趣味展である。古書会館には9時40分過ぎくらいに到着。
少し前までは入り口から並ぶ行列は古書会館の駐車スペースというか郵便局方面に伸びていたのだけども、なぜかここのところは逆方面に伸びている。逆方面だと明大通りに伸びて行列が店の前を塞ぐ感じになるのでこちらじゃない方がいいと思うのだが、これ、客が勝手にこちら側に列を作るのか指示されてやっているのか。
そんなことはどうでもいいが、開場10分前くらいに階下の入口前に吹き溜まり、そして開場。扶桑書房の棚へ。どうも今回はこれといったものがない。内田百閒の本が結構出ており、「旅順入港式」などコンディションが悪くても格安なものなどを見かけた。永田耕衣書き込み雑誌一括とか、そういえば朝イチにはあったアカギ叢書たぶん20冊くらいの束一括とかすぐになくなっていたな。あの分厚い「泣菫詩集」凾付も久々に見たが、逡巡の末に戻してしまった。
一度所用で抜けてから、古書仲間とのお茶に向かい合流。その後、あれこれとおしゃべりをしていたら、16時を過ぎてしまう。ということで再度会場へ。一冊、気になった本が値札がなかったので、帳場で出品店さんを呼んでもらい価格を確認したり。
結局、今回購入したのは以下。
高浜虚子「漱石氏と私」(阿蘭陀書房)大正7年6月28日4版函欠500円
伊藤白蓮「几帳のかげ」(玄文社)大正9年12月5日改訂8版函300円
内田百閒「百鬼園随筆」(三笠書房)昭和8年10月25日特製版函1000円
「漱石氏と私」は後で気づいたが、冒頭に貼付してある漱石揮毫の短冊紙片は欠だった。「百鬼園随筆」はお手頃価格だったら欲しいなと思っていたもの。芹沢銈介・秋朱之介による装幀。重量感のある粗目綿の表紙がいい。
日本読書新聞編「私の読書遍歴」(黎明書房)昭和27年12月25日再版帯300円
「文藝」昭和20年5・6月合併号500円
台本・楽譜「ヒロシマのオルフェ」ロシア語訳400円
「文藝」は三島掲載のため。「ヒロシマのオルフェ」は大江健三郎台本、芥川也寸志作曲のオペラ。昭和42年にNHK放送のためにこのタイトルになったもので、この台本自体は80年代のものか。楽譜自体は日本語歌詞に合わせて作曲してあり日本語をローマ字で歌詞表記。リブレットはロシア語。なぜロシア語なのか、向こうで上演されているのか、謎。表紙は英語表記、発行所記載無し。日本で出たものだと思う。
中井英夫「幻想博物館」(平凡社)昭和47年1月12日初版函300円
中井英夫「悪夢の骨牌」(平凡社)昭和48年12月5日初版函帯300円
中井英夫「人外境通信」(平凡社)昭和51年10月22日初版函帯300円
中井英夫「真珠母の匣」(平凡社)昭和53年9月17日初版函帯300円
中井英夫の「とらんぷ譚」全4冊である。中井英夫は正直良い読者ではない。そしてこれらの本も90年代には2〜3000円くらいであったろうか。署名本もたくさん流通している。今回買ったのは、もちろん激安だからというのもあるが、これらの本は本文に紫や緑の罫線で囲まれていて、学生時代初めて手に取った時に2色刷を知らなかった私にとって印象的な本であったからというのが大きい。
庄司浅水「本の文化史」(雪華社)昭和38年4月20日限定120夫婦函200円
光文社翻訳出版部編「古典新訳の発見」(光文社古典新訳文庫別冊)カバ帯150円
庄司浅水の本は別に集めているわけではないけれど、これは総革装天金、表紙の部分だけバックスキンという造りで、装幀は武井武雄で、かわいい装幀。ただ惜しいことに前見返しに紙魚による喰痕がある。そして値札がない。安かったら買うかなと、出品店のご主人に聞いたら200円とのことで喜んだ。古典新訳文庫の方は、非売品とあるけれども、このシリーズが創刊したときに配布したものなのだろうか。
ということで、中井英夫の本が重い。
以下は最近買った新刊書。
「百年の孤独」は大学入学してすぐに新宿の紀伊國屋で買った。その時は青と白の新潮世界の文学だったか、そういうシリーズの1冊であった。その後、新装改訳された単行本を古書でケチケチ探していたのだが、とうとう文庫になったので即購入。
忘れていたが、6月末に扶桑書房目録で注文した本が届いた。
関川左木夫「本の美しさを求めて」(昭和出版)昭和54年2月15日限定80部特装函外函4000円
普及本は持っているしそれで十分ではあるのだけど、まあ総革装というので買ってみたというもの。総革装天金で銅版画口絵、布張夫婦函にダンボール外函というよくある造り。表紙や背表紙の金箔押しそれから天金もだが、なんだろうか赤っぽい金で、本物の金箔ではないのかな。箔について勉強不足である。本文用紙も普及本と変えているが、ロストンカラーというこれも多い写真図版のためだろうか重い紙で本自体はずっしり。山羊革で見返しはマーブル紙。中島かほる装幀。章扉が朱色で印刷。シンプルな装幀は好感が持てるが 版画なんかいらないんで、図版をカラーにして欲しかった。記番の横に小さく刊行者本と記入してあった。