漁書日誌 3.0

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眠りとアフリカの印象と落下と

さて、今日は神保町のぐろりや展と五反田の遊古会の初日である。
実は、どちらにも注文を入れていた。今日は夜に芝居を見に行くので、かなりタイトなスケジュール。ということでまずは五反田から。といっても会場到着は1630頃か。まずは外を見る。中公文庫品切れ系など、結構安めで出ていたのだが、結局注文品もあることだしというので手放して、まずは……
松原一枝「大連ダンスホールの夜」(中公文庫)200円
三浦雅士「メランコリーの水脈」(福武文庫)300円
イメージフォーラム」(82.7)100円

イメージフォーラム」は、ジガ・ヴェルトフと1920年代特集。そして、二階へ。ここでモタモタ見てしまったのであとがきつくなるのだが。それはそうと、注文品は当たり。
徳田秋声「あらくれ」(新潮社)大正4年9月15日初版、凾欠3000円
裸本とはいえコンディションはピンピンだし、これは安いと思う。会場では、火野葦平「糞尿譚」元版重版凾付300円とかあれこれあったが、結局手放した。
福田恆存「幸福への手帖」(新潮社)再版カバ帯200円
吉田健一「酒に呑まれた頭」(新潮社)再版カバ300円
「シネマ71」(7号)200円
まあこのくらいなら、と、読み物用にこれらを購入。「シネマ71」は、最初どっかの同人誌かと思った。知らなかったが7号から判型もこうなって中には写真一切無し。経済的逼迫によるとの由。家に数冊所持しているが、この雑誌全冊揃うのはまだまだだなあと。そして、予想外の買い物もあった。ここ数年の探求書を見つけたのである。いや、ここ5年くらい、8000円とかそういう値段でならば二回くらい見かけたことがあったのだが、いやさすがにそれは…と見送って、もっと適価で、と、探していた本なのだ。

ヨシダヨシエ「解体劇の幕降りて——60年代前衛美術史」(造形社)初版カバ帯ビニカバ付カバ痛み2000円
これは美手帖に連載していたやつの単行本化、更にその増補版。VAN映画科学研究所のこととか、今でこそ結構詳しいインタビューなど幾つかの本で読めるが、ちょっと前まで全然情報がつかめなくて、初めてこの本を図書館で読んだとき、こんな詳しい本があったのかと驚いたものである。カバーが湿って波打っちゃってるが、本文は一切大丈夫だし、まあ2000円ならめっけものか。
しかし今日はこればかりでは終わらない。既に電話で当落を確認していた大物が神保町にあるのである。まあやっぱり、結局じっくりと五反田を見てしまっていたせいで、ハッと気づくと、既に17時40分。これはマズイとダッシュで神保町に向かうも、到底無理なので、途中で電話をして事情を話し、今から取りに行くので今日閉場後に引き取らせてもらえるよう無理をお願いし、無事購入出来たのが、これ。

高橋睦郎「眠りと犯しと落下と」(草月アートセンター)昭和40年6月1日発行、帯欠10000円
これは、いつかは…と欲しかったものである。帯がついていると高いので、こういう帯欠が欲しかった。それでもまあまあの状態でこの価格、数年前まではこんな値段では見かけなかった。こないだ田村に12000円でもう少し背が焼けちゃったのが出ていて、おおこれはと思っていたのだがとてもじゃないがその時はそんなお金はなかった。今回、まあ懐的にはかなりキツイ出費だが、まあ仕方あるまい。跋文は三島由紀夫。表紙の図柄そっくりの恰好の口絵写真が中に入っている。元々散文的な人間だからか、戦後の詩集など家の書架には数冊しかないのだが、これは新たな一冊だ・・・しかしまあかなり大きい買い物、嗚呼これから生活大丈夫かしらん。

その後、いそいそと神保町駅から都営三田線に乗り込み、巣鴨まで。巣鴨で山手線に乗り換え大塚駅下車。そう、芝居をみにきたのである。大塚の萬スタジオ。ここもかなり久しぶりだ。
演劇実験室◎万有引力公演「万有引力版アフリカの印象」原作レーモン・ルーセル
ルーセルの「アフリカの印象」の舞台化、それも万有で。これは見ないわけにはいかないと大分前に切符を予約しておいたのである。学生時代に白水社の「小説のシュルレアリスム」シリーズで一等最初に読んだのは「アフリカの印象」だった。その後すぐペヨトル工房から出ていた「ロクス・ソルス」も買って読んだが、今でも平凡社ライブラリの改訳版は安く欲しいところである。だがまあ「アフリカの印象」自体は既にルーセル自身が劇化していて、雑誌「地下演劇」のルーセル特集号とか、利光哲夫「反=演劇の回路」なんかで学生時代あれこれ想像していたものであった。
で、舞台。あくまで私感だが、もっと尖っていた気がする今から十五年位前の万有でこれをやって欲しかったなあという気がした。劇中出てくる“即ち娘”の「ワンセグが当たり前の今」とかいう台詞や妙なポップスみたいな歌がちょっとがっかり。以前は、なんというか、黒のスタイリズムみたいなものがあったのだが。また、俳優の背中にblancとかフランス語が記されているので、これは、そう、映画「怪談昇り竜」のように、背中を合わせて文章にしたりバラバラにしたりする演出があるのだろうなあなどと思っていたのだが、なかった。シタールを演奏する大ミミズは、ワンシーンだけ意味なく首に巻かれて出ただけ、気づいた観客どのくらいいたのだろう。全体的に、ルーセルも「アフリカの印象」も全く知らない観客のためにあれこれ説明する箇所があったのだが、あるいはそういうの一切いらなかったかもしれない。舞台を見ていて思い出したのだが、そうだ、萬スタジオに最後に来たのは万有の舞台であった。「飢餓術師レクイエム」という公演で、95年だったか。そして、今日はこの公演の他にもうひとつ目的があった。それは会場限定販売のJ.A.シーザーのサントラCDを購入すること。無事購入出来た。カセットテープの頃は、何本か買っていたけれど、CDの方が勿論よい。
貰ってきたチラシをいま見ていたのだが、今度「上海異人娼館」が上演されるらしい、しかも青蛾館で。青蛾館って懐かしい。ここでも音楽テープ買ったなあ。これもいかなければ。