漁書日誌 3.0

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涼しい趣味展

趣味展である。
今日は朝から小雨がパラつき、湿気で蒸すのは確かだとしても温度はけっこう低く、半袖ではちょいと肌寒い感じがある。ちょっと遅めの9時50分頃に古書会館到着。荷物を預けた後に行列最後尾に列ぶ。9時56分頃開場。帳場の時計は、3〜4分進んでいる。これを基準にしているようだ。
扶桑書房の棚。チラチラと見ていくが、今日は雑誌がいつもより多い印象で、あれこれと抱え込むという感じでもなく。11時半に昼食に抜け、その後チラッと見てから今度は友人とお茶しに抜ける。また夕方ザーッと見てから最後にお会計。その頃にはすっかり雨も止み、涼しい曇り空。
で、最終的に購入したのは以下。



後藤宙外「明治文壇回顧録」(岡倉書房)昭和11年5月20日凾欠1000円
斉藤昌三「書斎随歩」(書物展望社昭和19年3月19日カバ付1500円
木村毅「明治文学を語る」(楽浪書院)昭和9年5月12日凾付800円
菊池寛「若杉裁判長 他五篇」(春陽堂ヴェストポケット傑作叢書)大正10年11月20日2版500円
「文芸倶楽部」第1編(明治28年1月)口絵目次欠痛400円
「文芸倶楽部」第2編(明治28年)口絵目次欠痛水ムレ400円
本当は紅葉やらなにやらも抱えていたのであるが、結局それらを手放してこういうラインナップに。横光利一の限定版「日輪」3000円なんかも安かったのだろうが手放してしまった。この中では、例えば「明治文学を語る」など面白い装幀。背クロースの平は紙で、パッと見絨毯みたいな柄であるが、エンボス加工がしてある上に赤の印刷がしてある箇所は膠処理?がされていてなかなか凝っているのが面白い。

「書斎随歩」の本体はカバー裏。カバー裏には少雨荘の見取図が印刷されている。大戦末期の隠れたしゃれっ気。

前田愛「近代日本の文学空間」(平凡社ライブラリ)カバ帯400円
保昌正夫他「昭和文学の風景」(小学館ライブラリ)カバ帯200円
これらは、お茶して古書会館へ戻る途中に田村書店の外ワゴンを覗いて買ったもの。昼過ぎには200円くらいの新しめの文庫がドサッとあったのでそこから。
それと写真中央のものは、
倉田啓明綺想探偵作品集「我が屍に化粧する」(盛林堂ミステリアス文庫)限定300部
先日出たばかりの倉田啓明の作品集。話題の盛林堂ミステリアス文庫の1冊として出て、300部は瞬殺で完売だった模様。献呈していただいた編者片倉氏に感謝です。
一癖どころか二癖三癖もあるこの作家、これまでは亀鳴屋の作品集「稚児殺し」が唯一のものであったけれども、あれも既に10年以上前の出版。しかも今回は、単行本未収録の作ばかりをセレクトとしたという。
実態がなかなか掴みづらい、著書が既に稀覯書である等々の理由もあるが、倉田本人が贋原稿詐欺で逮捕されたり、芝居に首を突っ込んだり、主義者の群に紛れてみたりと、断片的な情報からはあやしくて得体の知れない胡散臭さが常につきまとい、歴史の闇に埋もれていた。ある意味で、昭和も70年を超えた現在、毒花の腐臭やニセモノのニセモノ性といった胡散臭さにこそ、他に慊い思いを抱く人を惹きつけてやまない倉田の磁力が磁力として発揮されているのかもしれない。倉田については、だから、今までごく限られた探求者をしか生みださなかったことも道理であった。毒花の放つ腐臭は常に人を惑わし途方に暮れさせ、花弁の悪趣味な毒々しさという韜晦の前で退散を余儀なくさせられる。
が、解題を一読すればわかるようにこの度は従来の情報を整理結集させたうえで、探求を重ねた編者が更に倉田へと一歩迫り、収録された各作品を読むことによって亀鳴屋本を補完する形で倉田の実態を浮かび上がらせるようなものとなっている。本書は今後、倉田啓明探求者のマスト・アイテムとなるであろう。