漁書日誌 3.0

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コロナ禍趣味展

趣味展である。前回も記したけれども、コロナウイルスによるコロナ禍は全世界に及び特にイタリアが酷い状況との由、連日のニュースで知るところである。それはそうだが、身の回りに罹患者を聞かないからか、こちらはいたって呑気ではある。しかしたしかにアルコール消毒は見かけたらやるようにしているけれども、マスクも買い置きがあるわけではない。

古書会館に9時半頃には到着したいと9時頃には駅前に行ったのだが、駅前のドラッグストアには長蛇の列。あれがマスクやトイレットペーパー買いの行列かと思ったものである。そんな光景を横目に、古書会館へ向かう。

今回、大阪に引っ越される古書仲間の方から春陽堂の「明治大正文学全集」全巻予約者特典の本棚を譲り受けることになり、しかも本日持参してくれるとのことで古書会館で受け取る手筈となっていた。で、趣味展の行列中に受取り、持参した袋に入れて持ちそのまま列び、帳場へ荷物預ける時に一緒に預かってもらう。

で、趣味展。中年から老人の芋洗い状態の趣味展である。もちろんマスク着用。帳場前に待機してあと5分で開場という時に、開場。せまいこの場所にギュウギュウ詰めで人間がいる状態を続けるのがあやういと判断したのであろう。そそくさと扶桑書房の棚へ。今日は小型本がズラリ出るという話を時前に聞いていたが、だいたいが詩歌の本。

注文していた鴎外『青年』(籾山書店)初版凾欠背傷4000円はハズレ。これはお手頃だけど、今回は外れてくれてよかったかもしれない。というのも、昨日、扶桑書房の目録速報が来て注文したばかりであったから。コロナで先行き不透明な時期、非常勤の職では明日何があるかわからない。

で、友人等とお茶に出てから、戻ってきて一通り見て、買い物を吟味してお会計。一等高くても800円。けっこう抑えたけれども、しかしそれでもかなり散財。

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「明治文庫」5編(博文館)明治26年12月25日口絵欠400円

田山花袋「ふるさと」(新声社)明治33年3月1日3版背痛400円

柳原白蓮「几帳のかけ」(玄文社)大正8年4月5日総革再版裸800円

「岡田式静坐法」(実業之日本社)大正5年7月10日68版改訂増補凾欠300円

「明治文庫」は山田美妙の巻。短篇小説明治文庫といえども、なかには韻文やらエッセイ(?)も入っていてちょっと面白い。花袋のは何てこともない小冊子。「几帳のかけ」は御存知白蓮の作品集で戯曲も収録。バックスキンものは粉が問題。改訂版は同じ革装でも装幀を一新して出される。

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若山牧水「別離」(東雲堂書店)明治43年5月15日再版裸少ムレ800円

小山内薫「霧積」(籾山書店:現代文芸叢書)明治45年6月13日初版400円

水谷まさる「少女詩の作り方」(交蘭社)大正11年9月20日初版裸200円

佐藤是康訳「ダヌンチオ集」(中央出版社:世界文学叢書)昭和3年12月20日再版凾800円

「別離」は嬉しい。前に扶桑目録で重版裸と重版カバー付が出ており後者を注文したら重版途中で改装したバージョンで、こちらの角背上製本が欲しかったのである。それからなんと言っても「ダヌンチオ集」。本の存在自体知らなかった。中身はほぼ「犠牲」で、「フランチェスカ・ダ・リミン」も併録。著者解説もあるけれども英訳からの重訳だろうか。「犠牲」は新潮社のドイツ訳からの重訳だったか、あれを読み、その後、映画公開記念で出た「罪なき者」も読んだ。

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荒木巍「雷鳴」(版画荘:版画荘文庫)昭和12年12月20日初200円

薄田泣菫「猫の微笑」(創元社昭和2年5月25日再版凾美800円

藤原審爾「みんなが見ている前で」(コバルト新書)昭和30年9月20日20版カバ200円

稲垣足穂全集13」(ユリイカ)昭和34年4月5日凾欠痛400円

「雷鳴」は表紙全体にパラフィン紙がくっついてしまっているのでこの価格。「猫の微笑」は泣菫の名越国三郎装幀本のなかでは見かけない方。

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「帝国劇場絵本筋書」大正10年10月、200円

「文芸文化」昭和18年3月、200円

中村歌右衛門展」図録(世田谷文学館)500円

歌右衛門展、行こうと思っているけれどまだ行けてないのである。それが古書展会場で先に図録だけ買ってしまうとは。「文芸文化」は三島由紀夫掲載号で。それから帝劇の筋書きだが、これは小野清子「本朝王昭君」上演時のもの。小野清子とは北島春石の奥さんの名前。偽作詐欺で逮捕された後の倉田啓明が北島のところに世話になっており、奥さん名義で萬朝の懸賞に出したら一等になった作品。

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「批評」2号、3号、各100円

「南北」(1967.9)150円

「シナリオ」(1971.10)200円

これら雑誌は、三島由紀夫寺山修司関連で。「批評」は持っているが今回のが状態良いので。

それから、趣味展から本棚を持って帰宅後、自宅に届いていた扶桑目録注文品である。

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鈴木善太郎「幻想」(萬朶書房)大正7年1月1日初版凾欠6500円

これは入手できて嬉しい。短篇集で、並装、川端龍子装幀。鈴木善太郎は、これで「幻想」も「暗示」も「人間」も入手できた。

 

で、本棚である。

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楔で止めてあるだけの極めてシンプルな作り。「明治大正文学全集」のプレートがなければなんだこれはというところだが、90年前のそのままのようで、補修などもされていないようである。これにズッシリと明治大正文学全集全巻が入るのか、と。