漁書日誌 3.0

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趣味展+神戸の古書

金曜日、趣味展初日。閉場1時間前に入場しザッとまわる。扶桑の棚は勿論よかったが、ほかに明治末から昭和にかけての「中央公論」をドサッと出している店があり、朝イチに来ていたならば欲しい号もあったのではないかと思わせた。だいたい1冊700円で、たまに薄い号は400円など。「中央公論」は大正の中頃から背表紙を印刷するようになったがそれまでは背表紙無地なので、ドサッと列んでいるとうっかり気がつかなかったりする。


中央公論」大正10年3月号400円
有島武郎著作集8輯「或女(前編)」(叢文閣)大正8年8月15日22版
有島武郎著作集9輯「或女(後編)」(叢文閣)大正8年6月20日12版、前後編揃背痛400円
藤島茂「トイレット部長」(文藝春秋)重カバ200円
石附実「近代日本の海外留学史」(中公文庫)カバ300円
江見水蔭「軍事小説 突貫」(博文館)明治34年1月16日初版3500円
夏目漱石「草合」(春陽堂明治41年9月15日初版凾欠印4800円
「トイレット部長」は確か東宝で映画になっている、昭和35年ちょっとした話題になった読み物。水蔭のは博文館の軍事小説というシリーズものかと思ったが違うようだ。これだったら「水蔭叢書」に入ってるんだよなあ。漱石のは先日届いた扶桑目録での注文品。ホントはもっと会場で「中央公論」を買いたかったのだが、これから旅に出るのに手荷物重くては…と諦める。
で、その後古書仲間と駄弁ってから新宿に向かい、深夜長距離バスで神戸へ。谷崎潤一郎研究会に参加するため。そして研究会が終わった日曜日、まず関東から殆ど出たことのないワタクシ、せっかく神戸まで来たのだからということで、出発前ネットで検索しておいた神戸元町古書店に行ってみる。

元町商店街のど真ん中にある新刊書店の二階の一隅に、四つの古書店が合同で古書スペースを持っていて、元町・古書波止場という。決して広くはないスペースにギュッと古書があるわけだが、これがポツポツ明治大正ものがある棚があって、次のようなものを購入。

徳富蘆花「不如帰」(民友社)明治41年8月25日94版カバ欠2000円
国木田独歩「運命」(左久良書房)明治40年5月13日3版カバ欠2000円
内田百輭「北溟」(小山書店)昭和12年12月20日初版背焼1000円
「不如帰」重版は前々からの探求書で、800円くらいで転がっていそうなものなのに何故か見かけず、2000円はちょっと高いかなあと思ったがせっかくだしということで購入。百間の「北溟」は安規木版装。これはめっけものだったと思う。外装欠と思われてこの価格だったのか。「百間随筆」五巻の新輯文を単行本化したものだが、安規人気でつけるところはつける本。会計後、いま当地で古書展をやっていて今日が最終日だと教えて貰い、その目録を頂いた。ひょうご大古本市というのである。これは観光などしている暇はない、と、後で赴くこととして、続いて商店街を少し進むと、お次にも古書店があった。

神戸古書倶楽部という。まあいわゆる雑本や洋書などがザッと列んでいる。ここでは単行本一冊と文庫一冊を購入。それから草臥れたので、茶店で一服。ダラダラしていたら、最終日閉場18時というのに17時を過ぎてしまう。急いで古書展会場へと向かう。徒歩で行けるというのだが、不案内な上にギリギリになりそうで焦っており、地下鉄など乗り継いで、会場であるサンボーホールに閉場15分前に到着。神戸まで来てギリギリの癖は治らずか。

どんなものだろうと思っていたが、これがまたなかなか広い会場で、高額商品などもGケースに陳列されていた。まあもともと古書文化が長くある土地だしなあ、と。三分の一も見切れずにタイムオーバー。

徳富蘆花「不如帰」(民友社)明治38年12月15日62版カバ欠500円
「文芸倶楽部」明治29年8月号1000円
結局会場で買ったのは二冊。しかも「不如帰」は先ほど買ったものよりも(背中にセロテープ痕あるが)状態がよく、悔しくて買ってしまう。あとで比べてみたが、口絵の浪子像の印刷のクッキリ具合が異なっていて別の絵のようにも見える。まあそれはよいのだが、なんと言っても嬉しかったのは「文芸倶楽部」だろう。永洗の木版口絵もついており、鏡花「三之巻」など掲載。松居松葉がゾラの「大洪水」を訳して載せているのだが、ちょうどこの雑誌の前29年7月に「文芸倶楽部」は三陸地震津波のための海嘯義捐小説号を出しているので、その流れで訳出されたのかどうか。
いやしかし、本は重い。とはいえめっけものがあったので満足しなければならぬ。しかし一等安い夜行バスにギュウギュウで来て、帰りもそうで、宿泊も一番安めのカプセルホテルにして節約したのにこれだけ買っては元も子もない。ほかに元町のモトコー商店街に三軒ほど古書店があったが閉まっていた。

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