漁書日誌 3.0

はてなダイアリー廃止(201901)を受けてはてなブログに移設しました。

花粉飛ぶ趣味展

朝から快晴、しかし風が少しある。気温も先日来の寒さに比べればグッと上がった金曜日、趣味展である。今回は2点注文品があった。
バスを一本逃し、いつもより遅く古書会館に到着して列ぶ。開始10分前くらいか。そして開場時間。入口にカゴがあったのを見逃さず、とっさにつかんで扶桑書房の棚に向かう。今日は追加がないとのことで(途中、扶桑さんに聞いた)、1時間くらい集中的に見てから、あとは会場をまわってあれこれと。しかし暑い。気温も高くなったせいもあろうが、汗を掻く。途中マルコーのうどんを食べに行ったりしたが、吟味を重ねて、注文品も考えたのだが、結局は予算オーバーの買い物になってしまい、一気に金欠になってしまった。

アーロビダー「世界進歩 第二十世紀」(岡島宝玉堂)明治19年6月刻成800円
遅塚麗水「明治文庫第11篇」(博文館)明治27年5月18日口絵付800円
大和田建樹「文章組立法」(博文館)大正7年9月20日12版カバ300円
アーロビダーことアルベール・ロビダの空想科学小説「第二十世紀」は中にチラッと落丁がありこの値段だが、ちょいと見っけもの。本来は3巻まである。三方小口マーブルで、ボール紙本の体裁だが表紙はクロス。当時国産クロスはないから輸入クロスを使った装幀。これ、確か「装釘考」だったかで読んで知っていたが、中身も面白い。「明治文庫」は、ちょっと署名が読めないが多色刷木版口絵が付いている。といっても遅塚麗水なんてかなり地味だが、当時の美文散文のスタンダードとして見ておきたい。ほかに同じく口絵付の巖谷小波もあったが持っているし棚に戻した。本当は「明治文庫」も口絵欠のを安く揃えたいのであるが。「文章組立法」は通俗作文全書の第1篇で初版は明治39年9月4日。明治中期から後期にかけての文章読本系は、やはり文体の面からもちょっと持っておきたい資料。

幸田露伴「潮待ち草」(東亜堂書房)大正1年10月10日6版カバ痛2000円
柳川春葉「母」(金尾文淵堂)大正3年1月1日凾と口絵欠300円
ここ数年、露伴は古書価ガタ落ちでこの本も500円とかでよく見かけるものであるが、しかしカバーがついているってのは初めて見た。初版は明治39年3月15日。さんざ逡巡したけれども、露伴であっても外装付ならばなあといってしまった次第。「天うつ浪」くらいならまだしも。もう10年くらい前か、新宿伊勢丹古書市で、なんば書籍の棚から「天うつ浪」のカバー付初版揃を12000円で知人が買っていたのを思いだした。そういえば今日は棚に露伴のあんまり見ないようなところが数冊あった。「母」は杉浦非水装幀。口絵欠だがまあ。そういえば、春葉は既に「母の心」というのも持っている。ちゃんと調べてないけれども続編的なものか。たぶん外装は凾だと思うが(カバーかもしれない)。しかし口絵を無理に引っぺがすものだから、冒頭の頁が取れかけてしまっているのは困りものである。

泉鏡花「鏡花集第三巻」(春陽堂明治43年8月6日初版凾欠400円
正宗白鳥「泥人形」(春陽堂現代文芸叢書)明治44年11月5日6版美500円
小川未明「生活の火」(精華書院)大正11年7月?奥付と凾欠800円
豊島与志雄「若き日の話 他四篇」(春陽堂ヴェストポケット傑作叢書)大正10年11月18日3版200円
夏目漱石吾輩は猫である」(大倉書店)大正11年3月1日79版凾痛1000円
「代表的五大名家戯曲傑作集」(「苦楽」創刊号附録)大正13年1月1日500円
谷崎潤一郎「盲目物語」(創元社)昭和奥付と凾欠800円
鏡花なんかは初版だったので、「猫」は凾目当て、豊島のはピチッとした美本なのでと、それぞれ持っているのに買ってしまったが、「生活の火」など奥付欠でも嬉しいところ。恩地孝四觔装幀になる羽二重装。「泥人形」は重版だが復刻版のようにピチピチに状態がよいので思わず。「盲目物語」はむろん六部集の限定版だが奥付が欠とはいえこれは安い。造本やら紙やらかなり手間暇かかっているものなのだが、六部集も今では人気がないからなあ。谷崎の和物系って、本当に厳選素材(!)でよい造本なのだけど人気薄で、本当はいまが買い時ではないかとも思われる。印刷技術とかの面から見ても、素晴らしい本だと思うのだがなあ。

「国民之友」10〜82号までの10冊500円
演芸画報昭和7年9月号200円
映画台本「幸福号出帆」500円
「国民之友」は参考資料として。二葉亭訳の「あひゞき」やら鴎外の翻訳など。「演芸画報」は雪岱表紙絵で。それから映画台本は三島原作のもの。

作田啓一「個人」(三省堂一語の辞典)カバ帯200円
倉田喜弘「明治大正の民衆娯楽」(岩波新書)200円
ハイデッガー「言葉についての対話」(平凡社ライブラリ)カバ200円
ヒストリー・オブ・アイディアズ「美と科学のインターフェイス」(平凡社)カバ300円
ヒストリー・オブ・アイディアズ「宇宙論全史」(平凡社)カバ300円
ヒストリー・オブ・アイディアズ「存在の連鎖」(平凡社)カバ300円
ヒストリー・オブ・アイディアズ「歴史の中の数学」(平凡社)カバ300円
ヒストリー・オブ・アイディアズ「天の音楽・地の音楽」(平凡社)カバ300円
これらはお勉強用。ヒストリー・オブ・アイディアズはポツポツと集めているが、300円ならば買い。500円だったら買わなかった。
そうして、今回の注文品。

井筒月翁「維新侠艶録」(万里閣書房)昭和4年1月10日6版凾欠5000円
「維新侠艶録」である。この本、聞くところによると外装にカバーと凾と2種類あるらしい。装幀は寺尾作次郎だが、木版多色刷の口絵は小村雪岱。作品に出てくるお辰。口絵はピンピンの状態。本作自体は中公文庫になっているけれども、もちろん口絵にために人気のある本なのである。で、もう1点注文していた本はハズレた。夢想兵衛「映画説明の研究 一名、活動弁士講義録」(朝陽社)再版凾付5000円というもの。これ、国会図書館にもなく、当時の弁士のありようを知るために是非欲しかったのだが、まあ仕方ない。
ということで、久々にかなりの大枚をはたいてしまった。貧乏書生にはつらい日々が始まる。