漁書日誌 3.0

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今週の。

先週末、極々金欠になり立ちゆかなくなりそうになって、一気に10点くらいの古書を売却した。予想以上の金になって、なんとか首の皮が繋がる。金がないからほとんど古書は買えないのであったが、しかし今行っておかないとというイベントというか展覧会などもあり。

印刷博物館編著「ミリオンセラー誕生」図録1000円
「月映」展図録定価2500円
「ミリオンセラー」の方は、前々から安くと思っていたが、まあこんなもんかなという値段だったので数日前注文し今日届いたもの。なんてこたないが、カラーで種々の雑誌表紙が一斉に出ているのは見ているだけでも面白い。実は恥ずかしながら「改造」の創刊号がこんな表紙であったとは知らなかった。最初から「中央公論」の真似みたいな感じというわけではなかったのね、とか。
「月映」展の図録は、先週に現在開催中である東京ステーションギャラリーまで行って買ってきたもの。先週土曜日か。今なら時間があると行ってきたもので、夜に用事があったものだから、しかしどうせ都内に出る用事があるならば都内でやってるほかの展覧会にも行って交通費をケチれとギリギリのスケジュールで行ったのである。しかし無理なスケジュールでじっくり観覧する時間なく、ギャラリーの入口で図録を買ったのに展示は又今度じっくり見に来ようと展覧会自体には入らず。なんたる不純。
「月映」田中恭吉・藤森静雄・恩地孝四觔@東京ステーションギャラリー11月3日まで。
なんでも今回の図録が大人気らしく、まだ売っているのにもかかわらず古書として既にプレミアがついているとの情報。まあ、田中恭吉やら恩地孝四觔やらってのは、もう数年前か、和歌山でやった田中恭吉展の筒凾入の図録を買い、松濤美術館での「谷中安規の夢・シネマとカフェと怪奇のまぼろし」展に行ってあれこれみて図録を買い、その後、古書展でその頃出た「田中恭吉画集」のゾッキを買いと、もうこの辺はいらないかなあと思っていたのだが、やはり購入してしまった。図録は切れるといきなり篦棒なプレミアになったりするので(小村雪岱がいい例)。今回のは、菊版丸背上製本で、表紙一部が見えるようくりぬき窓がある筒凾という前に和歌山でやった田中恭吉展の図録と装幀も似ている。


いま書棚から引っ張り出してきたら、田中恭吉展は開催が2000年。あれからもう15年も経過したのかとは今更ながら驚き。正に光陰矢のごとしである。そうそう、東京では町田でやっていて「遠いなあ」と面倒ぐさがっていたら終わってしまい、後からこの図録を入手したのであった。この図録もその後プレミアついていたなあ。しかし似ていると思ったら、両方とも「制作・コギト」のクレジット。この会社、三島由紀夫文学館の図録も担当しているので知っている。
で、踵を返して今度は浅草橋へ向かいパラボリカ・ビスへ。こちらでは、三上晴子と80年代展が始まっている。いかにもサイバーパンクな感じの現代美術作家で、東京グランギニョルで美術などやっていた人。その後、多摩美の教授になり、90年代以降は80年代の作品は封印したごとく表に出さなくなった。本人の急逝を受けての展覧会である。

写真、当時の新聞雑誌記事のコピー、それから作品の記録ビデオ上映、それからオブジェ作品幾つか実物展示。とりわけ、インフォメーションウェポンズのガラスのミサイルの中に基板が入ってるようなやつ、あれの実物が1ヶあったのは、おおと思ったことである。写真で見るとかっこいいのであるが、実物をよく見るとプラスチックで造形したミサイル型のものは半分に割れているのをビニルテープで留めてあり、中の角柱状の基板は基板を組み合わせただけで中に蛍光灯が入っている。実物はこういうものなのだな、と。それから、三上の作品集「ALL HYBRID」の特装版が2冊展示されていたが、これは実際の基板が表紙になっているというもの。20部予定が実際は5部しか作っていないとキャプションにあった。この作品集、かつて渋谷西武にあったぽえむ・ぱろうるで93年頃か立ち読みしたなあと思い出したり。本当は日曜日に飴屋法水氏のトークがあったのだが、仕事も立て込んでいて日曜は無理と行けず仕舞い。
それから金曜日は芝居であった。近代能楽集をやるとネットで知って、それならとフラっと行ってきたのである。
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疎開サロン「道成寺」「弱法師」@市田邸10月2〜4日

市田邸というのは上野桜木町にある明治期の建築で、そこでやるという。芸大のすぐわきに位置する場所。ちょっと広めの和室客間が客席で、後ろ半分は椅子、前半分は座布団。舞台は、襖で仕切ってある隣の間のようで、襖を開けるとドドドンと奥正面に蔵の入口がある。これをそのまま「道成寺」の巨大箪笥に活用したというわけ。劇場ではなく民家なので、天井も低くごちゃっとしているのがけっこう新鮮。途中の工場の騒音=乱拍子も工夫した処理をしたり、なかなかにうまくまとまった演出であったが、やっぱり清子のセリフの「自然」ってのは何なのかよくわからない。続けて今度は隣の間が客席になり、今まで客席だった部屋が舞台になって「弱法師」。俊徳はかなりの大声で、バタバタする粋すぎただだっ子のような演技で、これが劇場なら普通なのだろうが、和室でやっているのでかなり異様に映える。そういう面白い効果が重なってこちらも好印象。「弱法師」は、普通にやれば普通に出来てしまって、出来てしまうのがだ全然ダメで、おそらくかなり難しい舞台だと思うのだが、うまいこと消化していたと思う。2日所見。
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以下、気になる新刊。

幻想のモナドロジー 日本近代文学試論

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『図書』のメディア史――「教養主義」の広報戦略

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三島由紀夫が生きた時代 楯の会と森田必勝

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ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から

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パリ論/ボードレール論集成 (ちくま学芸文庫)

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戦後入門 (ちくま新書)

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文学熱の時代―慷慨から煩悶へ―

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聞こえくる過去

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