漁書日誌 3.0

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窓に蝙蝠

窓展、初日。
今日は家を出るのが遅くなり、古書会館到着は9時50分過ぎ。いつもより客が多い印象で、最後尾は古書会館の入口を出て道路にまで達していた。しかしまあ暖かくなった。そして10時開場。まあ最後尾に近い方だし、期待せずゆっくりあきつの棚に向かう。40分くらいみただろうか。武田仰天子や村上浪六、前田曙山、菊池幽芳なんかの菊版並装本が7〜800円くらいでズラリとあったので抱え、早々に帳場に預けてからゆっくり会場を回る。その時は全く気づいていなかった。かわほり堂である。
かわほり堂の棚に来てみると、なにやらいつもと様子が異なる。明治大正期の本が、どれを取っても、安い。これ今まで3000円くらいではないのというのが500円とかになっており、300円、500円、800円均一的な印象。さすがに痛んでいる本が多かったが、それでも明治期の本がバカ安のような感じで、あきつ棚よりも俄然掘り出し場になっていた。ウハウハいいながら細かく見て行く。荷風、谷崎、成瀬無極、ピエール・ルイスの原書などが目についた。
途中、昼食に抜けて帰って来てみたら、リバース分かまたあれこれとさきほど見かけなかった本がある。しかし棚がスカスカ。かなり売れたのであろう。そしてまあ、最後取り置き分を出してもらって吟味の上、購入。

十返舎一九「増補訂正 東海道中膝栗毛」(文事堂)明治19年3月再版背補修300円
黒岩涙香訳「非小説」(扶桑堂)明治32年5月11日5版貸本500円

小栗風葉「鬘下地」(春陽堂明治34年9月4日初版痛汚500円
土井晩翠「暁鐘」(有千閣書店)明治37年6月1日4版300円

前田曙山「にごり水」(春陽堂明治32年10月13日初版美口絵欠700円
前田曙山「茶碗酒」(春陽堂明治36年1月1日初版口絵半分欠印500円

泉鏡花「鏡花叢書」(博文館)明治44年3月23日初版凾欠疲800円
竹久夢二「夢二画集 夏の巻」(洛陽堂)明治43年4月19日初版カバ欠印800円
上田敏「みをつくし」(文友館)明治35年3月12日再版裸美500円
尾崎紅葉「東西短慮之刃」(春陽堂明治35年1月1日初版800円

太陽臨時増刊「奠都三十年」(明治31年4月28日)600円
谷崎潤一郎文章読本」(中央公論社昭和9年11月5日初版カバ300円

永井荷風「雨瀟瀟」(春陽堂大正11年7月30日再版凾欠800円
谷崎潤一郎武州公秘話」(中央公論社昭和10年10月15日初版凾300円
谷崎潤一郎幇間 他二篇」(創元社)昭和21年1月30日初版300円
松岡謙「漱石の印税帖」(朝日新聞社)昭和30年8月5日300円
しかし買ったなあ。8割がかわほり堂の棚での収穫。涙香のは貸本札が表2に貼付されていた。「鬘下地」は嬉しいところ、というのも表紙はボロだが竹内桂舟による木版口絵は綺麗に残っているからだ。巻末に「破金扇」という詩が附録になっている。「晩鐘」は何故かあきつの棚に3冊あり初版は900円だったのでケチって重版を。「にごり水」はパラが巻いてあって口絵欠ではあるけれども表紙周りはピンピンのコンディション。「茶碗酒」はコロタイプ?の口絵が半分欠になっているが、表紙は木版と写真印刷とが重ねてある凝ったもの。「みをつくし」は初版を持っているのだが、束の厚さが三分の二くらいに薄くなっている。紙質か。これもいまよく見ると、面白い製本をしている。これもやたら状態がいい。しかしまあ「夢二画集」が800円というのは安いな。

これは、涙香の本「非小説」の表紙裏に貼付されていた貸本票。「非小説」自体の初版は明治25年8月23日だが、この本は上記したように明治32年の5版。貸本票には明治32年4月15日の記載がある。というか、その4月に開業したのかしら。十日で一期、一期で3銭5厘の貸料。定価は37銭(奥付に定価記載がない。というか当時は各小売りで値引きなどもしていたから実質的な価格はよくわからないが、奥付裏の刊行目録に記載の価格を記した)であるから、約10分の1の賃料。

しかし朱筆で、「此ノ本ハヲモシクナイカラカリルナヨ」などと落書きされている。これで汚損になって、当時落書きした者は賠償金が取られたのかしら。