漁書日誌 3.0

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まど展!

まど展初日。
まあいつものように閉場一時間前に会場に到着したが、今回の印象は、なんというか、プチ青展的な感じであった。古書に関しては、あくまでワタクシが蒐集しているような文学書関係では、ネットオークションでもこういう状態が続いているような。売れない、というか、買い控えが多い、というか・・・。会場では、黒っぽいものが多いのに、それらが閉場時間間際でも何とも普段よりもお得な価格帯で列んでいる、ということです。今時の世界的経済不況がこんなところにも波及しているのか、ということを感じさせるものがありました。特に、あきつとかわほりの棚。金があれば倍の数量を買っていたと思います。
でまあ、今回購入したのは、以下。本当はこの金欠統制令中、二千円以内に抑えたかったのだが。

水上瀧太郎「大阪の宿」(友善堂)大正15年9月15日初版凾付1800円
中村正直訳「西国立志編」(偉業館)明治22年6月2日再版印痛300円
いやもう「西国立志編」さ、欲しい時になくって2000円も出して注文してさ、入手したら翌週800円で見つけて更に翌週に今度は300円かよ、と。まあボロボロだけれども。こんなの買う必要もないのに、何故か悔しくて購入してしまうこのマインド、自分でも大阿呆とは思うけれどもおさえられないこれは何だろう。古書マニア特有のものか。ちなみにこれは大阪版とでもいえばよいのか。表紙に「大阪 偉業館発行」とあるのだが、裏表紙には「岡本書店」とロゴマークがあり、奥付には翻刻発行者として岡本仙助、発売者として岡本宇野とある。はて、偉業館と岡本書店の関係は如何に。でも中身は、扉と内扉以外はこないだのものと紙型が同じような。
それと「大阪の宿」。奇しくも大阪つながり(?)だが、これは欲しかったんですよ。凾が。小村雪岱装幀。もちろん既に凾欠初版は持っていて、これと対になる単行本「大阪」(こちらも雪岱装)も凾付きで持っていて、これでようやく書架にペアでならべて収められるというものです。まあちょっと凾に小傷がありますけど、1800円ですしね。でもこれ少し前なら、凾欠の値段じゃないですか。水上瀧太郎は蒐めているという程ではないけれど何とはなしに揃えている感じです。やっぱり早稲田より三田系というのもありますけれど、「月光集」とか木版装幀が美しいですよね。「貝殻追放」なんかもちょっと拾い読みするのによいものです。特に大正期の短篇集とか装幀も瀟洒で中身も、すごく気に入っている程ではないですが安定していて、それでもまあやはりこの大阪ものが代表作になるのでしょうか。この他にも、泉鏡花「愛府」初版凾欠1500円とか谷崎潤一郎小さな王国」元版重版凾欠1500円とか、ちょっと前ならもう少し、プラス千円くらいの感じものもそういう感じで出ていて、一度手に取ったんですけど、やはり棚に戻してしまいました。

里見とん「潮風」(新潮社中篇小説叢書)大正11年9月10日9版300円
村松梢風「魔術の女王」(新潮社)昭和32年12月10日初版カバ400円
いやー「潮風」なんて、おそらくこないだ評伝が出て刺激されたからかなあというところもなきにしもあらずな感じですが、でも重版とはいえピンピンの状態でこの値段ならねえと。ホントはこれは同じ叢書での潤一郎とか春夫ならなあとも思うんですけど。
それと後者は、まあ御存知とは思いますが、松旭斎天勝の一代記のような小説です。ほかにも石川雅章「松旭斎天勝」(桃源社)なんて本がありますが、あれも今回くらいの値段だったら。まあ石川は天勝と直に接してますしねえ。そういえば十年くらい前でしょうか、「魔術の女王一代記」とかいう本が地方出版社?から出ており、かつて購入して一読したのですが、あれは何を元本にしているのか、自伝なのか他者の著作なのかよくわかりませんでした。天勝も、あと絵葉書とかプログラムくらいは、安いなら入手したいものです。
いやしかし、これらの他にも、例えばですね、青柳有美「有美臭」重版1800円とか、末広鉄腸「二十三年未来記」重版1800円とか(でもこれは後版なのかも)、それからもう棚の下に放ってある本で目に付いたのは、博文館の「露伴叢書」凾欠上巻のみ200円とか、鴎外訳「即興詩人」菊判の元版上巻のみ200円とか、そういうのがゴロゴロしていたりして、なに、今日はまど展じゃなくて青展なのか、などという錯覚すら起きました。まあねえ、あれこれ欠陥があるわけでそういう値段だというのも納得なのですが、しかしねえ、これ、数年前、否、昨年までなら200円ではなく800円とかだったと思うしねえ。おそらく午前中はもっとよい感じのものもあったのだろうなあという気もします。しかし、やっぱり手放してしまう、ケチる、買い控えておく。いやあ、篠山紀信なんか買っている暇などなかった。今日あと三千円あればもっと買っていましたねえ、傷ものとか欠陥もの。
ということで、明日は杉並展、明後日は新宿展、来週は池袋リブロ古書まつり、と、この二八の二月、この不景気真っ最中に続きますが、まー、注文入れちゃったリブロ以外はとても電車賃かけていけない、かも。
冒頭で、不況の影響で買い控えが多いかとかいうようなこといい、ネットオークションにもそれはあるようだと書きましたが、例えばこれなんかも先週落札したものですが、これも前だったら信じられないような価格だとは思います。

長谷川伸「母親人形」(新小説社)昭和9年3月28日初版凾痛毛筆署名入2050円
無論、装幀は小村雪岱で、凾、見返し、扉が木版。表紙は布装なんですが、芝居の一場面が多色木版画で表紙上方に貼付してあるという装幀。

これは表紙の分(「母親人形」の二幕目ですね)。表紙、裏表紙、面見返し、裏見返しと全て場面が異なるのです。凝っているし、よい感じのデザインですよね。これ確かに、凾背のタイトル著者名が半分水濡れで剥がれちゃった感じなのですが、それでもかなりお安く落札出来ました。ううんやはり、これもこの不況ゆえなのか。