漁書日誌 3.0

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平成24年度神田古本まつり特選古書即売展

とうとう今年もこの日を迎えました。が、今年は古書露店の青展一日前に古書会館の即売展、翌日から青展+すずらん通りというスケジュール。残念ながら明日は三島由紀夫文学館での催しに参加するために神保町には行けず、なおかつ日曜日は雨という天気予報。というわけで、今日は気合いを入れて10時開場の50分前に会場前に列ぶ。15人目であった。

9時半を過ぎた頃から人が増え始め50名近くの行列。そして開場。お昼に収穫物を取り置きしてもらって喫茶店、昼食などしてから再度出撃し、16時頃にお会計。大半はあきつの棚であったが、その他にもあれこれとあった。


矢野龍渓経国美談 前篇」(報知新聞社明治17年3月14日3版500円
黒岩涙香訳述「訂正 何者」(金松堂)明治25年10月13日落丁あり900円
尾崎紅葉「袖時雨」(駸々堂明治29年11月26日再版痛ムレ1200円
畔柳都太郎「文談花談」(春陽堂明治40年7月15日印700円
イプセン鴎外訳「幽霊」(金葉堂)明治44年12月17日書込500円
まずは明治ものから。「経国美談」は重版の端本だが元版だし一応資料として。裏見返しに「矢野君」と書き込みのある写真が貼付されていた。鶏卵紙の写真。それから涙香「何者」は落丁があるが、この値段ならば後でコピーで補えばいいや、と。鴎外が主人公のモデルである紅葉の「袖時雨」はちゃんと木版口絵もついている。それから面白いのが「幽霊」で、書き込みというのがセリフの訂正と演出メモ。上演時の台本用推敲ではないかと思われる。不思議なのが、奥付に「校了」印があること。どういうことなのだろう。改訳本のための鴎外の推敲……まさか。お次は大正期のもの。


秋田雨雀・仲木貞一「恋の哀史 須磨子の一生」(日本評論社出版部)大正8年1月31日再版背欠凾激痛300円
室生犀星「古き毒草園」(隆文館)大正10年2月15日凾欠痛300円
大泉黒石「闇を行く人」(教文社)大正10年10月5日凾欠700円
加藤まさを「合歓の揺籃」(内田老鶴圃)大正11年1月25日6版凾欠ムレ400円
野崎左文「私の見た明治文壇」(春陽堂昭和2年5月15日凾欠900円
「須磨子の一生」は探求書であったので嬉しい。表紙の日本髪の須磨子肖像は印刷ではなく写真貼付。須磨子の評伝と須磨子論に加え、序文を伊原青々園吉井勇長谷川時雨、森律子が執筆。伊原宛遺書の写真なども口絵にある。そして坂本紅蓮洞、正宗白鳥上司小剣、上山浦路ほかが追悼文を寄せている。凾はかなり痛んでいるがパラ巻けばなんとかなるだろう。
「古き毒草園」も欲しいがなかなか手が出なかった本。表紙の羽二重が剥がれてしまってるがこの値段ならば御の字だ。「合歓の揺籃」はアート紙に刷って貼付された多色挿絵のほかにもカット多数。それから「闇を行く人」は、雁垂れというのか、クロス装。奥付には全2冊とある…これは田中貢太郎「春宵綺語」と二冊でひとつの凾に入っているというもの。で、次は主に昭和もの。



佐藤春夫「我が一九二二年」(新潮社)大正12年2月18日カバ欠600円
川端康成「浅草紅団」(先進社)昭和5年12月5日背半分欠凾欠1500円
谷崎潤一郎春琴抄」(創元社昭和8年12月10日少痛帙欠300円
庄野潤三「愛撫」(新潮社)昭和28年12月20日カバ帯背褪色400円
浅野晃「天と海」(翼書院)昭和40年4月30日カバ凾毛筆献呈署名400円
由良君美「椿説泰西浪曼派文学談義」(青土社)初版帯ビニカバ献呈署名300円
ガダマー他「芸術の終焉・芸術の未来」(勁草書房)カバ帯300円
草月シネマテーク「ドナルド・リチイ氏の映像個展」パンフ100円
安いな。「浅草紅団」これよりもっと酷い状態のものを過去にこの三倍以上の価格で買ったことがある(既に売却)。「春琴抄」も復刻ではないし背もちょっと痛みがあるけれどもボロボロではないのにこの値段。あとはどうでもいいけれども、由良君美の署名は初めて見た。献呈先は滝田文彦。しかしまあこれでかなりの金欠である。明日行けないのは残念だが行けるようであったらもう暮らせないほど金欠になってしまうし、これで良かったのかもしれない。嗚呼。