漁書日誌 3.0

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夏は暑い

先日、月曜日だったかに届いた扶桑書房目録で注文した本が届いた。今回の目録はいつもの〝速報〟とは異なり、写真版で原稿なども出ている。明治期の外装付の本があれこれと出ているが、まあ今の相場と比べるとかなりの良心的価格(といってもワタクシのような貧乏書生にはもちろん手が出ないが)で列んでいる。

長田幹彦「祇園囃子」(新小説社)昭和9年4月20日初版凾欠5000円
森田草平「寂しき人々」(青年学芸社)大正3年10月15日3版2000円
「祇園囃子」はいわずもがな、竹久夢二木版装幀。裏表紙には大文字焼きが見えるというもの。夢二死の年の出版でどのくらい関わっていたのかは知らず。幹彦としても祇園もの集大成的な位置づけにある本であろうだろうなあ。かつてこれは持っていたいと1万2千円くらいでこれより程度の悪い凾欠本をそれでも安いと買って持っていたのだが、金欠時に売却してしまったことがあった。
それからもうひとつの「寂しき人々」は森田草平著。むろん、ハウプトマンの「寂しき人々」であるが、それの内容縮刷版である。巻頭に掲げてある「エッセンス叢書発刊の趣旨」という文章に、〈縮刷の次ぎに来るべき要求は、当然この「内容の縮刷」でなければなりません〉とある。まあ、早い話が名著のアンチョコである。いちいち原書や訳本をちゃんと読まずにこれ1冊サッと目を通して知ったかぶりが出来るというわけだ。しかしこのエッセンス・シリーズ、ごくたまーに古書展の棚で見かけることがあるが、といってもアカギ叢書と同じくらいで、いつでもというわけではない。大正の頭っていうのは、アカギ叢書含めて、こういう合理主義というか、教養主義早道みたいなマニュアルとでもいうべきものが流行ったわけだ。白樺派が伸びていくのとこういうのとが同根の事象という気がする。

うちにも数冊あった筈と思っていま書架を見たら、2冊あったが、もう1冊くらいあったようななかったような。