漁書日誌 3.0

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冬の趣味展

趣味展初日。いつものように、9時40分頃古書会館に到着すると、会館前に列んでいるはずの行列が全く見えない。あれれ、もしかして期日を勘違いしていたかと一瞬思ったのだが、寒いので早めにドアを開けられたようで中に行列していたのであった。それでも、今日はいつもよりはちょと出足が少ないように思われた。
開場、一斉にスタート。扶桑棚、今日はとにかく雑誌が多かったように思われる。ふと気づくと正午過ぎ。取捨選択し、残った本を帳場に預け、注文品の確認。当たっていたので、一緒に預かって貰い友人らと昼食に出る。昼食後、田村など少し見てから、会場隣の郵便局で先日の扶桑書房速報で注文した本の代金など振り込み、再度会場へ。ザッと見てから会計。しかし使いすぎだ。

泉鏡花「続風流線」(春陽堂明治38年8月18日初版カバと口絵欠1500円
橋本平八「純粋彫刻論」(昭森社昭和17年6月20日発行凾欠1500円
関川左木夫「本の美しさを求めて」(昭和出版)凾帯献呈署名800円
サルトル「嘔吐」(人文書院)改訳新装版カバ帯500円
「純粋彫刻論」が某書店の目録注文品で当たったもの。目録には「毛筆署名入」とあったが、これは遺稿集であってあり得ない。橋本平八は、北園克衛の兄で、この遺稿集は編集・装幀を北園克衛が手がけたもの。昨年だったか、世田谷美術館で展覧会があってそこで初めて知ったのであった。唯一の著書「純粋彫刻論」は最近復刻版が出たのだが、今回は復刻版定価の三分の一の価格で元版が出ていたのでこれはと注文。「続風流線」は既に重版口絵欠を持っているものの、今回初版を手にしてみて気づいたのは表紙が厚いこと。表紙の用紙が初版は少し厚い。重版はもっとぺらぺらだ。口絵が魅力なのはわかるが、それがためにかなり高価なものになってしまうくらいならば、前からいっているように口絵欠の程度のいい重版が欲しいところである、というかそういうものしか買ってないし買えないなあ。そしてお次は雑誌。

「新小説」明治34年8月口絵欠500円
「序曲」(昭23・1)第1輯500円
三島掲載「文芸文化」4冊揃1500円
今日は「主婦の友」「文章倶楽部」「文章世界」に加えて明治期の「新小説」もドッとあったので、「新小説」と明治期の「文章世界」を棚からゴソリと束で引き抜いて1冊1冊吟味、500〜1000円で口絵欠。結局この柳浪、水蔭、鏡花掲載のこの号のみ購入。「序曲」は1号で廃刊となった河出書房の雑誌で、復刻版も出ている。既に持ってはいるが、これより状態悪くて5倍くらい高く買っていたので思わず。三島が編集委員に加わっていた雑誌である。「文芸文化」は「世々に残さん」や「夜の車」など掲載号4冊一括であった。そして戦後の。

「新生」創刊号(昭20・11)500円
「あいだ」105号200円
「新生」は御存知敗戦後一番最初に出た文学雑誌。2号は既に持っていたけれど、創刊号を入手。でも800円だったら買わないな。「あいだ」は西村智弘「日本実験映像史」連載、読みたくて試しに買った。この連載早く単行本にならないかなと思っている。ついでにこの雑誌、「『方寸』同人紳士録」という連載もあって、岩切信一郎へのインタビューが掲載されている。国会図書館にも入っていなくて、閲覧に苦労するのである。
ところで、話は戻って「新生」だが、サッと見たら賀川豊彦の原稿の一部に不自然な空白を発見。占領軍の民間教育情報局CIEにより削除命令出てしかもうっかり文章削ったとわかるように出しちゃった例、かしらん。当てずっぽうだが。

ウムいやまあしかし、お金を使いすぎでこのままでは来月以降、きつそうだなあと思っているのは、今週、扶桑目録でも注文したし、ほかにネットでもあれこれ買ってしまっているからであった。

谷崎潤一郎「恐怖時代」(天祐社)大正9年2月18日初版凾6500円
ヒース他「反逆の神話」(NTT出版)カバ帯1500円
「恐怖時代」が扶桑目録での注文品。相場は12000円くらいと思うが、ちょっと背に痛みがあってこの価格。この本の凾には、写真の無地の他に緑色の柄入りの地の凾がある。それから後者は、ネット古書店で見つけて注文したもの。昨年秋に出てちょっと読みたくて気になっていたのである。「反〜」とか環境保護とかオルタナ〜とかというカウンターカルチャー的「反逆」がいかに消費文化となりおおせたかというのを追っかけた本。
そして買ったものはまだある。オークションである。


上山草人「素顔のハリウッド」(実業之日本社昭和5年7月5日初版凾極美6000円
橘高広「映画劇と演劇」(内田老鶴圃)大正11年10月25日凾欠800円
井出英雅「無職渡世」(伝統と現代社)695円
「素顔のハリウッド」は出品者の写真を見てもこれは状態がいいなというのはわかったけれども、届いてみたら(恐らく)元パラ付の極状態の良い本であった。十年以上前にサイン入りブロマイド付というのを買い、それが凾欠だったのでもう一冊凾付本を買い中を入れ替えて今に至っていたが、凾がうっすら焼けている他は当時のままではないかと思われるほど。凾の背の題箋もピンピンで、これで今まで持っていたやつは売却して購入金額を少しでも回収しなければ…というところ。あとの二冊は読みたくて購入。「無職渡世」(と書いて「ぶしょくとせい」と読む)は、元版が昭和37年刊行でこれは新装版。佐藤春夫の序文が著者を「インテリやくざ文士」と書いているが、ある渡世人の明治から震災を挟んで終戦直後の占領軍MPとのやり取りまで、あれこれ描かれた自叙伝がかなり面白そうで前々から安く欲しかったのである。
まーしかし、いまから来月頭までは職場の書類処理仕事が山盛りであって本など読む暇もない修羅場だが、来月後半から再来月には論文を書かなければならないけれども合間に読んでみたいものである。

「素顔のハリウッド」の凾。機械凾で、底面のステープルが錆びておらず光っている。といっても3箇所中1箇所のみだが。これ、空気に触れず酸化しかなったものか。当時のものみたいだといった所以である。