漁書日誌 3.0

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探索後のヒットラー

今日は芝居を観に都内に出るので、どうせソワレだし、その前に昨日不揃いだった「三人」を探索して掘り出してやるぞ、という勢いで神保町は古書会館に立ち寄る。その時、16時45分。

同人誌「三人」(8号)200円
「映画評論」(70,2/70.5/74.7)各200円
小堀杏奴「その他大勢」(宝文館)初版凾300円
「三人」だが、昨日の棚を丁寧に細かく見ていったら発見、よし、これで「三人」はコンプ。こんなものバラで見つけようったって見つかるようなものでもなし、あそこまで揃っていて欠けているのもおかしいし、やはり今日来てよかったわけである。その他に、「映画評論」やら、扶桑の棚で小堀杏奴の本やらを購入してしまう。

外山滋比古「異本論」(ちくま学芸文庫)350円
渥美清太郎「名曲解題 邦楽舞踊辞典」(冨山房百科文庫)カバ200円
武田泰淳「未来の淫女」(目黒書店)再版帯100円
これらは、ついでに覗いた村山書店や田村書店の外台にて求めたもの。武田泰淳のは帯目当てであったりする。
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Project Natter Vol.3 わが友ヒットラー
三島由紀夫作/ペーター・ゲスナー演出
http://www5d.biglobe.ne.jp/~cottone/wagatomo/top.html
この演出家は九州でうずめ劇場というのをやっていて、そこでもう数回この作品を上演しておりそれで名前は既に知っていた。だが九州じゃさすがに見に行けないしと思っていたのだが、今回待望の東京公演である。芝居自体も、今回、ごく当たり前に、面白く堪能出来た。このごく当たり前というのがよいのである。というのも、以前もう七年くらい前になるけれども、法政大ホールで小劇団がこの芝居をやったのを観たことがあるのだが、その時はなんというかディフォルメを施した舞台で、ストレンジなテイストを打ち出した珍妙な印象であったからだ。しかしそれも、そうやるしかないものなと思っていたのである。
まあ芝居自体が、男だけ四人の登場人物のみ、しかも大きなアクションなどもなく台詞のみでドラマが進むというものであり、ネタがヒットラーというところから、正攻法でやっていると、役者、演出家の腕がモロに暴露されてしまうようなところのある作品なのである。つまり、舞台が持たないのだ。かなりの腕がないとさばけない難しい芝居、といえよう。だから、妙な演出やディフォルメでなんとか持たせようとするのは仕方ないことなのかと思っていた。これは「黒蜥蜴」なんかにもいえることだろう。あれも普通に新劇的にやったら持たないと思う。
だが今回は正にストレートな正攻法の舞台であった。観客として、二時間半というのがあっという間に感じた。この長尺を長く感じさせないということは、それだけ達者だということであろうし、それだけうまくさばいているということであろう。そういう意味では、職人的腕の冴えた舞台だった、といってもよい。独特の存在感を持つ老クルップに少し台詞が聞こえづらいというところがあり、ヒットラー役の役者も、メリハリがあってよいのだが、なんというか少し違うけどソクーロフ「太陽」における昭和天皇的な変なキャラというか普通じゃなさそうなテイストを造形していたりしてちょっとやりすぎかなという気もしないでもない。また、最初と幕間あけにフィリップ・グラスによる映画「MISHIMA」のサントラを用いており、どうも映画のイメージが浮かんでしまい個人的には邪魔だったというようなことを思ったけれど、まあそれとしても上々な舞台だったと思う。(17日夜所見)