漁書日誌 3.0

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涼しい七月の趣味展

小雨が降ったりやんだり、そして熱帯夜から一転、十度以上気温が下がってTシャツでは寒いという金曜日、朝イチで古書会館に向かい開場15分前に到着。やはり趣味展は人気がある。客がなだれ込むようにして開場。今回は注文品も当たり、前回と同じくかなりの出費をしてしまう。

林富士馬「草稿詩集 千歳の杖」(まほろば発行所)昭和19年7月20日焼け3500円
目録注文品。表紙には「帝都 まほろば臨時増刊」とある。三島由紀夫序文。最初期の三島の序文であろう。実際手に取るのは初めて。一応上製本だが、これ何部くらい作られたのか。初期三島の詩作活動などのよい資料だ。


泉鏡花「三枚続」(春陽堂明治35年1月1日初版口絵欠印汚痛表紙少欠3000円
石橋思案・尾崎紅葉「乙女心・風雅娘」(吉岡書店:新著百種3)明治22年6月30日初版痛表紙少欠1200円
徳田秋声「黴」(新潮社)明治45年5月23日5版凾欠400円
お次は明治もの。「三枚続」は初版だが口絵をむしり取ったような痕跡。この値段であるし適価か。表紙の「此ぬし」と書いてある右上のところに名前を書けと鏡花名義の但し書きがあるのが面白い。それからお次も表紙が一部欠損した新著百種。これもこの値段なら仕方がないが、前書きを読むと思案のは出したくなかったのに紅葉に持って行かれだからこんな恥ずかしい作が本になってしまったと開き直ったような言いぐさで面白い。後の「文芸倶楽部」編集長。見開きの挿絵があるが、後半の紅葉「風雅娘」の方は中扉が桂舟による多色木版。それから「黴」は安くて嬉しい。

ジップ/森茉莉訳「マドゥモァゼル・ルウルウ」(薔薇十字社)昭和48年2月15日初版凾帯1500円
磯村春子「今の女」復刻版カバ昭和45年2月500円
「ルウルウ」はようやく適価で入手。ここ数年、やけに篦棒な相場がついてしまって誰がそんな価格で買うのだろうと思っていた。ちょっと前までは帯付3000円くらいだったのに、どこかの店がひねっていきなりその何倍もの値段で「日本の古本屋」に掲載、するとどの古書店もそれを参考にしたのか右ならえな価格設定になり、結果、検索して価格をつけるということをしていない店では従来の相場で売っているので、ネット相場では誰も買わないという幽霊相場の典型だと思っている。その後新装復刊され、それでもまだ篦棒な価格であったがさすがに最近は全く売れないのかどこも価格を下げてきているよう…。今回のは目録注文品。
それから「今の女」というのは大正2年7月15日文明堂発行の本を復刻したものだが、復刻奥付がなく、「昭和45年2月覆刻(非売品)」とだけある。ネットで調べるとどうも雄山閣から昭和59年と61年に「資料・明治女性誌」として出版したものらしいが、それには解説がついているようなので雄山閣版とも違う。明治末期の女性を巡るあれやこれやの本でかなり興味を惹かれる。

バウムガルテン「美学」(玉川大学出版部)カバ1000円
山崎正和編「近代の芸術論」(中公バックス世界の名著)ビニカバ月報300円
リューティー「昔話の本質」(ちくま学芸文庫)カバ250円
三田文学」昭和43年3,7,12各300円、42年11月200円
バウムガルテンは古書展会場で出くわすとは、と。しかも千円は嬉しい。それから世界の名著のこれも安く欲しかったところでコリングウッドパノフスキーなんかを収録。「三田文学」はそれぞれ福田恆存石原慎太郎安部公房へのインタビュー掲載。昭和42年11月のには「本質論的前衛演劇論」という座談会収録。いやはやしかし、これから夏のリブロや渋谷東急やら新宿もあるというのにかなりの…。
その後、渋谷に出て武智鉄二特集をやっているシネマヴェーラ渋谷に行き「戦後残酷物語」と「白昼の惨殺」を観る。後者は川口小枝出演作。