漁書日誌 3.0

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神田古本まつり(2)

神田古本まつり2日目。本日土曜日は、すずらん通りでのブックフェスがある。これがなんと言っても2つめの目玉。各種イベントはあれこれるようだが、すずらん通り(三省堂の裏の通りで東京堂のある通り)にずらりと各種出版社がワゴンを出しセールをするというものである。これが格安であり、昨年もちょっといいものを安く買えた記憶がある。
で、やはりこういうのはなんと言っても初動が勝負。朝が苦手なワタクシは、たいてい今までは夕方行って閉店間際のやけっぱちな値引きを期待して買っていたが、今回はもう朝イチで行く、と、9時半過ぎくらいには神保町に到着。

まずは10時より靖国通り沿いなどの古書店ワゴンが開店。いくつかの書店は、そんなことにかまわずにドシドシと売っていたが、10時になるまで風呂敷などを敷いて10時でパッと取って開店という店もあった。田村書店などはそれで、ここは講談社学術、講談社文芸、ちくま学芸、岩波現代文庫などの高めの文庫がかなり安めで列んでいて昨日から目を付けていた。で、ここで千円分文庫を購入。となりの小宮山のワゴンは、ここ最近の本が半額とかそれ以下とかで列んでいて、そこからも1冊。

橿原辰郎「『痴人の愛』を歩く」(白水社)カバ1000円
バフチンドストエフスキー詩学」(ちくま学芸文庫)カバ400円
五百旗頭真「占領期」(講談社学術文庫)カバ帯400円
漱石・子規往復書簡集」(岩波文庫)カバ200円
痴人の愛」を歩く、はちょうど買おうと思っていたところなのでラッキーであった。バフチンは今更だが、状態悪くなくこれは安い方。
で、10時半よりすずらん通りのが開始というので、まずはザッとまわってどこにどの出版社のブースがあるのかを確認。といっても、既に混雑しており、例えば藤原書店などワゴンに段ボール板を重ねて10時半ジャストに外すようだが、ブース前は黒山の人だかりで、皆待機している。青弓社などは逆に既に販売していたり、ここも厳密に10時半スタートというわけでもないようだ。そして10時半、スタート。

ザーッと流していくが、藤原書店東大出版会慶應出版会と見て来て、羽鳥書店。そう、昨年は高山宏「新人文感覚1 風神の袋」を5000円で買ったのであったが、是非今年はその続編も半額で欲しかった。と見ると、既に来て会計している人の手に「雷神の撥」が。あるなと聞いてみると「もうないかも」と。ウググと思うも「もう1冊あった筈」と出して来てくれた。今回はこの本は2冊のみだそう。ラス1というわけである。購入。
それから三茶書房のところまで来て折り返し。平凡社工作舎など。で、国書刊行会のブース。ここがまたすごい。大型本とそれ以外のワゴンと二つあり、それ以外は2千円と千円という大ざっぱな値付け。ここで、興味はあるが買ってなかったバルベー・ドールヴィイの小説を買う。この他、新装版として数年前に出たロッシの「普遍の鍵」やら「夢の操縦法」などあってこれも欲しかったが、逡巡。昨年出た鏡花の「山海評判記」も7000円。迷うが、取り敢えずほかを見てからと先に進む。今度はこれも期待していた森話社のブース。あー、それもあれも既に買って持っているよというのが出ている(といっても、それも古書で買っているけれども)、すべて千円か。ウームと迷うも、これはというのは全て持っているしなあとというところで、1冊。

高山宏「新人文感覚2 雷神の撥」(羽鳥書店)カバ帯6000円
バルベー・ドールヴィイ「亡びざるもの」(国書刊行会)凾帯1000円
永井善久「〈志賀直哉〉の軌跡」(森話社)カバ帯1000円
志賀論は、副題の「メディアにおける作家表象」というのが前から気になっていたのであるが、なかなか古書でも見かけなかった。これでまあ、ほぼ予算ピッタリで、まあほかにもあれこれとあったけれども、諦めるほかないよなあと思っていた。
で、ザーッと流していたら、白水社のブース。生田耕作訳「書痴談義」の特装本と澁澤龍彦訳「城の中のイギリス人」特装本が出ていた。確か、「書痴談義」特装は、昨年もここに出ていて買っている人がいた。版元在庫のデッドストックだろう。しかし「城の中のイギリス人」は大きいな。ここで価格の提示があり、売り子の方とのあれこれのやり取りがあって、購入していまった。

マンディアルグ澁澤龍彦訳)「城の中のイギリス人」(白水社)特装限定200部
デッドストックであろう。ピンピンの極美というか開けた形跡もない。買うときに中身を確認したが、無記番ではなくちゃんと記番のあるものであった。米倉斉加年の額装用サイン記番入絵が別に1葉ついて、大きな帙は中が天鵞絨で出来た作り。ピンクのゴート皮による総革装天金、本文2色刷。冒頭に澁澤と米倉の署名入。昭和50年代の限定本ブームの流れでつくられたものであろう。
しかしまあ、大きい。手に抱えてそのまま喫茶店に入り、一休み。11時過ぎには予算というか完全オーバーで機能停止状態になってしまった。今晩は古書仲間との飲み会があるというのにどうしようと頭を抱えつつ、これだけ買っておきながら、早速生活費のために古書を売却しなけれならないなあと一服するのであった。
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帰宅してみると、1冊の本が届いていた。

「西遊」の近代

「西遊」の近代

尾高修也先生の新著である。ご恵送いただきました。近代文学の作家たちが憧憬した西洋または西洋体験を、鴎外、荷風、藤村や茂吉などそれぞれの場合から論じていくもの。感謝です。