漁書日誌 3.0

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ちくま学芸文庫オブセッション

愛書会および五反田遊古会の最終日。
本日こそは、と、思っていたのだが、結局ダラダラして家を出るのが遅くなり、かろうじてギリギリ五反田駅に降り立ったのが16時42分。そこからダッシュ気味に南部古書会館へ向かう。
外は無視(実は今こそゆっくりほじくり返して見たかった)して、即二階へ。注文品は、ない。

会場についたのは閉場12分前くらいだった。ザーッと見ていく。最終日のもう終わりという時間帯であったためか、客もごく少ない。しかしいよいよ焦らせるのは、某古書店主が、「あと10分で閉場です、買い残しのないように」というのをとにかく大声で連呼。蛍の光ならさないからってさ、これは、ない。お陰で焦って、「買い残しのないように」どころか「邪魔だからとっとと出てって」という意味にしか機能しないのである。客2〜3人しかいないし。これを「あと5分」「あと3分」とかもう、暇なんだか早くハケ作業に入りたいのか連呼。褒め殺し的連呼であろう。でもまー確かに、帳場閉めるといってるのにぐずぐずまだ棚を見ていたりするのもいるし(自分のことか?)。
お陰で、「あれれ子規のでこんなタイトルの岩波文庫出ていたっけ」などと、子規の本と取り間違えて虚子の「俳句はかく解しかく味う」など拾ってしまう阿呆をやらかす。自分が悪いのだが。まあ、結局、この文庫本一冊と、選書を3冊購入。

で、昭和20年代後半の舞台パンフがちょこっとあったところをじっくり見られなかったのが残念だった。バレエのパンフばかりだったからだ。というのも、1950年代のバレエ関係公演に少し興味アリ、特に小牧バレエ団のプログラムはチェックしているのである。今日は、その小牧の公演で、ノラ・ケイの来日公演のが5種くらいあった。
三島の由紀夫がNYで見たNCBのThe Cageでプリマやったノラ・ケイである。勿論来日公演は見に行っていて、「火の鳥」パンフには寄稿しているのだが、その他の演目についても、寄稿がなくとも資料で幾つか漁っているのであった。因みにしょうもないトリビアだが、小牧のノラ・ケイ来日「火の鳥」公演のパンフには日付の異なる二種が存在したりする。そしてもっとトリビアだが、「禁色」に出てくるお相手の少年を連れて来日したバレエダンサーは、セルジュ・リファールだとワタクシは思っている。


これは昭和28年のノラ・ケイとポール・シラード来日公演「ジゼル/双曲線」のパンフ。同じものが二つあったが、綺麗な方を選んで買ってきた。で、あとで中身をパラパラ見ていると、なんとサインが入っていた。

印刷じゃねえよなあ、と、よーく見てみたが、どうやら万年筆による直筆のようだ。でもなあ、これ、ノラ・ケイだったらなあ、と思うのである。因みに500円。もしかしてもっと探したらノラ・ケイのサイン入りもあったかもしれない。よく見られなかったのが残念だ。

で、駅前の茶店で一服してから、都営線にて神保町へ。本当は写真美術館の森山大道レトロスペクティブとか時の忘れものでやってる細江英公展とかに行くのもよいなと思ったが、時間的に無理そうだった。神保町駅到着は、19時数分前。
無論、愛書会は1時間前に終わっている。仕方ない。しかし、結局注文しなかったが、東京朝日の短篇切り抜きで「金色の死」のやつがあったのだが、あれ揃っていたのだろうか。やっぱり注文しておけばよかった。

で、今日は表題でもある、ちくま学芸文庫を買いにわざわざここまで来たのである。先日、ちくま学芸は復刊フェアとのことで品切れ本10冊を復刊した。そこに、欲しいなあと思っていたのが入っていたので、給料が出たら買うぞと思っていた。東京堂で。
そして、こんなものを買った。新品の本を定価で、合計七千円弱。こんなに新本を買ったのはもう何年ぶりか。

あの高い、ちくま学芸文庫を、このケチな貧乏性のワタクシが一気に四冊も買いました。快挙です。
復刊フェアで重版された、ウィルソン「アクセルの城」、ルカーチ「小説の理論」。加えて、坂部恵「かたり」、橋爪紳也「増補明治の迷宮都市」。みんなお勉強用ですね。

前者二つは、古書相場で2000円くらいしていた。一寸前まで。どうもねえ、ちくま学芸文庫オブセッションのようなものが最近にわかに出てきてしまって、品切れの途端倍以上のプレミアついたりするでしょ。こないだの「ドイツ・ロマン主義における芸術批評の概念」みたいに(もう某古書店では3980円つけていた。おそらく、これ品切れしたら重版しないだろうなあというのを品切れ前に目を付けて複数購入し、まだ品切れしてないのにネット上で阿呆のようなプレミア付けて売っていたりする古書店じゃない個人とか多そう。一人が定価の数倍のプレミア価付けると他も連鎖的に「これが相場か」となって妙な相場が成立してしまうという事態に陥る。でもまあこれが現実)。
こりゃ品切れたら重版しねえよなあとか、今は別段必要じゃないけども、そのうち必要になるかもなあ的なもの、元版は古書でそれほど高くなく流通しているけれど文庫でちょっと改訳したとか解説が足されているとかのもの、というか………要は家の本の置き場所の問題もあって、図版分析とか図版が小さいとショボくなっちゃう気がするもの(例えば「イコノロジー研究」とか)以外はもう文庫で揃えたいというのもあり、ここ最近はちくま学芸文庫熱がカッカと高まっているという次第。

で、今回復刊のものだが、「アクセルの城」は以前買ったと思っていた。が、書架探しても出てこない。偽記憶か。筑摩叢書版ではなく函入りを買ったと思うのでせりか書房版だと思う。でもせりかの方って、昭和20年代に角川文庫で出ていた訳文そのまんまじゃないのかなあ、と。で、筑摩叢書の方は新訳で解説の長めエッセイとかも入っている、と。もう十年くらい前に、一応基礎文献だし買っておくか、どうせなら函入りの方でなどと適当に買ったように記憶している。新訳の筑摩叢書の方がよいに決まっているのに。そしてこの本、以前はよく見かけた気がするのだけれど、ああ今ちょっとすぐに読みたい欲しい、という時になると全く見かけない。日本の古本屋で検索すると何件も出てくるが、大体平均1200円くらい、それで振り込み手数料と送料を考えたら、こちらの復刊本を定価で買っても同じだし、どうせなら、ということで今回購入。
ルカーチの「小説の理論」も同じく。これは昨年だったか、ちょっと精読したく学芸文庫探したが既に品切れ、2500円とか出していられるかいってんで、仕方なく「ルカーチ著作集」(白水社)の「小説の理論」の巻を端本で買った。今回欲しかったちくま学芸版出たし、千円だし、解説よさそうだし、まあ買うか、と。
それと「増補 明治の迷宮都市」。これ出たの3月だったが、ちょうど店で列び始めたその直前に、元版の方を3000円も出して購入していたのである。新刊書店で文庫化見てダアとなった。しかも、である。文庫は増補版で、もう何というかだめ押しの一発つき。今度金入ったら買うしかないか……と思っていた。

以前、古書でようやっと岩波書店版の「形の生命」を見つけて購入したら、何のタイミングなのか、すぐに新訳がちくま学芸で出てガックリ来たことがあったのを思い出した。ベルクソンの「物質と記憶」もそうだ。
まあ本当は、今回の復刊で出ているウチ、大岡昇平「小説家夏目漱石」も欲しいなあと思っていた(これも元本ならば古書展で500円くらいで転がっている。無論文庫で欲しいため)。ヤフオクで今500円で出ているし、ネット古書店も探せば1000円くらいで出ている。もっと安くないのかといつものようにケチって探していたのだが、これはモールで買おうと決心(先週棚にあったのを見つけたのである)。それと、鹿島茂「SとM」(幻冬社新書)サイン入り。東京堂のサインコーナーを覗いたら、ぴょっと目に入ったので。
それとまあ、タイトルが美味しそうだったので、桑島秀樹「崇高の美学」(講談社選書メチエ)。果たしてどんなものか。崇高というコンセプトはちょっとキチンと押さえたいと思っていたし、やっぱカント美学はお勉強しなくちゃと最近思っていたところなのでちょうどよい。そんなこんなで7000円弱。

で、東京堂だが、さきほどの写真で手前に写っている革製の栞、これ東京堂リニューアルオープンの記念品だそうで、レジで会計していたら頂いた。黒と茶があるようだ。もう19時過ぎてるけど……と思いつつも東京堂の前に来たらまだ閉店していないので、あれれ何か今日は特別な日なのかと思っていたら、リニューアルということで、今後は20時閉店のようだ。
まーそれから、ちょっとだけ古書モールに立ち寄り。

下から4冊は五反田で買ったもの、上の3冊がモールで。上述した「小説家夏目漱石」800円、長尾剛漱石ゴシップ」(文春文庫)300円それと清水哲男「現代雑誌論」(三一新書)250円。というか、最近、小説は読んでいても、実は今まで漱石ってあまり興味なかったものだから周辺エピソードなど知らず、それが段々と必要な場面が多くなったということで、まー最低限このくらいは的なものを買うようにしており、大岡のもそういったことで読んでおきたかった。
で、モールを出たら、ちょうど20時になるというところであった。脇の喫煙コーナーで一服して帰るか、と、思ったが、突然、思い出したことがあった。昨日読んだ「すばらしき愚民社会」で紹介されていた文庫、「日本の古都はなぜ空襲を免れたか」(朝日文庫)、あるなら三省堂で買っていこう、というのである。
京都を米軍が空襲しなかったのは、文化財保護を念頭にした措置であった、と、ワタクシも信じていたのだが、それは間違いで、実は原爆予定地で、原爆の場合、その効果を知りたいので別に爆撃するなということだったのが、たまたま広島長崎で終戦になったので免れた、との由。それは面白い、と、品切れ絶版でなければ(笑)購入しなければと思っていたのである。で、20時になった三省堂に入っていき、文庫コーナーを探し、見つけた。購入。

日本の古都はなぜ空襲を免れたか (朝日文庫)

日本の古都はなぜ空襲を免れたか (朝日文庫)

しかしまあ買いも買ったりだ。
いま、これ全部読む時間として一週間欲しい。