漁書日誌 3.0

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神田古本まつり2010


昼夜逆転的生活をしているせいか、早朝起きてということに不慣れである。身体的にという意味で。だから、朝一に駆けつけようと思うと、まず寝付けず、結句ドロドロの寝不足で古書展会場に列ぶことになる。今年も青展は列んだ。昨年は本当のヒットで、年々よい収穫すらなくなってきて、もう青展は朝一はやめようと思っていた矢先だったので、俄然今年もリキが入ったというのもある。

朝9時10分前くらいに到着、既に前には数名。しかし結局なんだかんだで二番となる。とはいえ、あの開場前の勢いが年々薄れてきているのも確かで、前はズラリと古書会館の前に二列に列が出来、そこには若い人や女性も混じっていたのだが、今年はそのどちらも列には見かけず。そして開場。
あきつの棚の前も、例年の如く混んだが、昨年までの殺気入り混じるような押すな押すなのへし合いというほどの熱は薄いように思われた。昨年のように、明治大正期のこれはというのを…というわけにはいかなかったが、それでも以下のようなもの購入。



徳田秋声「秋声叢書」(博文館)明治44年2月8日初版凾欠500円
芥川龍之介集」(新潮社)昭和3年1月15日25版凾400円
本間久雄「高台より」(春陽堂大正2年2月18日初版印1500円
武田麟太郎釜ヶ崎」(文座書林)昭和9年2月18日限定850部記番凾欠900円
三島由紀夫「宝石売買」(講談社)昭和24年2月28日初版背痛4500円
新小説臨時増刊「天才 泉鏡花大正14年5月1日鏡花短冊木版付裏表紙欠1800円
泉鏡花「鏡花双紙」(春陽堂)大正5年2月15日3版背少痛凾背欠2800円
「ワイルド全集第五巻 論文集」(天佑社)大正9年7月19日凾400円
興津要「新聞雑誌発生事情」(角川選書)署名400円
太田蛍一「働く僕ら」(メリーウエルズ)イラスト署名入1000円
選びに選んでこういうったラインナップ。博文館の叢書シリーズは、まあ場所を喰うからどうもなと思ったが、さすがに。本間久雄は学生時代よく読んでいたので「高台より」は前々より欲しかったのだが、ようよう適価で。収録のワイルド論なんかも以前初出からコピーとった筈なのだが。三島の「宝石売買」はたいへん嬉しい買い物。幾ら少し背が痛んでるとはいえ、少し前までこんな値段では買えなかったと思う。そしてまあ鏡花だが、「鏡花双紙」ってのはあの総革装の袖珍本である。両見返しが小村雪岱による木版。お得な価格と思う。天佑社のワイルド全集も、凾欠揃いなら既に所持していたが、凾付でこれはよい。太田蛍一のはリブロポートで出る前の元版で、記載はないが限定600部という。
いやでもまあしかし、普通に岡鬼太郎とか広津柳浪とかの明治期本外装欠なんかが手頃な価格で列んでいて、こういう不況時でなければ売れるのだろうなあ、などと思う。本田一郎「仕立屋銀次」(塩川書房)初版凾欠3000円というのも逡巡した。木版挿画も欠ではなくってこの価格。結局戻してしまったが。
それから変わり種が、以下。

大正初年期東京名物絵葉書36葉+関東大震災時生写真3葉300円
これは棚の下の方に、小汚いフエルアルバムがあって何だろうとめくってみると、いきなり生々しい震災時の生写真とよい感じの東京絵葉書がズラリと出ているではないか。前の国会議事堂とか浅草十二階、吉原、上野公園、銀座、東京駅等々が貼ってある。吉原のは手彩色。これで300円はめっけものだったと思う。ただ問題は、ベタベタした紙に透明フィルムをかぶせるという方式のアルバムからどうやって剥がすかだが、帰宅後、意外に楽々と剥がせた。
さて。
昼食後、ブラブラと外の各古書店出品のワゴンを覗いて歩いた。久々に特価書籍の先の方まで行った。


綱島梁川「病間録」大正3年2月5日訂正11版凾欠印500円
小山内薫「足拍子」(プラトン社)大正13年7月15日初版凾欠300円
車谷長吉「史伝 隠国」(飾磨屋書店)限定記番凾署名落款3000円
高原英理「ゴシックスピリット」(朝日新聞社)850円
梁川のなどは先日も同じものを買っていてダブる必要もないのだが、扉に「後藤新平図書」という後藤新平旧蔵印があり思わず買ってしまう。「足拍子」も同じく所持しており今夏読んだものだが、状態がよい。ゴシックなんちゃらはゾッキ。で、車谷長吉である。これはまだ新刊書店で売っているが、定価は9450円だし史伝ものだしで未だに購入を躊躇していた。それが、新品そのままのような本が3000円なら飛びつくというものだ。
あーしかし、買った。買った上にたいそう疲れた、寝不足でグラグラだし。台風が来るという前日のことである。そして、もうひとつ、この青展では毎年楽しみにしているすずらん通りブックフェス。これがどうも台風のおかげでパーになる、という風な感じであった。が、どうも明日最終日は台風も過ぎて晴れるらしい。出費も嵩みキツイのだが、出陣する予定。