漁書日誌 3.0

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東急渋谷代大古本市

朝方からザーッと降っており、天気予報では午後もという話であったが、午後は全くそんなそぶりのない空が拡がり、いつも通りの30度オーバー。昨日13日は東急渋谷大古本市の初日である。さすがに朝イチはしないけれども初日に行かなけりゃダメでしょと、夕方ノソノソと渋谷に向かう。先に電話確認したところによると、目録で3点注文したなかで1点のみ当選だという。
谷東急東横店、西館。銀座線のホームから出てそのまま直通でエスカレーターに乗って会場へ向かう。一年ぶり。ここ、おそらくちゃんと見て回ると2時間かかっても見終わらないだろう。その時、19時過ぎ。それでも端っこからザーッと見ていく。お、この本は相場の5分の1だと思うような本があっても別段今必要な本ではないとスルー。文庫なども細かく見るも、今回はそうでもないなあなどと見ていく。会場半ばくらいまで来て、カウンターへ向かう。まずは、注文品である谷崎潤一郎「幼少時代」献呈署名入を出してもらって確認。献呈って、澤田卓爾宛だったのか。申し分のない献呈署名本。ほか、注文していた川島幸希「初版本伝説」(人魚書房)限定50部25000円と安部公房写真展図録2500円はハズレ。前者についてはハナから当たるわけはないと思っていたが。ついでに、中村書店が出品していた、三島由紀夫とつき合いのあった某編集者の日記6万円というのを見せてもらおうと思ったが、注文が入っていた由。棚の方には、川島勝宛三島献呈署名入りの「愛の疾走」があった。まあ推して知るべしだろう。しかし無論そんな金はワタクシにはないが。そういう値段で注文が来るものなのだなあと思ったことであった。
しかしなかなか会場は広い。そして店によっては、最近の数百円の雑本に紛れて5万円だの3万円だのの古書が混じっているといろいろと錯覚する。高額古書をこんなところにおいといて万引きされちゃったらどうするのだろう。
とりわけ夏は常に既にデフォルト金欠であるから、あまり浪費するわけにもいかぬし、ちょっと安い文庫本などあったのでほかにそれを買ったりして気がつくともう21時の閉場。

谷崎潤一郎「幼少時代」(文藝春秋新社)昭和32年3月31日夫婦凾毛筆献呈署名入6300円
谷崎の親戚である英文学者の澤田卓爾宛。この本、面白いのは後ろ見返しのところに別の値札が入っていて、「97・5・31」と日付が入ったその値札に38000円の値が記してある。18年で6倍以上も値が下がっている。今じゃ確かに38000円でこの本誰も買わないわなあ。8000円だったらワタクシも注文しなかったと思う。とにかく古書全体が値べりしていきているのは確かだが、谷崎も明治大正期の一部以外はこんなものと思う。署名本といってもやはり戦後ものだし「著者」署名だしというのもあるかもしれない。六部集なんかも値減りという意味では酷いものだ。あれ、清方あたりの木版装幀洋装本だったらまた違っていたと思う。結局、時流の流行廃りの影響も少なからずあるのだが、それ以上に、作品評価と「オブジェ」たる古書評価は全く異なるのである。

野島秀勝「浪曼的滑走」(新潮社)カバ帯500円
鈴木均「ジャーナリスト」(三一新書)カバ500円
久生十蘭久生十蘭ジュラネスク」(河出文庫)250円
久生十蘭「十蘭万華鏡」(河出文庫)200円
文学座公演パンフ「熱帯樹」半券付500円
これらは会場を回って買ったもの。野島のは保田與重郎論だが、福田のと読み比べしてみようかと。半分は「イロニア」初出。新潮社、今ならこういうようなのは単行本化などしないだろうなあ。それから「ジャーナリスト」というのは目次を見たら「橋川文三とインテリやくざ」なんていうのがあったりしてなかなか面白そうで。著者は元「改造文芸」なんかの編集者。三島由紀夫作「熱帯樹」文学座パンフはとうに所持しているが、ここら辺も少し前は3千円とかしていたものである。半券が挟まっていたので購入。
いやしかし、閉場の21時になってもやっぱり全体は見きれず。今年もまた全部は見られなかったが、まあ見たところでなんだという話でもある。ぐったり疲れ、近所の茶店に一服しに行くのであった。