漁書日誌 3.0

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雨の神田古本まつり・即売展

ようよう年に一度のこの日がやってきた。といってもここ数年期待度がガタ落ちで、今から7〜8年くらい前の掘り出し物も多く楽しかった往時のソレとは違ってきてしまったのかというのが正直なところである。これもいってみれば時代の推移というか、こちらが年を重ねたということなのであろう。まあそれに今年は、初日は古書会館だけで、古書会館を堪能してから外に繰り出して…ということがない。掘り出し市は明日からで、そして明日は台風なのである。
さて、そりゃあ以前であれば10時開場なら8時には行くぞなどとしていたものであったが、前述のように昨今は期待度も薄れ、まあ40分前くらいでよくね、ということで、古書会館に9時20分頃に到着。降りしきる雨のせいもあろうけれども、アタクシ20人目であった。少ない。9時半を過ぎた頃であったか、古書会館の中に通される。これではいつもの窓展やら趣味展より少ないんじゃないのか、とすら。で、ズラッと階段のところに列ぶ。どうも仕切りが悪いのか、それから何の音沙汰もなく、開場5分前になっても荷物預かりの声がしないので後ろの方からはヤジすら飛んできた。いつもなら、15分くらい前には荷物預かりをして階段と階下フロアのところでジリジリと待ち、10時ジャストで一斉スタートという具合なのである。5分ではこの行列の荷物を処理しきれず、後ろの方は列んでいたのに開場して入っていく客を横目に荷物預けをしなければならなくなる。これは容易に予想できるトラブルでヤジが出るのも無理はないだろうなあと思われた。でまあ、ズラズラと荷物預け処理が進み、10時開場。ハッキリ言って、例年と比べて覇気がない。ドキドキ感もない。なんでであろう。やはり全体のお祭り感がないからというのもあるだろうと思う(掘り出し市がない)。
でまあ、定番のあきつ棚を見てからあれこれまわる。お昼、一応取り置きして貰って近くのカフェに友人とランチしにいき、一服してから、再度会場をしばらくまわって14時頃にはフィニッシュ。で、購入したのは以下のようなもの。


吉井勇「水荘記」(東雲堂書店)大正1年10月29日初版カバ欠800円
広津柳浪「二筋道」(今古堂書店)明治38年8月30日3版カバ欠ムレ痛800円
稲岡奴之助「痣」(青木嵩山堂)明治42年5月15日初版カバ欠口絵欠
     「痣 後篇」(青木嵩山堂)明治42年6月10日初版カバ欠口絵欠2冊揃1200円
篠原嶺葉「新不如帰」(大学館)明治41年2月20日11版カバ欠裏表紙欠1000円
丘浅次郎「煩悶と自由」(大日本雄弁会)大正15年9月20日15版凾付300円
「文章倶楽部」大正15年7月号300円
鈴村和成編著「写真とフィクション」(洋泉社)300円
鈴木貞美編「大正生命主義と現代」(河出書房新社)カバ帯400円
「水荘記」は以前奥付欠を300円で買ったことがありこれは安いと交換用に。「二筋道」は前々から同じ本が3800円だったかの値札でここ一年間くらい某書店の棚に出ていたものだが今回値下げしていたので、えいと行った。「痣」は口絵がなかなかよいのだけどこの値段ではついている筈もなく。「新不如帰」は、本来は「新愛知」という新聞に連載されていた「春鶯囀」という小説を出版にあたって改題したというし、「はしがき」には、この作品のヒロインは蘆花「不如帰」の浪子と同じようなものと断言されている露骨な蘆花「不如帰」便乗本(笑)。こういうブーム本のインチキっぽい便乗本は大好きというか大変興味深い。裏表紙欠であるが今回これは一番嬉しかった収穫か。「煩悶と自由」はご存じ「進化論講話」の丘の著作で、これよりは戦後60年代に出た丘浅次郎著作集版で欲しいところだが安かったので。
昼過ぎからは雨もすっかりやんで、うっすらと日差しも射してきた。ちょっと用事があったのでこのまま地元に帰途。用事を済ませてから、地元繁華街のよく行く古書店を覗いてみると、ここのところケチケチ安くないかと探していた新書があったので購入。帰宅すると、オークションで落札した本も届いていた。「自然と自我の原風景」は定価28571円、まあ卒寿記念とかそういうアレだと思うが、こういうカネのかかった本(貼凾、布張装幀)は自費出版みたいなものだろうし、制作費は弟子達が出し合うのかしら。三橋一夫は地元の古書店にて購入。

三橋一夫「生膽盗人」(室町書房)昭和29年8月31日初版カバ帯3000円
野島秀勝「自然と自我の原風景」(南雲堂)凾美500円
源了圓「義理と人情」(中公新書)200円
吉田禎吾「日本の憑きもの」(中公新書)復刻300円
しかし寝不足でフラフラである。
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明日は山中湖文学の森三島由紀夫文学館で開催される三島文学館レイクサロンに参加予定。天気が気になるところだ(追記→ギリギリになって台風の影響で中止になったことを知る。ちゃんと申し込んでなかったのが悪いのだ)。
三島といえば、三島由紀夫生誕90年・没後45年記念プロジェクトとして「近代能楽集」がDVD発売される。別に告知書きますが、実は不肖ワタクシも付録冊子に解説を執筆させてもらっているので、よろしくです。