漁書日誌 3.0

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五反田でなく下町

昨日行けなかったので、今日こそはと思っていたけれども、土曜日は17時までの古書展、五反田遊古会は間に合わず、取り敢えず神保町の下町古書展に向かう。閉場7分前に到着、入場。ここ最近の近代文学研究書系しかもどれも献呈箋やら入ったままのやつがズラッと列ぶ棚があったが、いかんせん値付けがちょっと高めで手が出ず。しかしまあ大先生の下へ献呈されたはいいがどうせ読まれないのならどんどん市場に出しこうやってお安く還元して欲しいものだ。半分も見られず終わり。買わなくても良かったかもしれないが、2冊ほど。その後、田村書店の外ワゴン見てちくま学芸文庫版のニーチェ全集の端本を買い、今度は扶桑事務所へ向かう。
先週から悩んでいたが、えいやと買ってしまったのが宇野浩二の小説集。やはり3千円以上だと悩む。

入江隆則「敗者の戦後」(中公叢書)カバ帯540円
山田五郎「百万人のお尻学」(講談社+α文庫)カバ200円
宇野浩二「青春の果」(天祐社)大正11年9月20日初版凾欠3500円
宇野浩二のは、贋文士を扱った「二人の青木愛三郎」とか、「小説及小説家」など、小説家表象というか文士小説というか、そういう類がメインの作品集。それらを読みたくて、この作品集をなるたけ安く探していたのである。
ほか、マケプレ注文したもの、昨日地元古書店で買い物したもの、ネット古書店に注文したものなど。「大石内蔵助」は小村雪岱挿絵のため。扉合わせて30枚の挿絵。


ミュア「小説の構造」(ダヴィッド社)500円
紀田順一郎「明治事件簿」(旺文社文庫)1円(+257円)
高村暢児「社会部の屑篭」(新書房)昭和30年11月10日発行200円
村上浪六大石内蔵助」(講談倶楽部新年号附録)昭和8年1月1日発行200円
「書物展望」(昭7・1/昭7・4)100円、200円
野坂昭如写真帖」(講談社)昭和52年6月1日1刷カバ2000円
わざわざ古書店に注文したのは、野坂の写真集である。写真は山本和夫、文は野坂昭如とクレジットがある。70年代以降のものがメインで、トークショーに参加したり、唄ったり、田植えしたり、ラグビーやってみたり、選挙演説してみたりする野坂の写真で占められている。それぞれ野坂によるふざけたキャプションがついていて、巻末に「じたばたぶりの写真集など、気恥ずかしい」なるあとがきがあるが、没後の文学アルバム的なものを除いて、現役小説家が自分の写真集を出すなどというのは、三島由紀夫と野坂くらいであろう。作家が行動(政治をも含めたタレント活動)し、それを写真集として発刊するというのが、マルチな現代的作家のありようのひとつの形を象徴していて興味深い。三島の「薔薇刑」のように、ナルシスティックともいえるような写真はない代わりに、あまりにふざけたキャプションが逆に照れを反証していて、野坂の自意識が三島とは逆の意味で横溢しているともいえる。