漁書日誌 3.0

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袖珍本から高円寺

先週ふいにきた扶桑目録速報であわてて注文した本が、木曜日だったかに届いた。いわゆる袖珍本2冊である。和服の袂に入るくらいの即ち今でいうところの文庫本みたいなもの、という簡単な理解をしているが、正確なサイズというのもべつにないのであろう。鏡花の袖珍本といっても、よくみる大正中頃の春陽堂本は袂に入れたら重いだろというサイズ。だからまあ、今回の本も袖珍本とっってよいか。いや、袖珍本というよりは、明治の終わり頃から出版界で流行となっていった縮刷本とでもいうべきか(縮刷はまた中身の話なのでサイズの話ではないが、往々にして袖珍本サイズが多いような印象)。

谷崎潤一郎「人魚の嘆き」(春陽堂大正9年4月25日8版凾欠6500円
小川未明「血で描いた絵」(新潮社)大正7年10月28日初版凾欠4000円
「人魚」はもう改めていうまでもない。未だに初版は高嶺の花で手が届かないが、再版以降の重版も手が届く範囲で集めている(ご興味のある方はこのブログの過去記事を「人魚の嘆き」で検索してください)。届いて実際に手に取ってみないとわからないことというのは案外多いものだ。8版も実は持っていたが、実際見てみないことには。それから「血で描いた絵」は嬉しかった。今回は豊島与志雄旧蔵書と田村俊子旧蔵書がズラリと出ていたが、前回の趣味展の棚も豊島旧蔵書がメインだった由。

金曜日、国会図書館で時間ギリギリまで文献複写などして、18時過ぎに複写物を受取り、そのまま徒歩で赤坂見附まで出て、丸ノ内線で銀座へ移動。銀座の町中を小走りで移動しながら、ggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)へ赴く。19時閉館だが、閉場15分前くらいに着いた。ここで開催中の「組版造形 白井敬尚」展を見に来たのである。1階と地下1階の2フロアでフロアいっぱいに白井氏の平面造形?が展開されていて、ある種壮観。イヴ叢書とかも白井氏の作品だったのか。郡淳一郎さんが編集と後記をやっているポスター兼パンフを購入。1000円。綴じをはずすとポスターになるが、そのままで頁を切るとパンフにもなるというもの。
そして土曜日。目録注文品が当たったというので、数年ぶりに高円寺の西部古書会館へ向かう。2年ぶりくらいだろうか。高円寺駅もすっかりキレイになっている。

注文したのは、重い本2冊。

紅野敏郎「大正期の文芸叢書」(雄松堂)凾2000円
ゴンブリッチ「イメージと目」(玉川大学出版局)カバ2000円
安いというだけで注文。紅野の雄松堂のやつは3冊出ていて、既に1冊持っていて2冊となったが、この本が出たばかりのころか、まわりの古書仲間がみんな古書で5千円くらいで買いそろえていて、しかしその値段は出せないなとずっとスルーしていたものだ。もう10年くらい経過してしまった。といって、取り敢えず持っとかないとという本でもあるが、どうせ通読もしないし置き場所に困るというのもある。会場をザーッと回って見てみたが、エブリマンズライブラリとかの洋書の文庫本というか、ドサリと1冊200円で出している棚があって、丹念に見ていたらJohn Lane & Bodley Headの「サロメ」背欠が100円であったので買ってみた。1928年とある。ちょっと枡形に近い変形版で、こういうの、向こうの袖珍本なのかしらと思ったものである。