漁書日誌 3.0

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5月の暑い趣味展

趣味展である。久しぶり。今日は全国的に暑く、5月だというのに東京では最高気温30度。体感的にはそこまではという感じでもあったが、異様であるというほかない。9時45分くらいに到着、10時開場。

まず扶桑書房の棚へ。なんだか今日はやたら里見トンの著作がズラリと出ていた。ふと棚の最上段を見ると「薄氷遺稿」があるので手に取った。梶田半古の妻で作家の北田薄氷(うすらい)に遺稿集で、半古が私家版で出したもの。春陽堂が作成したようだ。ちょっとぼろいがこの値段ならばと抱える。

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梶田半古編纂「薄氷遺稿」(私家版)明治34年11月5日痛4000円

「校訂 一葉全集」(博文館)明治43年3月5日28版400円

「一葉全集」は既に重版を持っているのだが、それは初版から続く表紙木版装幀バージョン。重版の途中から今日買ったような感じで意匠は同じだが木版装幀ではなくなる。

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佐藤惣之助「市井鬼」(京文社)大正11年11月10日凾欠500円

南江二郎「詩集 異端者の恋」(民衆文業社)大正10年9月1日裸痛200円

長田幹彦全集別冊・歌謡随筆」(非凡閣)昭和11年11月15日凾欠200円

「市井鬼」は既に凾付を所持しているが、安かったので悔しく買ってしまった。「異端者の恋」というのは正体不明の本だが、詩集とあるも詩劇の形式で綴られているもの。表紙にビアズレーを使っているし、200円ならばと購入。幹彦全集も、凾がついていればなあというのもあるが、まあ随筆読めればよいかと。

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池水瑠璃之助「紅塵秘抄」(東京堂)大正10年9月15日凾美800円

北原白秋「白秋小唄集」(アルス)大正8年9月5日再版凾美500円

「紅塵秘抄」ここ数回の古書展で安く見かけて、凾欠だったり凾背欠だったり、買うかどうかと思っていたが、やはりあれを買わなくて正解だった。これは前の持ち主が表紙に手製のカバーを付けていたからか本体は極美で献呈署名入。著者は池長孟である。自費出版のようだが、奥付の発行者は長谷川巳之吉。そしてもう1冊の白秋のもすでに持っているが、状態がよいので。こちらは恩地孝四郞ではなく、資生堂意匠部の矢部季による装幀。

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佐藤春夫訳「ぽるとがるぶみ」(人文書院)昭和25年12月20日重版帯美200円

アン・リネル(松尾邦之助訳)「赤いスフィンクス」(長嶋書房)昭和31年9月1日初版カバ印400円

長谷川紘平「本と校正」(中公新書)200円

嬉しいのはやはりアン・リネル唯一の邦訳小説「赤いスフィンクス」。マックス・シュティルナーとかの流れで以前から気になっていた。見返しに奢灞都館の蔵書印が捺してあった。旧生田蔵書、こんなところにも流れていたのか。

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「文芸文化」(昭和18年3月)300円

「婦人文庫」(昭和23年5月)300円

それぞれ三島由紀夫が掲載されているため。500円だったら買わなかったと思う。

お昼、取り置き分を帳場に預けて昼食に外出。食べてから田村書店を覗いて、小宮山書店の角を曲がってふと見ると、ガレージセールのところに「三島由紀夫関連書3冊1000円」と出ていた。日本語の本はほとんど持っているものであったが、翻訳書が何冊か紛れており、ちょっと珍しいだろうと購入してみる。

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Giuseppe Fino Mishima ecrivain et guerrier, Edition de la Maisnic,Paris,1983

洪二培訳「不道徳教育講座」微文出版社、ソウル、1970年12月15日カバ凾

劉慕沙訳「命売ります」三三書坊、台北、民国73年12月3版

ジュゼッペ・フィーノのは三島論。元々イタリアで刊行されたものの仏訳本。後者2つはハングル訳、中国語訳である。韓国のやつ、「不道徳教育講座」の翻訳でこの装幀というのは時代をうかがわせる。「命売ります」はオリジナルの挿絵がところどころに入っている。

そういえば、今週届いた本。

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森律子「妾の自白」(日本評論社大正8年5月15日初版凾欠5000円

これは先週行けなかった愛書会古書展の目録注文品。木版装ではないとはいえ。夢二装なのでどうかなと思っていたのだが、無事入手。これより前に出ている著者の西洋旅行記は、全文が文語体で読みづらかったので身構えていたが、この本は一般的な言文一致体。楽しく読めそうだ。