漁書日誌 3.0

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杉並展

杉並古書展の初日である。
午後、家を出て電車で向かう途中、今まで一度も下車したことのない駅に下車。最寄り駅から数駅の所である。ちょいと入り用の本をネット古書で注文して、直接出向くのも可というので取りに来たのである。線路沿いにある店なので、数年前からその存在には気づいていたのだが。で、ネット注文した本と、一応ザーッと店内を見て新書を一冊購入。

唐木順三「新版 現代史への試み」(筑摩叢書)重版ビニカバ700円
今井幸彦「通信社」(中公新書)200円
その後、高円寺駅に17時12分に到着。湿度も高いが、そこまで不快ではないような気候。ザーッと会場を40分ばかり見て回る。それで買ったのが、上記写真の以下のもの。
ランデス「新訂 独逸浪曼派」(冨山房百科文庫昭和14年2月15日発行、少破カバー付300円
清水袈裟雄編集「さゝやき」(寶文館)凾欠背欠昭和4年6月10日220版(初版は大正15年2月10日)300円
後者は、上田高等女学校三年生、17歳の清水澄子が鉄道自殺した後に、遺族が私家版で遺稿集を出し、それを出版社が改めて上梓したもの。全く知らなかったが、ネットで検索したらあれこれと出てきた。かなりの文学少女だったようで、日記やらエッセイのようなものから収録されている。カラーの著者遺影のほか、愛用文具やら、家族の写真、著者の揮毫、遺書の印影復刻などもついており、装幀も黒絹に銀箔捺という清楚で洒落た感じ。しかし220版というのがスゴイ。まだまだ知らない本ばかりだなあ、と。岸上大作の「意思表示」みたいなもの、などといってはダメだろうな。まあ…。背欠は本としてかなり痛いが、まあそのうち凾付を安く欲しいものである。
で、今回の注文品。

ワイニンゲル(片山正雄訳)「男女ト天才」(大日本図書)明治39年7月20日6版カバー付2000円
カバーがあるなんて今まで知らなかった。今回のは6版だが、実は同年1月25日の再版、同年3月5日の4版とこれで三冊目の所持になる。こんなものそんなに持ってて阿呆か、というようなものだ。御存知のように、オットー・ヴァイニンガーの「性と性格」の訳本(片山孤村による抄訳&原著者紹介)だが、元はといえば、かれこれ十年くらい前の青展にて1500円で買ったのが最初である。当時、明治期に谷崎が読んでいたものとして探していたので嬉しかった。それが昨年の春、神保町の古書展にて600円で会場に転がっていたので思わず買ってしまい、そしてまた今回、というわけ。無論、後に人文会というところから改題再出版された版、アルスから新訳で出た版、改造文庫版、それから戦後の、河出の性科学全集の版、村松書店から出た完訳版も持っている(ないのは、アルスから出た二分冊の普及版のみか)。重ね重ね阿呆といえる。何もヴァイニンガーにそこまで入れ込んでいるわけではないのだが…しかしここまで来たら、いけるとこまでやったれ(安ければ)ということで、カバーという目録の記載にやられてしまった。
それから会場には、何故か、三重三の例の文庫判のシリーズがズラッと300円均一で出ていたが拾わず。また、西條八十とか水谷まさるとかの文庫判の詩集が各1500円で凾付のがあったが、あれは買っておけばよかったか。八十のは「縮刷夢二画集」と似たようなイチゴ柄の木版装ので、水谷まさるのは「宝石の夢」だったかも。この金欠時でなかったら買っていたのに、明日には売れてしまうだろうナア、と。
で、お次は、昨日までに届いた今週のネット注文古書。

杉山康彦「ことばの芸術」(大修館書店)カバ帯500円
「簡易日米会話」(朝日新聞社)昭和20年11月5日発行525円
前者はともかく、後者。好例の占領期日米会話手帖シリーズである。奥付に、初版100000部、とある。朝日新聞社発行だし、けっこう売れたのだろうなあ。だが、どうもこれ、こんな製本なのだろうか。どうも表紙がとれちゃったくさい(背中がちょうど背表紙外した感じになっているのだ)。しかしよくもまあ、この金欠統制令施行中だというのに…この冊子一冊で、はなまるうどんなら、かけうどん小が五杯も食べられるではないか。この冊子、定価1円と記されているが、これで当時の闇市マーケットではどんなものが食えたのだろうか、当時国鉄新宿駅東口にあった、新宿・尾津組のマーケットで売っていたという、進駐軍残飯ごたまぜ煮の栄養スープだったら、五杯も食べられないだろうなあ。