だったらしい。今回は完全復刻だとの由で、解説の類も一切無し。代わりに内容文を英語中国語に翻訳した冊子がついている。いわゆるセット凾、外凾の類もなく、雑誌ロゴをプリントしたビニル袋のみ。判型もバラバラだし、できれば簡素な帙でも付いてればなあと思うが、それをやったら定価1万円は超えてしまったかもしれない。

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プロヴォーク復刻版全三巻」(二手社)定価8640円

これはけっこういい出来上がりだし、もっと話題になってよいのではないかと思うのだが……やっぱり大道だ中平だの復刻商売が隆盛を極め、もうだいたい出尽くした感もあるからというのもあるんだろうか。なにはあれ、60年代から70年代の人気写真家のプレミア写真集の復刻は、これが出てだいたいもう終わりという感じであろうか。それはそうと、このビニル袋どうやって保管しようか。

 

で、本日金曜の趣味展である。

会場には9時45分くらいに到着しただろうか。今日は雑誌天国だったらしく、友人などは山と買っていたが、ワタクシはといえば、もう既に人垣が出来ている扶桑書房の棚のうしろからたまに手を伸ばして抜いていくという感じ。思わぬものに署名が入っていたり、これがこの値段なのかというところで今回もまた古書漁りを楽しんだわけだが、先の「プロヴォーク」の支払いもあり、会計前に削りに削り、棚に戻し、それでもかなりの散財になってしまった。

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日用百科全書1「和洋礼式」(博文館)奥付欠300円

正岡子規「子規随筆」(弘文館)明治35年10月25日再版裸300円

「和洋礼式」はいわゆるハウツー的実用書だが、大橋乙羽や鏡花らの執筆本として有名だろう。この本も実はとうに持ってはいるが、今回は所持本では欠であった水野年方による木版口絵が入っているのである。けれども今回の本は奥付欠。まさに一長一短。どちらかを処分というわけにもいかず。「子規随筆」も先日買ったが、これはピンピンに綺麗なコンディションで思わず買ってしまった。表紙は五葉だと思う。

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秋琴女子講述「女医者」(晴光館)明治38年10月20日16版

      「続女医者」(晴光館)明治39年3月1日12版正続揃1000円

半分はエロ的、好奇心的なものを満足させる目的のような女医の語る通俗医学談話のような本。日露戦後の世相でこういうのが受けたのであろう。

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下山京子「一葉草紙」(玄黄社)大正3年4月25日再版裸400円

馬場孤蝶「孤蝶随筆」(新作社)大正13年10月10日初版凾欠400円

安成二郎「子を打つ」(アルス)大正14年12月1日初版凾欠献呈署名入800円

下山京子というのは、新聞記者を経て一葉と言う名で芸妓をしていたらしい。その後御茶屋を経営、結婚して田舎へということで、25年の半生を語ると序文にある。随筆から回想からなにやら小説のようなものまで収録。これ前買ったかな、否迷って買わなかったんじゃなかったか…と思ったが、残念、既に買って所持していたと帰宅後に判明。孤蝶のは、ウェッジ文庫で出ていたのと被ったかなとケチケチ思ったが、まあいいやと。「子を打つ」は短篇集で、これもとうにに初版凾付を所持しているが、これは白柳秀湖宛の献呈署名入だったのでまあ買うしかない。

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谷崎潤一郎細雪 上」(中央公論社)限定300部記番昭和21年6月25日カバ800円

     「細雪 下」(中央公論社)限定300部記番昭和24年1月30日カバ800円

惜しくも中巻はなかったけれども、「細雪」特製300部本。しかも状態がいい。外見は全く同じなので、「細雪」の凾欠端本かと誰も見なかったのだろうと思われる。帰り際に待てよと手に取りようやく気づいて買うことにしたもの。この300部本は橘弘一郎の谷崎書誌に未掲載のものである。普及本より紙質が俄然よい。普及本には凾があるがこの特製はおそらく凾の代わりにカバー装。それから、僅かではあるが、本文が少し改訂されている(詳しくは古通連載拙稿参照)。これも既にワンセット所持しているが、状態がよく予備用に購入。

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上田秋成「夢応の鯉魚」(細川書店:細川文庫4)昭和21年12月20初版300円

川崎賢子「蘭の季節」(深夜叢書社)カバ帯300円

細川文庫は粗末な冊子だが、ほぼ全頁に棟方志功の挿絵が入っている。扉も志功。たしか3冊組みで凾の入っているのではなかったか。

さてお次は雑誌。

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「キング」創刊号(大正14年1月)、口絵1葉欠300円

宇宙塵」(昭和38年9月)400円

「日本」創刊号(昭和46年4月)500円

「キング」創刊号は嬉しい。よく出版史の記述などに出ている創刊号である。「宇宙塵」は三島由紀夫の寄稿号。なかに第2回日本SF大会のチラシが挟まれていた。「日本」というのは日本大学学生文化会議出版局が版元のタイプ印刷冊子。保守系サークルか。福田恆存の講演やら三島論やらが掲載されている。500円と高かったが、聞いたことのない文献だし、こういうのはおそらく図書館にも入ってなかろう。

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「週刊娯楽よみうり」昭和33年9月12日号300円

キネマ旬報別冊「日本映画代表シナリオ全集6」(昭和33年11月)200円

鏑木清方挿絵図録 泉鏡花編」(鏑木清方記念美術館)平成18年3月22日300円

キネマ旬報別冊は、帰山教正の「生の耀き」と牛原虚彦の「路上の霊魂」シナリオ掲載というので買ったもの。

次は雑誌というか写真集というか。

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「東京一九四五年・秋」(文化社)裏表紙欠昭和21年1000円

これは前々からちょっと欲しかったもので、残念ながら裏表紙欠によって刊記が不明だけれども、以前七夕に出品されていたのは覚えている。銀座のPXやらオアシス・オブ・ギンザに蝟集する占領軍らの写真が掲載。

そして本日の大収穫。

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サンデー毎日」昭和22年4月臨時増刊HROK印300円

HROK印というのは、前にここで紹介した三島由紀夫の蔵書印である。本名の平岡の意味。扶桑書房のご主人に聞くと、これともう1冊の2冊のみ何故か紛れていたという。三島旧蔵の本や雑誌、ポチポチと流出しているのであろうか。作家本人が生前に持ち出したり貸したりしていた可能性もある。この雑誌には川端康成による「三島由紀夫氏」と写真が掲載。赤鉛筆での書き込みは三島本人によるものかもしれない。

いやしかし、あるものである。

あれこれの締め切りや急な仕事が入ったりで、忙しいのはありがたいことではあるが、年始一気に爆発したような浪費はストレス爆発だったのかもしれない。しかし今後、財布がきつくなりそうだ……。といって、今回持っている本ばかり買っているというのもある。こんなことをしているからどんどんと本が堆積していってしまうのだろうなあ。ゴミ屋敷までいま一歩。

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年が明けてから新刊で買った本。

 

中世の覚醒 (ちくま学芸文庫)

中世の覚醒 (ちくま学芸文庫)

 

 

 

言語と行為 いかにして言葉でものごとを行うか (講談社学術文庫)

言語と行為 いかにして言葉でものごとを行うか (講談社学術文庫)

 

 

 

都市空間の明治維新 (ちくま新書)

都市空間の明治維新 (ちくま新書)

 

 

 

1971年の悪霊 (角川新書)

1971年の悪霊 (角川新書)

 

 

移転

はてなダイアリーが終了とのことで、はてなブログへと移転しました。

移転に伴って、漁書日誌ver.βとしていたのを3.0とかなんとなくそれっぽく改訂してみました。それからカウンターがどうもない?ようなので、かつてのトップページとカウンタを貼り付けておきます。

漁書日誌はそもそも1998年にワタクシがホームページを作って始めたもので、その後、漁書日誌ver.βとしてブログに移設したのが2008年2月。ブログになってからも11年になります……。

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11年間で来訪者数は119万8651人でした