漁書日誌 3.0

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趣味展フィーバー

趣味展。いやはや本当に今日ほど朝寝坊して趣味展開場に遅れたのを後悔した日はない。まあぐったりしていたから仕方がなかったにせよ、今日の趣味展のフィーバーぶりは青展というか一人展のような感じであった。扶桑書房の棚がそれこそ(ワタクシ的には)ノっていて、追加の本も良品が混じっていたりして久々に古書展にて一万円以上の買い物をしてしまった。開場から見た人はさぞや収穫があったのではあるまいか。段ボール数箱とか買っている人もいる。
まずは明治ものから。


小杉天外「蛇いちご」(春陽堂明治32年4月21日初版口絵欠1500円
村上浪六「当世五人男」(青木嵩山堂)明治29年12月15日3版口絵欠袋付1000円
虚心亭主人「妾薄命」(新著百種11)明治23年11月裏表紙欠400円
「すばる」(明治44年1月号)痛汚1000円
「女学世界 増刊 マダム振り」(明治43年1月15日)痛500円
浪六は袋付だったので参考用に購入。しかし袋を取ってみたら口絵欠であった。新著百種は裏表紙欠だがコンディション良くてこれなら文句はない。あとで国会にある復刻版から奥付コピーして挟んでおこう。「すばる」は谷崎潤一郎の「信西」初出、谷崎が初めて原稿料貰った作品である。今日は雑誌ももっとあった。明治末から大正にかけての新小説、文章倶楽部、帝国文学に太陽あたり、いいところは既になかったが、話を聞くとすごかったようだ。
次は主に大正期のもの。

十一谷義三郎「あの道この道」(創元社昭和4年5月25日初版凾1500円
佐藤春夫「田園の憂鬱」(新潮社)大正10年10月25日5版カバ痛800円
坂ノ上言夫「拷問史」(坂本書店)大正15年8月20日凾欠800円
警察監獄学会編纂「探偵学」(松華堂)大正4年10月22日3版裸400円
ダヌンチオ「廃都」(アカギ叢書)大正3年7月20日初版200円
吉井勇「河原蓬」(春陽堂大正9年8月15日初版凾欠800円
十一屋はこないだこれの凾欠を同じような値段で買ったばかりであったのだが。今日はアカギ叢書やらエッセンス叢書、タカギ叢書だったかアカギ叢書のまがい物みたいなものまでけっこう出ていた。しかし一番面白いのは「探偵学」で、大正4年時点で指紋捜査法やら犯罪の各種やら誰何のやり口等々面白いことが書いてある(国会図書館にはない)。
そして次に戦後。ここいらは半分ほかの店の棚。

永井荷風ふらんす物語」(ほるぷ復刻)500円
永井荷風吾妻橋」(中央公論社昭和32年11月10日初版凾400円
相磯凌霜監修「永井荷風」(角川写真文庫)昭和31年2月15日初版カバ200円
「文学」(04年11+12月号)200円
種村季弘編「泉鏡花集成1」(ちくま文庫)カバ帯褪200円
種村季弘編「泉鏡花集成2」(ちくま文庫)カバ帯褪200円
そうして、今回ワタクシ的に最大の目玉。

東季彦編「浅間:東文彦遺稿集」(私家版)昭和19年7月20日痛補修痕図書館除籍本4500円
三島由紀夫学習院文芸部での先輩、東文彦の遺稿集「浅間」、これである。遺族が札幌で刊行したもの。写真のように表紙まわりには補修があり、真ん中に「除籍」印、中には「成城学園」の印。……成城学園ってもしかして……そして除籍本を貰い受けた人らしき栗山某の名前が筆で書いてある。これ栗山理一の子息ではないのか。栗山家旧蔵なのか。中身は、それこそ生前の小説から後輩らとやり取りした文学的な手紙(三島らとやり取りした)、他に印象記やら年譜やらが付されており、ご存じのように三島由紀夫も平岡公威名義で追悼文を寄稿している。いやはや、こんな本が会場に転がっているとは。おそらくこの痛み具合では市場に出てもそうは高くないとは思うけれども、逆に言えばこんな風に痛みがあって安く出るなんてことはまずないので、ワタクシ的にはヒットであった。場を漁るのはこれだからやめられない面白さがある。