漁書日誌 3.0

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ぐろりや会+岩波文庫

ぐろりや会古書展。
本部会館。

国会図書館で昔の雑誌「ヤングレディ」とか調べたりして、その後神保町へ出る。会場に到着したのが17時10分くらい。

ぐろりや会は、棚の列が昔と同じである。昔、というのは、新しくなった古書会館の前、旧古書会館の時のことだ。あれと一緒で棚が縦に列んでいる。そこでまあザーッと見ていったわけだが。
本日購入したのは、これ。

三島由紀夫「夜の向日葵」(講談社)昭和28年6月15日発行初版カバ帯
マリアンヌ・ベッケル「クラクラの日記」(人文書院)昭和31年10月15日発行重版カバ 500円
「クラクラの日記」の方は、奥付に“重版発行”としかなくそれが第何刷なのか表記がない。こういう表記で思い出したが、以前、何展だったか、同じくこの本部会館での古書展で、中城ふみ子の「乳房喪失」重版カバ付きを500円で買ったことがあったのだが、あれなんか同じように“重版発行”の年月日があるだけ。というか、初版の年月日すら記されてないという表記であった。そう、作品社の本である。
マリアンヌ・ベッケルって人がどんな作家か、この小説がどんなものかは実はよく知らないけれど、以前、奢霸都館の書物を集めたりしていて、大岡名義になっているがこれは生田耕作訳だ(下訳だったか?)ということを聞き知って、安く探したものである。3000円とかで何度か見かけたが、見送っていた。500円ならば、ということだ。

で、その他は、本の下に敷いてある内容見本4種。いずれも、三島のユッキーの短文が入っているから。といっても、入っていれば何でも…というわけでもないが、まあ1部200円だったし、他に何も買うものなかったし、ということで購入。「名著復刻全集近代文学館」、「現代の文学(河出書房)」、「現代日本文学全集(筑摩書房)」、「トーマス・マン全集」の4種。でも「現代の文学」の内容見本がちょっと嬉しい。

その後、タラタラ歩いて田村に行ったが、一足遅く閉店後。踵を返して東京堂に行き、新刊本とサイン本をチェックしてからモールを覗き、それから三省堂にて岩波文庫を二冊購入。

江戸川乱歩短篇集 (岩波文庫)

江戸川乱歩短篇集 (岩波文庫)

とうとう、というべきか、岩波文庫から乱歩である。おおあの岩波文庫がサドを出したよ、と、思ったのが数年前。大衆文学の古典的作品ということで、探偵ものの次には髷物系の何かドシンと出して欲しいものだ。
まあそれはともかく、取り敢えず真っ先に千葉俊二先生の解説を読む。で、何故か解説文で、「屋根裏の散歩者」の主人公の名前を郷田三良(郷田三郎ではなく)としていて、初出がそうだった、と妙なこだわりしているなあ、と思ったら、本文が現行テキスト(乱歩が戦後手を入れたもの)ではなく、初出を底本としている、という。確かに、三郎ではなく本文は三良になっていた。光文社文庫の乱歩全集が校訂を付けてくれたお陰でいろいろ助かっているが、やはりこういうところが、今までの角川文庫とか春陽堂文庫とか、ただそのまま作品配列替えただけというのとはわけが違いますぜ、というところなのだろう。
恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)

恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)

そしてお次がアルス・アマトリア。「恋愛指南」である。これもねー、別段アレだけれども一応読んでみたいなあ、と、平凡社ライブラリ版が出た時に思い、しかもそれほど人気がないのか、いつも売れ残って棚に在庫を見かけたしで、そのうち古書で安く買えればいいや、と、思っていて数年、いつの間にか、そういえば、と見ると、何と品切れ。ちょっとだけゲッと思ったことがあった。でもまあそれも、今回の新訳がライブラリ版の半額以下の定価で入手出来たしよいか。
アルス・アマトリアというと、どうもカタカナよりも、平仮名のあまとりあの方が何となくしっくりしてしまうのは、そう、「あまとりあ選書」のイメージがあるからだろう。久保書店の。あれも、確か五六冊あったと思うが、矢野目源一の補精学的な、精力・媚薬的食事の紹介のような本があって、あれは入手したけれど、シリーズの後の方に出ている、鑑識の本のような性犯罪の本、あれもまあ一種のゲテモノ趣味で安ければ買おうと学生の頃思っていた。まあそんなことはどうでもいいが、それとなんといってもやっぱり雑誌「あまとりあ」。いまはこんなのよりも「奇譚クラブ」「風俗科学」「風俗草紙」の方が断然安ければ拾いたいものだが(書き物のネタとして)。それはともかく、訳者による解説を読んでいたら、アルス・アマトリアは、かつて角川文庫でも出ていたという。初めて知った。確かに、結構妙な翻訳が出ていることがある。ウィリアム・ベックフォードなんかも出ていたし。
文庫といえば、今日のぐろりや会の会場に新潮文庫の「阿片のみの告白」もあったが、棚から出しもしなかった。いま翻訳読み比べなどする暇もないし。
しかし、初日だからといって、閉場間際の時間になっても、例えば、棚にユリイカ版の「稲垣足穂全集」が安価で、即ち凾付き2000円、凾欠800円という価格で転がっているというのはどうなのよ。800円は魅力的だった。でも実は既に所持している巻なのだった。表紙の色味とか、洒落ていてよい本だと思うし、以前だったらもっと高値だったような気がするのだが、売れないのかなあ、明日時間があったら立ち寄って、買っちゃうかもしれない。


そいえば、ロッテリアの隣、三省堂の隣か、ここ、何があったのだっけか。なんか、レコードとか売っていた店だったっけか。最近の神保町、変動が激しいような気がする。