漁書日誌 3.0

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少し涼しくなった八月の午後

ネットオークションで落札した本などが届いた。

手前の中公新書のみ、ちょっと繁華街の古書店を覗いて買ってきたもの。350円。小田部雄次華族」。

さて、ネットオークションも確実に古書入手の手段になっている。いわゆる新古本だとか写真集だの何だのあるけれども、いわゆる初版本とかそういう文学系正統派のようなもの、これらも大分前からあれこれと出品されている。また、ネットオークション、もっと早く言ってしまうなら、ヤフオク、での、古書相場というのも無視出来ない。それが神保町とかけ離れていても、やはりどうしたって、ネット上のほうがある種の、現在の実際的価格を反映しているように思われる。
無論、相場を知らない人が極端に安く/高く出品することもある。または、携帯電話片手に相場を調べつつ昼日中からブックオフを巡回して取り敢えず高めに設定してマーケットプライスなどに出品する、現代のセドリ的人間の出品物なんかもあるけれども、そういうのを無視したとしても、オークションでは、肉筆ものを含めて、かなりの品が今まで出てきた。百万円を超える落札物も実際何度か見かけた。「仮面の告白」初版本の谷崎潤一郎宛署名本とか。
かくいうワタクシも、そういうものを利用して、いわゆる初版本だの何だのを入手してきたことがあるが、概して言えば、オークションをよく利用するのは、本以外のもの、例えば映画や芝居のパンフレットなど、そういう類のものが多い。専門店では、一定の相場が出来てしまっている、そういう“資料”も、オークションの場合だと、取り敢えず手許にあるごちゃごちゃした紙をごったにして出品する。なのでこちらに知識があれば、もし専門店ならばけっこうなお値段になるのでは、というものもうまくいえば安価で入手出来る。
もちろん、そういったものはキーワード検索で探すので、例えば、三島由紀夫などというワードで探せば、同じようなものを狙っている人もソレを気づくはずであり、そうは簡単にいかないのだが、かといって、キーワードにそれと出ていなければ、ライバルは出現しないだろうが、そんなものを膨大な出品物のなかから探し当てるほど暇な人は今時少ないだろう。
安価といえば、新刊書を安く入手するという意味から、ケチケチとそういった本を検索することも少なくない。今回入手したATGに関する本も、書店で何度も定価で買おうと思っていたが、今回、ようよう1000円で落札出来た。


今回のは、グループNLTの「サド侯爵夫人」初演時のパンフである。表紙は藤野一友。「誘拐」「近代能楽集」「サド侯爵夫人」と、NLTのパンフではこの三つのみが、藤野による表紙画パンフである。いやー、NLTについては、草月実験劇場のジュネ「女中たち」から第七回公演の「朱雀家の滅亡」まで集めているのだが、これがなかなか集まらず。特に初期、しかも関西公演版などもあって、商業演劇とは違い、そもそも部数も多くないと思われ、苦労している。
まあそれでも、草月ホールの、演劇やパフォーマンス、実験映画などのパンフに比べればまだしもなのだろう。ATG関係などは、実際、東京の新宿文化、日劇文化のみならず、大阪の北野シネマなどもあり、その意味では元々の部数も多いだろうが、草月となると言うまでもなく東京一館のみだし、そもそも一日のみの公演というのもあり、これまたたまに見かけても、けっこうなお値段で手が出ないことが多い。しかも表紙を横尾忠則やら宇野亜喜良なんかが手がけていると、そちらの人気も相まってなかなか……。
とはいえ、やはりこうした当時の資料は、分厚い論文や批評などからは見えてこない、当時の微細な、そして微細であるが故に見逃されがちな情報などを生々しく伝えており、そんなところからも、映画や演劇を考えるには重要と思う。