漁書日誌 3.0

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梅雨明けの和洋会

東京の梅雨明けがようよう出たのが28日、その翌日の和洋会である。午後からちょっと仕事であったのだが、なかなか寝付けず、そのまま起きだしてお昼近くの会場に向かった。注文していた寺山修司の映画台本「田園に死す八千草薫宛献呈署名入3240円はハズレ。本ではなくATGの謄写版台本。というか署名が入っているので桁が違う。まさかひっこめたとかあるのだろうか。はなから期待してなかった。で、会場にいる制限時間はわずか20分。ザーッと回って、2冊。

大藪春彦「歯には歯を」(荒地出版社昭和35年4月25日初版カバ帯貸本印400円
谷崎潤一郎「新版春琴抄」(創元社昭和10年2月25日3版凾200円
特に大藪の本を集めているわけではないが、これはカバーに惹かれて購入。デザインとかっていう話ではなくて、裏表紙面がいっぱいの著者肖像になっているのである。帯も、背表紙面とか面のことを考えずにコピーを一言ドドドンと打ってあるだけ。

ライフルを構えた著者、であろう。写真家のクレジットはあるのだが、この男が著者であるとはどこにも書いていない。書かなくてもわかる、というわけだ。作品よりも著者が全面に出てきている好サンプル。単なる出たがり根性とかナルシシズムとかというのではなく、書籍流通におけるマスコミの力と著者のイメージがいかようなものを担っていたかという角度から見てたいへん興味深い。
ちなみに、小林信彦「1960年代日記」によれば、小林が編集者として訪ねた際、大藪は革ジャンを着たまま蒲団に潜り込んで執筆しており、たまにアパートの部屋でライフルをミカン箱に向かってぶっ放していたという(おそらく実弾)。写真まんまである。その後、大藪は拳銃不法所持で逮捕されるが、それは友人に貸した銃が帰って来なくなり自首したもの。
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翌日、神保町に出たが和洋会は既に閉場、そのまま扶桑事務所に行ってから、古書モールで文庫2冊。澤口書店で文庫1冊。

谷崎潤一郎「月と狂言師」(中公文庫)カバ200円
中村光夫「憂しと見し世」(中公文庫)カバ200円
小浜逸郎「方法としての子ども」(ちくま学芸文庫)カバ100円
吉屋信子「屋根裏の二処女」(洛陽堂)大正9年1月25日初版凾欠
「屋根裏の二処女」は数種類の後版があるけれども、これが最初の版。

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最近気になっている新刊と新刊予定本。

評伝春日井建 (井泉叢書)

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形象の力:合理的言語の無力 (高山宏セレクション〈異貌の人文学〉)

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ロルドの恐怖劇場 (ちくま文庫)

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出版と流通 (シリーズ“本の文化史”)

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笑い (古典新訳文庫)

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戦後映画の産業空間: 資本・娯楽・興行

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近現代日本の法華運動

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日本のシュルレアリスムという思考野

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戦後東京と闇市

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ごみとトイレの近代誌: 絵葉書と新聞広告から読み解く

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わが闘争 (ハルキ文庫)

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近代日本の公衆浴場運動

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フィクションとは何か―ごっこ遊びと芸術―

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人工地獄 現代アートと観客の政治学

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