漁書日誌 3.0

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分厚い戯曲

ネットオークションで落札した本が届いた。しかし暑い。夏だから当然ではあるけれども。

塚本邦雄「夕暮の諧調」(人文書院)初版凾帯ビニカバ限定記番720円
須永朝彦「悪霊の館」(西澤書店)初凾帯500円
ちょっと塚本の評論が読みたく落札したもの。いやしかし、この辺のは10年前なら2〜3千円は普通であった。いま千円以下というか500円前後じゃなきゃ高いわと思ってしまうことそれ自体がちょっと異常なのかもしれない。澁澤・生田本でその辺の辛酸は(多少なりとも)なめてきた実感からいうのである。それからこれ。

池長孟「開国秘譚」(弘文堂)昭和5年10月15日再版凾500円
池長孟(はじめ)の本で、いままで持っていなかった「開国秘譚」を入手。これで池長の戯曲三部作は手に入ったか。南蛮美術コレクターにして劇作家というか、そういう位置づけ。劇作家といったが、趣味で書いているといってしまっては言い過ぎかもしれないけれど、まあお金持ちで詩集や戯曲集を出し、その他南蛮美術関係の目録やエッセイなども書いている。そもそも池長のことはいつ知ったのだったか、谷崎関係で名前は知っていたけれども、どこかの小劇団が池長の戯曲を上演したという記事を見かけてからちょっと戯曲を読んでみようと思ったのがきっかけである。分厚い戯曲集。

上記は、池長の戯曲集「荒ッ削りの魂」(弘文堂)と「狂ひ咲き』(福音社)の2冊。今回入手した「開国秘譚」は再版だけれども、ほかの二冊で重版は見たことがない。「狂ひ咲き」は日本の古本屋で検索して出て来たものから安いのを注文して買ったのだが、後にこの「狂ひ咲き」には背革装幀のバージョンがあることを知る。それならばそちらの方がよかったなあ、手許にあるのはクロス装だしなあと思っていたのだが、背革バージョンというのは実は後版で、元々収録されていた戯曲「窓」が禁忌に触れ発売禁止となり、「窓」を削除したものが背革装となって再発売されたものなのだという。既に製本してあったのを綴じ直して背革にしたのであろうか。となると、たまたま最初に買ったやつは無削除元版ということになる。本の扉は木版刷。
「開国秘譚」は「孟」のサインが入ったらしゃめんの多色刷木版が貼付されている扉。この本は天鵞絨装幀だが、初版は紫で、再版には紺色と海老色の二色があるようだ。(少し書いてからネット検索してみると、既にここに書いてあった。表紙の色について参考にさせていただきました)それから分厚いというのも池長戯曲集の特徴。菊判だけれど分厚すぎて読みづらいのはご愛敬。凝った装幀(おそらく装幀も著者自装と思われる)で、改訂版を背革で出すなど、お金は持っていたのでしょう。金持ちの趣味人。大正10年には池水瑠璃之助という名義で「紅塵秘抄」という詩集も出している(発行は第一書房をおこすことになる長谷川巳之吉)。池長には評伝が一冊あるが未読。南蛮美術に関してはまったく興味がないのであるが、マイナー作者として見ると、なかなかヘンチクリンなSF的戯曲もあって、前々から少し興味を持っていたのである。
(続きはまた改めて更新予定)