漁書日誌 3.0

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五反田渋谷神保町

長年使ってるスマホがアプリも使ってないのにすぐにバッテリ切れになる。不便極まりない。じゃあと言って、機種変も内蔵電池交換もできない。だましだましうまく使うしかないのである。先週末、バタバタしている間に古書展と映画を見に行った。なんとかなるかなと複数の仕事の同時進行を進めていたのだが、40代も終わりに近づくと大したことをしていなくても体力の減りが目まぐるしく、まさにバランス棒を持っての綱渡り状態である。

そんなことはどうでもいいのだが、金曜日は仕事で必要なコピーを取りに図書館に行き、閉場間際の古書展会場に滑り込む。五反田遊古会である。雨の中、閉場10分を切っていたのでガレージは見ずに2階の会場へ行きザーッと見て回る。で、結局1冊。

シェーアバルト「小遊星物語」(桃源社)昭和41年5月15日カバ函500円

どこでも転がっているようなものだろうけれども、今やっている原稿仕事の資料として。本当ならば平凡社ライブラリー版で欲しいところである。この本、実は未読で、前々から緑色の函に入った「世界異端の文学」版ではないバージョンで欲しいなと安く探していたのだがそのままになってしまっていたという次第。「さかしま」「大伽藍」などは桃源社のこのシリーズでないバージョンで買って読み、このシリーズで買って読んだのはレニエの「生きている過去」くらいか。今では岩波文庫で出ているが90年代は「世界異端の文学」版しかなかった(いや、大正時代にでた荷風の序文付き堀口大学訳の本があるがそれを手に入れたのは「世界異端の文学」版を読み終えた後である…と書いて訂正、それは「燃え上がる青春」の勘違い、「生きている過去」は同じく新潮社で背中がレモン色の布で平がグレーの叢書で出ていたと思う)。それというのも、やはり巻数の入った選集ものは書架に単体であると「端本」のような感じがあってなんとなく避けていたのである。今見るとなかなか凝っていてこれはこれでいいなあという気もする。置き場所に逼迫している現在、なるべくなら単行本でなく文庫版でという感じなのだが、この装幀でこの本というのが大事なものもある。未だ「異端」という言葉が今のように軽くない時代の本として、これはこれで持っておきたい。

で、会場を後にして一路渋谷へ向かう。

ユーロスペースで上映中の「REVOLUTION+1」(監督足立正生)が19時上映というのが今日がラストだったからである(以降は午前中)。

基本的には報道で知られる犯人の生い立ちをベースにしている。父親が自殺後、母親が統一教会の熱心な信者になり貧乏どん底生活、兄は病気で片目が失明、自分は貧困で大学進学ならず、妹は親戚の家で進学、就職。人生を台無しにされた「個人的恨み」(と主人公のセリフが劇中にある)での暗殺の話。だいたい金閣寺放火犯でも、三菱銀行北畠支店の銀行強盗でも、映画化されると、犯行直前に女を抱いて近々大それたことするから俺の名前覚えとけ的な定番シーンがあるものだが、これにもそれっぽいシーンがあった。隣人の女に部屋に誘われるが話すのみだし、犯行直前に妹を呼び出し、いかにも迷惑だという妹に「俺を見ろ」と叫ぶシーンがある。で、犯行後、妹が報道を知って私も立ち上がるわ的なシーンになってオヨヨと思った。犯人の親族ということでおそらく今の職場にもいられないような状況だろうに、手のひら返したような態度の変わりようが違和感しかなかった。まああれで終わったら希望も何もない実録物になってしまうだろうからということなんだろうけども。それから逮捕後のイメージシーンで、主人公の山上ならぬ川上が地面にゴロンと横たわるシーンがあるのだが、これは同じ足立正生監督で唐十郎が主演した「犯された白衣」(これも実際の事件の映画化ではなかったか)でも犯行後にゴロンするシーンがあったと思う。ああこれはあれねと思ったことであった。

で、翌日、所用で扶桑書房に立ち寄ってから和洋会古書展に赴く。ザッと見て、2冊のみ購入。

佐藤春夫「詩文半世紀」(読売新聞社)昭和38年9月20日函300円

桑原武雄「第二芸術」(講談社学術文庫)カバ200円

「軍歌 支那征伐」(民友社)明治28年1月3日ラベル

「世界唱歌 上巻」(文友館)明治33年12月4日傷

西宮藤朝「人及び芸術家としての正岡子規」(新潮社)大正7年6月6日カバ欠

前の2冊が和洋会会場で購入したもので、後ろ3冊は扶桑書房の3冊100円。佐藤春夫のはまあ適当な伝記として持っておくかと。ただこの本、奥付表記が変で、普通に印刷発行の日付が記載されているものの奥付のタイトルの下に小さく「(二刷)」と印刷してある。2刷の日付がわからない。戦後なので出版法的には奥付がどうあろうと問題はないのだけれども。そして3冊100円のは、全て某大学図書館の除籍本。奥付に購入時の古書価?が鉛筆で記載してあって合計するとピッタリ今回の300倍の値段ですごいなこれはと思ったことである。