漁書日誌 3.0

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夏の窓展

窓展初日。曇り、予報では今日は雨。お盆前の暑い盛りではあるのだが、ムシムシしているくらいでそこまで暑くないような感じもある。今日は山の日で祝日。山の日なんて祝日そもそもあったかしら。海の日は知っているけれども、いつのまにやらそれに合わせて制定されたのであろう。しかし祝日であったので電車も混んでおらず。9時40分前くらいに古書会館に到着してみるとちょうど入口のガラス自動ドアのところまで列んでいた。

荷物はまだ預かっておらず階下入口のだまりに人を入れていないとのことで、これ荷物預けだまり解放したらそれほどでもないのではないか、祝日だから混むかと思っていたのだがそこまでではないかなあという感じであった。ちょうど荷物を預けたら、だまりの最後尾あたり。5分くらい早めに開場。
あきつ書店、みはる書房、けやき書店、かわほり堂を見て行く。しかし今回特筆すべきはやはりかわほり堂であろう。前にもあったが、今回はまた久々のフィーバー状態で、凾欠だったりちょっと痛んでいるものが300〜500円くらいでドッサリと出ていた。例えば谷崎の「鮫人」は凾付並本が5冊くらい列んでいたし、荷風吾妻橋」あたりも同様であった。あれこれと漁りながら、古書仲間と行き交うとああでもないこうでもないしゃべりながら本を抜き出し吟味するのが、楽しい。
しかし窓展は、買い物カゴがないのが玉に瑕でドサリと抱えて見て回るのはなかなか大変であった。古書仲間と昼食に抜けて、お茶して一服、14時くらいい再度リバース分などあるか見て回り、15時前には会計したか。注文していた芥川龍之介羅生門」再版凾欠9000円が外れたこともあって、かなり買ってしまう。購入したのは以下の通り。

与謝野鉄幹「鉄幹子」(矢島誠進堂書店)明治34年3月15日初版挿絵欠500円
徳冨蘆花「不如帰」(民友社)明治38年10月25日60版300円
谷崎潤一郎「アヹ・マリア」(新潮社)大正12年3月15日初800円
泉鏡花「通夜物語」(春陽堂大正13年10発25日改版30版凾500円
「鉄幹子」は付箋があちこちにあって、つまり挿入されている挿画が全て切り取られているという印であった。まあ絵自体は国会のデジタルで見られるしこの安さなのだからと買ったもの。「不如帰」も2冊持っているが、これは所持本よりコンディションが良いため。

坪内逍遙「役の行者」(玄文社)大正6年5月5日初凾欠300円
宙外・抱月・青々園「風雲集」(春陽堂)明治33年4月28日500円
散文・詩集「噫東京」(交蘭社)大正12年12月12日5版落丁1000円
「風雲集」は今まで背革でなはく紙装の(改装なのか不明)しか持っていなかったので、革の状態の良いこれが500円は喜んで抱えた。「役の行者」(えんのぎょうじゃ)は、これも安く欲しかったもので、本来は凾が付いている。この表紙絵や題字など装幀をやったのは誰だろう。中の舞台図なども同じ人と思う(追記:ツイッタで鈴木三重三であると教えて頂きました)。「続日本紀」を題材にした作品だが。日本古代のものとオリエンタルなものとが混ざったような独特な世界を指し示しているような装幀。「噫東京」は、竹久夢二蕗谷虹児らの口絵も入り、吉屋信子らの詩やエッセイなどが収録されている関東大震災の鎮魂本ともいうべきもの。これも状態がよく安いが、残念なことに中身のごく一部に落丁。まあだから安いのだが。

谷崎潤一郎「潤一郎喜劇集」(春秋社)大正15年9月15日初版凾500円
秦豊吉「独逸文芸生活」(聚英閣)昭和3年1月15日初版凾400円
「潤一郎喜劇集」は、持っていなかったので嬉しい。春秋社のものだが、凾装幀が改造社の「痴人の愛」にそっくり。装幀者が同じなのか模倣なのか。

前田晁「明治大正の文学人」(砂子屋書房昭和17年4月15日凾500円
柳瀬正夢画集」(真理社)昭和23年10月30日900円
「文章世界」鴻雁号現代文章之研究(明治44年10月)口絵欠500円
「明治大正の文学人」は知らなかった本だが、「文章世界」編集のことやら花袋のことやらなかなか興味深い回想が入っていて面白そうである。「柳瀬正夢画集」は、以前元版を持っていたが売却してしまったので、まあ仙花紙の後版だがと。

吉野作造「閑談の閑談」(書物展望社昭和8年6月20日限定260部記番凾欠500円
室生犀星「蜜のあはれ」(新潮社)昭和34年10月5日初凾300円
「閑談の閑談」は、背角革装、天金、限定260部の特装版。平は仙台平を使っている。文学エッセイも収録されており、これで500円ならば持っておきたい造本だと購入。

越智治雄近代文学成立期の研究」(岩波書店)凾美200円
鈴村和成「テロの文学史」(太田出版)カバ帯500円
三田文学」(昭和36年1月)100円
平山蘆江「蘆江怪談集」(ウェッジ文庫)カバ帯200円
湯浅泰雄「日本人の宗教意識」(講談社学術文庫)カバ400円
バルザック「ゴプセック/毬打つ猫の店」(岩波文庫)カバ200円
越智治雄は200円なら。ウェッジ文庫はそろそろ見かけなくなってきたので確保。
いやしかし、買いも買ったりだ。帰り、トートバッグが重くて仕方が無い。
実は昨日、東急渋谷店の古本市初日で、夕方向かって見てきたのであるが、わざわざそのためだけに渋谷に行ったのにただの一冊も買うものがなく、些か購買欲がたまっていたというのもある。買うものはなかったけれども、今年も中村書店の棚はすごくて、「孔雀船」やら「黒衣聖母」2冊やら鏡花からなにから、数万円の本がゾロゾロ普通に棚にあって、あんな高価なものを棚に刺して万引きとかされたらえらい損ではないかとかいらぬ心配をしたり。
ここのところ貧乏暇無しで、これという買い物もしていなかったが、といってもちょっと買いすぎでまずかったかなとも思う。
そういえば、今回の窓展、帳場で会計して包んで貰った紙袋が、1985年のものであった。32年前のデッドストックというわけだ。