漁書日誌 3.0

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窓展五反田展ダブル

出遅れた上に、電車が信号確認云々とかで遅延しており、結局古書会館に到着したのは既に開場した10時3分頃。あきつ棚の山のような人だかりのなかに混じって棚を見ていく。10分以内ならば、まだまだアレアレというようなものが混ざっている。
一度お昼頃に友人と会場を脱けて、五反田へ向かう。五反田も初日なのであり、こちらには注文品があった。元浪曼劇場劇団員であった和久田誠男氏による三島演劇直筆ノート5000円である。しかしハズレ。出品されていた店のご主人に聞いてみると、劇団日誌のようなものではなく、三島没後にまとめたリストだったという。まあそれならと、少し胸をなで下ろしたことであった。その後また神保町に戻って、再度漁り、会計。以下のものを購入したのであった。まずは明治ものから。

「探偵小説 十文字」(春陽堂明治26年4月14日4版落丁300円
虚心亭主人「妾薄命」(吉岡書店:新著百種11)明治23年11月奥付欠印300円
与謝野晶子舞姫」(如山堂書店)明治39年1月1日初版天金裸口絵欠300円
舞姫」は惜しくも中沢弘光による多色刷木版口絵「京の清水」が欠だが、見返しはいかにもな極彩色の木版。「妾薄命」は前にも裏表紙奥付欠を買ったが、今回は奥付欠。表紙の色味が前のと異なるが、初版と重版の差なのだろうか。それから春陽堂の「探偵小説」シリーズは、ここの読者の皆さんには鏡花の「活人形」が出ているものとして知られている筈。今回の「十文字」はその「探偵小説」シリーズの第1号。出版社による「緒言」を読むと、汽車、汽船、馬車など暗いなかでも読めるよう大きめの活字にしたとの由、文庫本の起源を見るような気分である。そもそもこの作品、原著者名も翻訳者名もないのだが、アメリカの小説を翻訳(というか翻案)したものらしい。落丁が少々あるために格安だったので、参考資料として購入。雑誌「中学世界」と口絵1枚欠の「女学世界」はすべて200円。続いて大正。

久保田万太郎「わかるゝとき」(春陽堂:現代文芸叢書36)大正3年4月15日初版背痛200円
菊池寛藤十郎の恋」(新潮社)大正14年12月20日50版カバ欠500円
吉田百助「大地は微笑む(上巻)」(朝日新聞社大正14年4月16日再版背少痛600円
菊池幽芳「己が罪(後篇)」(春陽堂日本小説文庫)昭和8年8月20日帯欠200円
安いな。万太郎と菊池寛のは五反田にて。万太郎のは写真のように表紙に一部欠けがあり背中が痛んでいるのだが、読めればよいかレベルで。「藤十郎の恋」はまあ表紙のスレも少ないし500円までかなと前から思っていたもの。「大地は微笑む」は、ご存知のように「大阪朝日新聞」15000号記念懸賞当選作で、映画劇と銘打たれた小説。古家新による装幀・挿絵で、1頁大の挿絵が多数入っている。表紙は雁垂というか耳付で、表紙全体に寒冷紗を添付した装幀。下巻が無いのが惜しいが、まあこれから安く見つけたら買おう。それから昭和初期の白水社単行本。

ランボオ小林秀雄訳)「地獄の季節」(白水社昭和5年10月25日初版凾500円
十一谷義三郎「笑ふ男、笑ふ女」(白水社昭和7年3月1日初版凾900円
これも安い。両方とも、凾の背が一度取れてしまったのを補修してあるというダメージがあるが、それでも本体は綺麗だし「地獄の季節」なんか特に安い。「地獄の季節」は佐野繁次郎装幀、十一谷の方は木村荘八木版装。十一谷は以前持っていて、たまたま春寿版という限定版を入手したので金欠時に売却してしまっていたが、ようよう普及版も再度入手となった。そして戦後の本である。

杉浦明平「村の選挙」(柏林書房:ルポルタージュ日本の証言)昭和30年5月31日カバ200円
森茉莉「父の帽子」(筑摩書房)昭和33年3月15日3版凾帯美200円
手塚治虫監修「おとなの絵本・千夜一夜物語」(筑摩書房)昭和44年12月15日初版カバ凾帯美300円
湯浅篤志他編「聞書抄」(博文館新社:叢書新青年)カバ500円
雑誌「同時代演劇」復刊1号(73.6)200円
雑誌「知性」(55.8)帯200円
手塚治虫のと森茉莉のが神保町で買ったもので、あとは五反田。「ルポルタージュ日本の証言」という叢書は、「現在の会」(花田清輝安部公房、真鍋呉夫らの雑誌「現代」の集まり)が編集したもので、これはカバー絵や中の挿絵を池田竜雄が担当している。戦後アヴァンギャルドの資料として購入。それから「父の帽子」は3版だが、奥付は昭和22年と誤植されていた。「千夜一夜物語」は手塚治虫の監督した「アニメラマ」で、この本は白石かずこが文章で、オールカラーでアニメの絵を使った絵本のごとき本。「知性」は三島由紀夫の「三原色」初出だが、これは珍しい帯がついている。「三原色」は好きな作品で既にこの初出誌も持っていたが、帯は見たことがなかった。
今日は窓展会場もあきつ以外に面白い棚があり、そして五反田ももう少し予算があって手荷物が少なければもっと買っていたかも知れない。しかしこれら全部で五千円なのだからまあ安かったといえるだろう。
しかしまあ今日は、途中ザーッと雨に降られたり、そのせいか湿気ムシムシ。寝不足も相まって会計後はぐったりであった。