漁書日誌 3.0

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要注意終末の趣味展

ここのところ都内感染者が連日500名越えということである。久しぶりの趣味展も、もしかしたら人数が少ないかもしれなと思っていた。仕事上、いろいろとリスクもある。それでもまあ、と、開場20分くらい前に古書会館に到着してみると、整理券を配布してみな外でたむろしている。混まないように、ということで、7〜8分前に開場し、整理券順にゆっくりと人が入っていく。わたくしは52番であったが、うしろに20名弱いたか。

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ゆっくり入ったので、これはもうちょっとアレだなという感じで入場、扶桑の棚に向かう。すでにいろいろと抜かれてしまった後であろうが、袖珍版のものが残っていたので、そこからあれこれ抜き出し、選ぶ。また棚下に並べてある雑誌に混じり菊版の明治本がちょろりとあるのを引き出す。あまりお金も使いたくないしということで、サクサクと棚に戻し、会計をした。

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小杉天外「新夫人」(春陽堂明治38年1月26日4版口絵切500円

小栗風葉・小川泰助「女」(日高有倫堂)明治41年9月1日初版落丁300円

飯田旗軒訳「ゾラ短編集」(共同出版明治42年3月27日印ラベル400円

久保天随編「明治百家文選」(隆文館)明治40年4月5日再版400円

「新夫人」は石版口絵の三分の一が欠落。「女」は扉や口絵含めて最初の数ページが欠落、「ゾラ短編集」はここのところよく古書市場に出て来ている国士舘大学図書館廃棄本でスタンプの他に裏表紙にべったりとバーコードのラベル…とダメージがある。まあ「女」は国会のをコピーして挟んでおくかと。「ゾラ短編集」は「馬場大尉」「洪水」の2編収録なのだが、日本人が主人公の日本の話に翻案しているという訳。岡田三郎助の木版挿絵が5葉挿入されている。「文選」は鏡花や紅葉ほか種々の短篇や随筆が註釈入りで収録されているもの。

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相馬御風「個人主義思潮」(天弦堂書房)大正5年9月19日3版カバ欠300円

岩野泡鳴「毒薬を飲む女」(鈴木三重吉大正3年12月24日初版800円

森田草平「ハウプトマン寂しき人々」(青年学芸社)大正3年10月11日再版500円

守田有秋「ズーデルマン作マグダ」(日吉堂本店)大正3年8月15日5版300円

守田有秋「セーキスピーア作アントニイとクレオパトラ」(日吉堂本店)大正3年12月3日初版300円

夏目漱石「倫敦塔 外二篇」(春陽堂大正13年4月15日50版300円

こちらはアカギ叢書もどきなど。「個人主義思潮」は御存知近代思潮叢書で、カバー欠。このシリーズのカバーは裏面に宣伝文句がズラリ印刷してあるもの。これはスティルナーの肖像画が巻頭口絵として貼付されていたりして興味をそそり購入。青年学芸社のはエッセンス叢書。日吉堂本店の名著叢書というのは初めて見た。アカギ叢書モドキ本だろうな。漱石のはヴェストポケット傑作叢書と同じ装幀造本だが叢書名はない。もとは漱石の縮刷としてこういうスタイルが出て、その後他の作家のをヴェストポケット傑作叢書と名付け出すことになったもの。初期の重版は天金だがこれは無し。そして今日一番高い買い物が、鈴木三重吉の現代作家叢書である。まあ参考にということで買ってみた。

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「週刊コウロン」昭和35年8月30日号200円

これは乱歩と三島がコメントを寄せている稲垣足穂の記事があったため。京都に住む異様な珍獣といった扱いの足穂。

いやしかし、一番高価なものでも800円。お金もないし置く場所もないということでケチケチとした買物になったが、まあ。本当は午後、リバース分を漁りたかったのだが、仕事に向かう。

そして土曜日。

今日は夜に芝居があるので都内に出て、まずは扶桑書房に立ち寄る。3冊100円コーナーから以下の3冊を購入。

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「文芸界」第6号、明治35年8月

ダンヌチオ「処女」(三水社出版部)昭和2年8月1日図書館廃棄本

堀口大学訳「嶮しき快癒」(伸展社)昭和12年5月1日限定700部記番

これで100円というのはかなりのお得。「処女」は「処女の巌」ではなく「処女」「祭壇へ」「センチメンタルな物語」の3編収録の短編集。上記と同じく国士舘大学図書館廃棄本で、裏表紙と背表紙にべったりとバーコードおよび番号レッテル貼付。特に背表紙は剥がれないように接着剤?で塗り固めてある。最悪。しかし「嶮しき快癒」は嬉しい。限定700部のうち200部が特製で、こちらは並製500部本。並製といっても背布クロース装の上製本

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夜はクロワ・プロジェクト公演「憂国二・二六」(三島由紀夫原作)という芝居に赴く。「憂国」をメインに、「英霊の声」「十日の菊」「仮面の告白」「太陽と鉄」などの引用がちりばめられ(あと沢地久枝を参考にしたのか)おわりには楯の会の制服姿で「檄」を演説するというシーンもあるもの。

夜9時からNHK三島由紀夫特番があるのに録画予約を忘れてしまい散々。