漁書日誌 3.0

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年内最後の趣味展

趣味展である。今週に入ってからめっきりと寒くなった。水曜日には木枯らし吹きすさび、マフラーやコートがマストになった。木曜日は一日中、曇ったりポツポツきたりの空模様であったが、夜半からザーザーと降り始め、今朝も雨。やたら寒い。それが関係あるのかないのかはしらぬが、電車が8分くらい遅れており、会場到着も遅れてしまった。9時50分過ぎに到着。ほぼ最後尾グループに近い感じでの10時開場。

もちろん扶桑書房の棚である。しかしいつもと比べると、寒い雨の朝ということもあってか、棚に張り付いている人間が若干少ないような感じもあった。今日は、何故か花袋の本があちこちにあり、それから雑誌「歌舞伎」もドッサリあった。花袋は、無論相場からすれば安いのだがやはりこの棚全体から見ればまあという値付けで、花袋を買っても仕方なく棚に戻し、置き場所も金もないことから抜き出した本をあれこれと吟味。途中、他の書店の棚に行ってみると、雑誌が積まれた下の方に明治期の「文芸倶楽部」が数冊あったのを抜き出して確保。口絵は全て無いが、まあまあいいところがあったのでカゴへ。
お昼に抜けて、昼食は友人とマル香に行ってうどんを食べ、喫茶店で一服してから13時過ぎに戻り、再度扶桑の棚を見る。リバースもある。また、先ほどの「文芸倶楽部」のあった棚に行ってみると、「地上」が揃いであって1冊300円。買うかとカゴへ。その後会場全体を回って、あれこれと吟味選択。お会計。


日夏耿之介「黒衣聖母」(アルス)大正10年6月15日凾欠背痛2800円
堀口大学訳「現代仏蘭西短篇集 聖母の曲芸師」(至上社)大正14年8月20日3版凾欠300円
柳原白蓮「白蓮自選歌集」(大鐙閣)大正10年8月20日凾欠400円
手紙雑誌社編「若き人々の書ける多情多恨の手紙」(岡村書店)大正5年11月2日9版裸400円
岡見護郎「新聞の話」(誠文堂十銭文庫)昭和5年8月30日300円
日夏はまあ安いからということで。背の上下に痛みがあるだけでなく、全体的に装幀の布が劣化しているが、題箋は無事。これと森律子の「わらはの旅」凾付3000円というのと迷って、日夏にしてしまった。森のはこの次に出た本が欲しいのだが。日夏の詩集などはまあ買うこともないだろうし、代表的なのがコンディション良くないゆえに安価で出るというのもなかなかあることではないだろうし1冊くらいならと。それから大学のは、好きな作品であるマルセル・シュオッブの「モネルの言葉」が入っていたため。南柯書局の全集版で読んでいたが、大学訳は初めて接する。白蓮のはなかなか凝った装幀で、背革天金、平は木版なのだがコーネル部分のバラ模様はかなり強く空押ししてありレリーフ的になっている。「多情多恨の手紙」は、最初小型本であったこともあり、「金色夜叉の歌」とか一連のものの一つかと思ったら、そうではなく、「手紙雑誌」に投稿された読者の手紙文のようであった。初版は大正2年で、その頃のいろんな人の種々のシチュエーションにあわせた手紙文がちょっと面白く、またいわゆる小品文のようでもあって興味深い。あとで大正時代の新聞を見ていたら、この本の広告があって、竹久夢二装幀らしい。カバーの絵だけなのか、この表紙の燕がそうなのか。重版から変わってしまった可能性もあるなあ。

島田清次郎「地上 第一部地に潜むもの」(新潮社)大正12年6月5日205版300円
島田清次郎「地上 第二部地に叛くもの」(新潮社)大正11年1月15日80版300円
島田清次郎「地上 第三部静かなる暴風」(新潮社)大正10年5月20日23版300円
島田清次郎「地上 第四部燃ゆる大地」(新潮社)大正11年1月15日21版300円
「地上」は、実はバラで揃えたことがあって、ワンセットそしてコンディションの良し悪しで第一部の重版を何度か買い換えている。今回のは背中が痛んでいるものがあるが、まあ予備にもうワンセットあってもよいかと。場所喰う上に予備ってなんだよ、という感じもあるが揃いで1200円というのはないよ。そしてお次は雑誌である。

「文芸倶楽部」明治29年4月口絵木版欠500円
「文芸倶楽部」明治29年6月口絵木版欠500円
「文芸倶楽部」明治29年12月口絵木版欠500円
文芸倶楽部定期増刊「勝いくさ」口絵木版欠明治37年7月1000円
「文芸倶楽部」4冊、いずれも木版口絵欠。状態はまあまあ。最初のは、一葉「たけくらべ」が再録された号。あとは鏡花(または畠芋之助名義)だったり柳浪の「変目伝」初出だったりするしなあということで買ってみたもの。500円はまあギリだが1000円のはちょっと高かったかなと。「勝いくさ」はむろん日露戦争のことで、小説本文には下段に万国旗、上段に日章旗旭日旗が入っている。こういう画面構成で読む日露戦小説は違うだろうなあと。

これは上記再録「たけくらべ」本文中に挿入されている挿絵のひとつで美登利である。挿絵はたぶん初出の「文学界」にはなかったろうし、再録時に入ったものだろうなあ。天下の「たけくらべ」だし、ちょっと文献調べていけばその辺も既に詳しく研究されているに違いない。

「書物展望」昭和10年4月号1000円
「書物展望」昭和10年10月号1000円
これらは、「特集・装釘を語る」と「装画研究号」ということで、ちょっと高いのでさんざん逡巡の挙げ句買ったもの。既に図書館でコピーして持っているし読んでいるのだが、やっぱり原本でということでケチケチと迷っていたのであった。「書物展望」は扶桑棚にほかにもあったし、ほかにも、月の輪書林の棚にチラホラあった(前の五反田遊古会の時には1冊200円でドサドサあった)。

「開花新聞」明治17年4月27日付200円
これはよくわからないが、自由民権運動時代の小新聞のひとつとして参考のために購入。「改進党新聞」の前身。半紙二つ折り5枚、10頁の新聞。挿絵入りの続きものやら広告屋等も既に入っている。これは月の輪書林の棚より。月の輪さんの棚は、今日は明治から戦後までごちゃ混ぜな感じでいつもより以上に漁るのが面白かった。
日夏と文芸倶楽部がちょっと出費大きかったか。本当はこの他にもあれこれと悩ましい物件があったのだが、致し方ない。それでもかなりの出費になってしまい、先日古書を売り払ってようよう生活費を捻出したのにどうするのだという状況。夕方、古書会館を出ると雨は止んでいたが、ドロドロの寝不足でぐったり。